16 / 18
10話 エリスの最後の願い(2)
しおりを挟む
「『実はあの村に秘宝はなくて、昔からまるで違う場所に隠していたのよ。力ずくで奪われそうになっても、相手の手に堕ちないようにね』」
一族が暮らす村にはかつて金鉱があって、そこで信じられない大きさの金塊が見つかった。ご先祖様はその金塊を『大地の神秘』『大地からの贈り物』として、大切に保管することにした。
しかし『かつて金鉱があった』ためトラブルの発生を考え、全く関係ないのないところに隠すと決める。そして更に罠で守りを固め、虱潰しに探しても絶対に見つからないようにした。
私はしたり顔を作り、手短に語ってくれました。
「『あたし達を殺した後でも長々と探し回ってみたんでしょうけど、それは無意味。全くの無駄骨。無駄な努力ご苦労様、なのよね』」
「皆様の知恵と工夫が、悪事の完遂を防いだのですね。俺が口にすると、皮肉に聞こえてしまうかもしれませんが。しっかりとした一矢を報えていたのは、祖先を恥とする自分としても嬉しい限りです」
「『ううん、そんな風には感じはしないわよ。だってクロードは、アイツとは全然違うもの』」
私は初めてクロードさんを名前で呼び、それを切っ掛けとして――。心の中にあったもう一つの存在が、薄くなってゆく……。私に溶けてゆく感覚が訪れるようになりました。
……エリスと私は、再び一つになろうとしているのでハッキリ分かります……。彼女の復讐心は完全になくなっていて、一族の皆さんと同じ場所に行こうとしているんです。
「『花瓶とお墓で考えが揺らいで、さっきの出来事でやっと確信できたわ。血に拘るのは、間違ってた。あの血が通ってなくても悪い人がいて、あの血が通ってても良い人がいるんだもの』」
「………………ワルツ殿……」
「『だからクロードに対する怒りは的外れで、そう実感したら意識が薄くなっていき始めたの。恨みが強くってコッチに留まってたみたいだけど、アナタのおかげでみんなと会えるみたい』」
私は人差し指を上に向けて微笑み、正面にある金塊を指しました。
「『でね。それは、お願いとお詫びとお礼を兼ねたプレゼント。クロードとミラにはこれを砕いて売ってもらって、二人の為に使って欲しいの』」
「ワルツ殿……。それでは、貴方がたが守り抜いたものが……」
「『今も昔も、これは災いの元だもん。この形のまま、存在していない方がいいのよ』」
いつの日か、毒ヘビを越えられる武器が生まれたら――この場所に入れる時が来てしまったら、新たな争いが起きてしまう。それを防ぐために、壊して欲しい。
自分のせいで家や家具や服を失い、みんなの――クロードさんや使用人さん達が住む場所や仕事がなくなった。売却したお金を使って補って欲しい。
クロードさんと私に、感謝をしている。このお金で幸せに暮らして欲しい。
3つ目についてはちょっぴり照れながら、気持ちを伝えてくれました。
一族が暮らす村にはかつて金鉱があって、そこで信じられない大きさの金塊が見つかった。ご先祖様はその金塊を『大地の神秘』『大地からの贈り物』として、大切に保管することにした。
しかし『かつて金鉱があった』ためトラブルの発生を考え、全く関係ないのないところに隠すと決める。そして更に罠で守りを固め、虱潰しに探しても絶対に見つからないようにした。
私はしたり顔を作り、手短に語ってくれました。
「『あたし達を殺した後でも長々と探し回ってみたんでしょうけど、それは無意味。全くの無駄骨。無駄な努力ご苦労様、なのよね』」
「皆様の知恵と工夫が、悪事の完遂を防いだのですね。俺が口にすると、皮肉に聞こえてしまうかもしれませんが。しっかりとした一矢を報えていたのは、祖先を恥とする自分としても嬉しい限りです」
「『ううん、そんな風には感じはしないわよ。だってクロードは、アイツとは全然違うもの』」
私は初めてクロードさんを名前で呼び、それを切っ掛けとして――。心の中にあったもう一つの存在が、薄くなってゆく……。私に溶けてゆく感覚が訪れるようになりました。
……エリスと私は、再び一つになろうとしているのでハッキリ分かります……。彼女の復讐心は完全になくなっていて、一族の皆さんと同じ場所に行こうとしているんです。
「『花瓶とお墓で考えが揺らいで、さっきの出来事でやっと確信できたわ。血に拘るのは、間違ってた。あの血が通ってなくても悪い人がいて、あの血が通ってても良い人がいるんだもの』」
「………………ワルツ殿……」
「『だからクロードに対する怒りは的外れで、そう実感したら意識が薄くなっていき始めたの。恨みが強くってコッチに留まってたみたいだけど、アナタのおかげでみんなと会えるみたい』」
私は人差し指を上に向けて微笑み、正面にある金塊を指しました。
「『でね。それは、お願いとお詫びとお礼を兼ねたプレゼント。クロードとミラにはこれを砕いて売ってもらって、二人の為に使って欲しいの』」
「ワルツ殿……。それでは、貴方がたが守り抜いたものが……」
「『今も昔も、これは災いの元だもん。この形のまま、存在していない方がいいのよ』」
いつの日か、毒ヘビを越えられる武器が生まれたら――この場所に入れる時が来てしまったら、新たな争いが起きてしまう。それを防ぐために、壊して欲しい。
自分のせいで家や家具や服を失い、みんなの――クロードさんや使用人さん達が住む場所や仕事がなくなった。売却したお金を使って補って欲しい。
クロードさんと私に、感謝をしている。このお金で幸せに暮らして欲しい。
3つ目についてはちょっぴり照れながら、気持ちを伝えてくれました。
11
あなたにおすすめの小説
夏の眼差し
通木遼平
恋愛
伯爵令嬢であるティナの婚約者とティナの妹が恋仲になり、ティナは婚約を解消することになる。婚約者に対して特に思い入れはなかったが、姉妹の婚約のすげ替えについての噂と勝手なことばかり言う妹に気疲れしたティナは、昔から彼女を気にかけてくれていたイライザ夫人の紹介で夫人の孫娘リネットの話し相手として雇われることになった。
家から離れ、リネット共に穏やかな日々を過ごすティナは、リネットの従兄であるセオドアと出会う。
※他サイトにも掲載しています
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる