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第1話(2)
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「母さんに守って頂きたいことは、一つ。『犯人を予想しない』、です」
真剣な顔をして彼の瞳を見つめていたら、予想外の言葉がやってきた。
え? あれ? そ、それだけ?
「フェリックさん。私は、捕獲を手伝わなくてもいいの――いいんですか?」
「はい。一見シンプルに見えますが、それは非常に重要。それが、一番の協力となるのですよ」
彼はそのあと「敬語とさん付けではなく、訂正前の口調で呼び捨てにしてください。ここに居るのは貴方の子供ですし、こちらもその方が嬉しいですので」と続け、アレクを一瞥した。
「僕がこうして毒殺を阻止できたのは、この世界は僕が知っている世界、だからです。もしも母さんが犯人を理解してしまうと、この世界は『母さんが、本来知らないはずの犯人を知っている世界』――僕の知らない世界となってしまい、歴史通りに進まなくなる可能性が非常に高いのですよ。ですのでこれはその為の、大事な大事なものとなります」
「そ、そっか。言われてみたら、そうですね――じゃなくって、そうだね」
未来が変わっちゃったら、もしかすると犯人を捕まえられなくなるかもしれない。出来る限り、未来のあたしと同じ状態じゃないといけないんだ。
「ぁ、でも。自分の子供が来たとか、毒殺されかけてたとか、アレクが助かったとか、もう色々変わってる。これは、大丈夫なのかな?」
「ええ、そちらは許容範囲内ですよ。僕が明かすことは問題ない、そう思っていただいて結構です」
彼から聞く話は、全部OK。私があれこれ詮索したり考えたりするのは、NG。こういうことみたい。
「母さんは常に、受け身を心がけてください。これから起きる事は殆どお伝え出来ないので、不安はあると思います。ですが僕が必ずお守りしますので、どうか信じてください」
「うん、信じさせてもらうよ。どんな時でもフェリックを信用して、流れに身を任せるよ」
この人は私を想ってくれている子供だし、何より、その瞳に優しい力強さがあるからなんだろうな。その言葉を即座に信じられて、首を縦に振らせてもらった。
「即答、ありがとうございます。それでは早速ですが、行動を始めたいと思います」
「ん、了解です。私は、どうすればいいのかな?」
「僕を連れて馬車に乗り、そのまま帰宅してください。ルートはいつも通りで、いつものスピードでお願いします」
「いつものように、移動すればいいんだね。馬車に同行するとなると説明がいるんだけど、フェリックはなんて紹介すればいいのかな?」
どこでどんな影響があるか、分からないもんね。細かな点まで確認をしておく。
「まずは、下にいらっしゃる母クララの母親とアルクの父親をお呼びして、このリングをお見せます」
「婚約の指輪を……。ということは、お母様達に明かすのかな?」
「いえ。お二人には『この男は特殊な人間だ』という認識をしていただき、僕が一時的に従者を務められるようにしたいのですよ。それと、そうですね。念のため移動の人数は一致させておきたいので、本来の従者がこちらで1泊できるようにも、お願いをしたいと考えています」
「なるほど、分かったよ。お母様達のもとに行って、呼んでくるね」
そうして私は彼の指示通りに動き、お母様とおじ様は『特殊な人間』と理解。驚きつつも協力を約束してくれたので、アレクに暫くのお別れを告げた後、2人で馬車に乗り込んで出発する。
なんだか、道中で何かありそうな予感がするけど――。
そこは意図的に考えないようにして、帰路についたのでした。
真剣な顔をして彼の瞳を見つめていたら、予想外の言葉がやってきた。
え? あれ? そ、それだけ?
「フェリックさん。私は、捕獲を手伝わなくてもいいの――いいんですか?」
「はい。一見シンプルに見えますが、それは非常に重要。それが、一番の協力となるのですよ」
彼はそのあと「敬語とさん付けではなく、訂正前の口調で呼び捨てにしてください。ここに居るのは貴方の子供ですし、こちらもその方が嬉しいですので」と続け、アレクを一瞥した。
「僕がこうして毒殺を阻止できたのは、この世界は僕が知っている世界、だからです。もしも母さんが犯人を理解してしまうと、この世界は『母さんが、本来知らないはずの犯人を知っている世界』――僕の知らない世界となってしまい、歴史通りに進まなくなる可能性が非常に高いのですよ。ですのでこれはその為の、大事な大事なものとなります」
「そ、そっか。言われてみたら、そうですね――じゃなくって、そうだね」
未来が変わっちゃったら、もしかすると犯人を捕まえられなくなるかもしれない。出来る限り、未来のあたしと同じ状態じゃないといけないんだ。
「ぁ、でも。自分の子供が来たとか、毒殺されかけてたとか、アレクが助かったとか、もう色々変わってる。これは、大丈夫なのかな?」
「ええ、そちらは許容範囲内ですよ。僕が明かすことは問題ない、そう思っていただいて結構です」
彼から聞く話は、全部OK。私があれこれ詮索したり考えたりするのは、NG。こういうことみたい。
「母さんは常に、受け身を心がけてください。これから起きる事は殆どお伝え出来ないので、不安はあると思います。ですが僕が必ずお守りしますので、どうか信じてください」
「うん、信じさせてもらうよ。どんな時でもフェリックを信用して、流れに身を任せるよ」
この人は私を想ってくれている子供だし、何より、その瞳に優しい力強さがあるからなんだろうな。その言葉を即座に信じられて、首を縦に振らせてもらった。
「即答、ありがとうございます。それでは早速ですが、行動を始めたいと思います」
「ん、了解です。私は、どうすればいいのかな?」
「僕を連れて馬車に乗り、そのまま帰宅してください。ルートはいつも通りで、いつものスピードでお願いします」
「いつものように、移動すればいいんだね。馬車に同行するとなると説明がいるんだけど、フェリックはなんて紹介すればいいのかな?」
どこでどんな影響があるか、分からないもんね。細かな点まで確認をしておく。
「まずは、下にいらっしゃる母クララの母親とアルクの父親をお呼びして、このリングをお見せます」
「婚約の指輪を……。ということは、お母様達に明かすのかな?」
「いえ。お二人には『この男は特殊な人間だ』という認識をしていただき、僕が一時的に従者を務められるようにしたいのですよ。それと、そうですね。念のため移動の人数は一致させておきたいので、本来の従者がこちらで1泊できるようにも、お願いをしたいと考えています」
「なるほど、分かったよ。お母様達のもとに行って、呼んでくるね」
そうして私は彼の指示通りに動き、お母様とおじ様は『特殊な人間』と理解。驚きつつも協力を約束してくれたので、アレクに暫くのお別れを告げた後、2人で馬車に乗り込んで出発する。
なんだか、道中で何かありそうな予感がするけど――。
そこは意図的に考えないようにして、帰路についたのでした。
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