私を助けるために、20年後の世界から息子が来てくれました。

柚木ゆず

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第1話(2)

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「母さんに守って頂きたいことは、一つ。『犯人を予想しない』、です」

 真剣な顔をして彼の瞳を見つめていたら、予想外の言葉がやってきた。
 え? あれ? そ、それだけ?

「フェリックさん。私は、捕獲を手伝わなくてもいいの――いいんですか?」
「はい。一見シンプルに見えますが、それは非常に重要。それが、一番の協力となるのですよ」

 彼はそのあと「敬語とさん付けではなく、訂正前の口調で呼び捨てにしてください。ここに居るのは貴方の子供ですし、こちらもその方が嬉しいですので」と続け、アレクを一瞥した。

「僕がこうして毒殺を阻止できたのは、この世界は僕が知っている世界、だからです。もしも母さんが犯人を理解してしまうと、この世界は『母さんが、本来知らないはずの犯人を知っている世界』――僕の知らない世界となってしまい、歴史通りに進まなくなる可能性が非常に高いのですよ。ですのでこれはその為の、大事な大事なものとなります」
「そ、そっか。言われてみたら、そうですね――じゃなくって、そうだね」

 未来が変わっちゃったら、もしかすると犯人を捕まえられなくなるかもしれない。出来る限り、未来のあたしと同じ状態じゃないといけないんだ。

「ぁ、でも。自分の子供が来たとか、毒殺されかけてたとか、アレクが助かったとか、もう色々変わってる。これは、大丈夫なのかな?」
「ええ、そちらは許容範囲内ですよ。僕が明かすことは問題ない、そう思っていただいて結構です」

 彼から聞く話は、全部OK。私があれこれ詮索したり考えたりするのは、NG。こういうことみたい。

「母さんは常に、受け身を心がけてください。これから起きる事は殆どお伝え出来ないので、不安はあると思います。ですが僕が必ずお守りしますので、どうか信じてください」
「うん、信じさせてもらうよ。どんな時でもフェリックを信用して、流れに身を任せるよ」

 この人は私を想ってくれている子供だし、何より、その瞳に優しい力強さがあるからなんだろうな。その言葉を即座に信じられて、首を縦に振らせてもらった。

「即答、ありがとうございます。それでは早速ですが、行動を始めたいと思います」
「ん、了解です。私は、どうすればいいのかな?」
「僕を連れて馬車に乗り、そのまま帰宅してください。ルートはいつも通りで、いつものスピードでお願いします」
「いつものように、移動すればいいんだね。馬車に同行するとなると説明がいるんだけど、フェリックはなんて紹介すればいいのかな?」

 どこでどんな影響があるか、分からないもんね。細かな点まで確認をしておく。

「まずは、下にいらっしゃる母クララの母親ミリヤ様アルクの父親ヒュルト様をお呼びして、このリングをお見せます」
「婚約の指輪を……。ということは、お母様達に明かすのかな?」
「いえ。お二人には『この男は特殊な人間だ』という認識をしていただき、僕が一時的に従者を務められるようにしたいのですよ。それと、そうですね。念のため移動の人数は一致させておきたいので、本来の従者サリアさんがこちらで1泊できるようにも、お願いをしたいと考えています」
「なるほど、分かったよ。お母様達のもとに行って、呼んでくるね」

 そうして私は彼の指示通りに動き、お母様とおじ様は『特殊な人間』と理解。驚きつつも協力を約束してくれたので、アレクに暫くのお別れを告げた後、2人で馬車に乗り込んで出発する。

 なんだか、道中で何かありそうな予感がするけど――。

 そこは意図的に考えないようにして、帰路についたのでした。

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