2 / 38
プロローグ エミリー視点(2)
しおりを挟む
「エミリーっ、お前はこの屋敷には要らん!! 今すぐ出ていけ!!」
「マリオンに怪我をさせるだなんてっ!! もう顔も見たくないわ!!」
激怒して、わたしの部屋を飛び出したマリオン。彼女はお父様とお母様を連れて戻ってきて、そんな2人はマリオンを抱き締めながら目を剥きました。
「全部、マリオンから聞いたぞ……!! この子の命令に背いた上に、手に傷を負わせるだなんて……!! この馬鹿者がっ!!」
「逆らった上に抵抗だなんてっ、よくもまあ……!! エミリーっ!! 痕が残ったらどうするのよ!!」
うっすらと血が出ているだけなのに、まるで重傷を負ったような怒り方をする。マリオンが八つ当たりをしてわたしを階段から突き落とした時に、『今の悲鳴は面白かった』と嗤っていた人達とは思えません。
「できの悪い者でも家族だからと、仕方なく屋敷においてやっていたが……温情を与えるのはこれまでだ!! もう容赦はせんぞ!!」
「長年の恩を仇で返したこと、後悔させてあげる……!! 無様に路頭に迷うがいいわ!!」
「お父様お母様、お願いを聞いてくれてありがとうっ。……ねえ、エミリー。これからお前には、地獄を見せてあげるわ……!!」
お金も食料も、一切持たせない。そのままで外に放り出す。
マリオンは引き続き顔を真っ赤にした状態で説明を行い、それが終わると嘲笑を浮かべました。
「残飯を漁る人生になるのか、身体を売って金を稼ぐ人生になるのか――。楽しみで仕方がないわ。たっっっくさん苦労して、絶望しながら死んでいって頂戴ねぇ」
「……………………」
「あらあら、不安と恐怖で声を出せなくなっちゃった? 許してくださいって、わたくしに懇願しようとしてる? 駄目よ、絶対に許してあげない。もう遅いのよ」
「……………………」
「マリオン様にお怪我をさせてしまう前に巻き戻って欲しい! そう繰り返しながら生きて、死んでいくといいわ。……じゃあね、バイバイ。憐れな人生に、乾杯」
ひらひらと手を振ったマリオンは、左右を――お父様とお母様を交互に見て、嫌みたっぷりに頷きました。そんな『合図』を受け取った2人はすぐに頷きを返して、同じく嫌みたっぷりにパンと手を叩きます。
そうすれば、使用人の男性が2人入って来て――わたしは乱暴に部屋から引きずり出され、まるでゴミ袋を捨てるように門の外に放り出されたのでした。
こうしてわたしはあっという間に、あらゆるものを失ってしまい――
〇〇〇
「は~、ちょっとだけスッキリできましたわ。お父様お母様、お願いを聞いてくれて本当にありがとうございました」
「なに、可愛い子の言うことは叶えてあげたくなるものだ。それになマリオン、その希望は我々の望みでもあるのだよ」
「あんな奴を傍に置いておくなんて、ありえない。大切な子どもに傷をつけた者の顔なんて、二度と見たくないわ」
「そういうことだ。……まだまだ言いたいことはあるが、あの者の話題で時間を消費するのは癪だ。この辺りで話題を変えて…………そうだなぁ…………みんなで、美味しいものでも食べるとしよう」
「そうね、それがいいわ。のんびりと、紅茶やケーキを楽しみましょうか」
「賛成ですわっ。家族3人で楽しみましょうっ!」
そんな風に笑顔を咲かせている3人でしたが、彼女達が幸せな時間を過ごせるのは1か月間だけでした。
その日から、30日後。ちょうど3人が、久しぶりにエミリーのことを思い出して嗤っている時に――
「マリオンに怪我をさせるだなんてっ!! もう顔も見たくないわ!!」
激怒して、わたしの部屋を飛び出したマリオン。彼女はお父様とお母様を連れて戻ってきて、そんな2人はマリオンを抱き締めながら目を剥きました。
「全部、マリオンから聞いたぞ……!! この子の命令に背いた上に、手に傷を負わせるだなんて……!! この馬鹿者がっ!!」
「逆らった上に抵抗だなんてっ、よくもまあ……!! エミリーっ!! 痕が残ったらどうするのよ!!」
うっすらと血が出ているだけなのに、まるで重傷を負ったような怒り方をする。マリオンが八つ当たりをしてわたしを階段から突き落とした時に、『今の悲鳴は面白かった』と嗤っていた人達とは思えません。
「できの悪い者でも家族だからと、仕方なく屋敷においてやっていたが……温情を与えるのはこれまでだ!! もう容赦はせんぞ!!」
「長年の恩を仇で返したこと、後悔させてあげる……!! 無様に路頭に迷うがいいわ!!」
「お父様お母様、お願いを聞いてくれてありがとうっ。……ねえ、エミリー。これからお前には、地獄を見せてあげるわ……!!」
お金も食料も、一切持たせない。そのままで外に放り出す。
マリオンは引き続き顔を真っ赤にした状態で説明を行い、それが終わると嘲笑を浮かべました。
「残飯を漁る人生になるのか、身体を売って金を稼ぐ人生になるのか――。楽しみで仕方がないわ。たっっっくさん苦労して、絶望しながら死んでいって頂戴ねぇ」
「……………………」
「あらあら、不安と恐怖で声を出せなくなっちゃった? 許してくださいって、わたくしに懇願しようとしてる? 駄目よ、絶対に許してあげない。もう遅いのよ」
「……………………」
「マリオン様にお怪我をさせてしまう前に巻き戻って欲しい! そう繰り返しながら生きて、死んでいくといいわ。……じゃあね、バイバイ。憐れな人生に、乾杯」
ひらひらと手を振ったマリオンは、左右を――お父様とお母様を交互に見て、嫌みたっぷりに頷きました。そんな『合図』を受け取った2人はすぐに頷きを返して、同じく嫌みたっぷりにパンと手を叩きます。
そうすれば、使用人の男性が2人入って来て――わたしは乱暴に部屋から引きずり出され、まるでゴミ袋を捨てるように門の外に放り出されたのでした。
こうしてわたしはあっという間に、あらゆるものを失ってしまい――
〇〇〇
「は~、ちょっとだけスッキリできましたわ。お父様お母様、お願いを聞いてくれて本当にありがとうございました」
「なに、可愛い子の言うことは叶えてあげたくなるものだ。それになマリオン、その希望は我々の望みでもあるのだよ」
「あんな奴を傍に置いておくなんて、ありえない。大切な子どもに傷をつけた者の顔なんて、二度と見たくないわ」
「そういうことだ。……まだまだ言いたいことはあるが、あの者の話題で時間を消費するのは癪だ。この辺りで話題を変えて…………そうだなぁ…………みんなで、美味しいものでも食べるとしよう」
「そうね、それがいいわ。のんびりと、紅茶やケーキを楽しみましょうか」
「賛成ですわっ。家族3人で楽しみましょうっ!」
そんな風に笑顔を咲かせている3人でしたが、彼女達が幸せな時間を過ごせるのは1か月間だけでした。
その日から、30日後。ちょうど3人が、久しぶりにエミリーのことを思い出して嗤っている時に――
59
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。
松ノ木るな
恋愛
ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。
不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。
研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……
挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。
「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」
※7千字の短いお話です。
【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
妹は私の婚約者と駆け落ちしました
今川幸乃
恋愛
貧乏貴族ブレンダ男爵家の姉妹、カトリナとジェニーにはラインハルトとレオルという婚約者がいた。
姉カトリナの婚約者ラインハルトはイケメンで女性に優しく、レオルは醜く陰気な性格と評判だった。
そんな姉の婚約者をうらやんだジェニーはラインハルトと駆け落ちすることを選んでしまう。
が、レオルは陰気で不器用ではあるが真面目で有能な人物であった。
彼との協力によりブレンダ男爵家は次第に繁栄していく。
一方ラインハルトと結ばれたことを喜ぶジェニーだったが、彼は好みの女性には節操なく手を出す軽薄な男であることが分かっていくのだった。
姉の物を奪いたい妹と、等価交換の法則に従って行動する姉
マーサ
恋愛
年齢不相応に大人びた子供だった姉イレーナと無邪気に甘える妹ハンナ。どちらを両親が可愛がるかは火を見るより明らかだった。
甘やかされて育ったハンナは「姉の物は自分の物」とイレーナの物を奪っていくが、早くから社会経験を積んだイレーナは「世の中の真理は等価交換」だと信じ、ハンナの持ち物から等価値の物と交換していた。
物を奪っても上手くいかないハンナは、イレーナの悔しがる顔見たさに婚約者を奪い取る。
「私には婚約者がおりませんから、お姉様お得意の等価交換とやらもできませんわね」
王家主催のパーティで告げるも、イレーナは満面の笑顔で「婚約破棄、承知いたしました」と了承し……。
★コメディです
★設定はユルユルです
★本編10話+おまけ3話(執筆済み)
★ざまぁはおまけ程度
別れたいようなので、別れることにします
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。
魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。
命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。
王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる