わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず

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第8話 返事の返事 エミリー視点(1)

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「………………………………………………」
「ここにいるマリオンは、もちろん我々の子のひとり。今の我々にとって子と離れる行為は、この身が裂けるほどに苦痛を伴う……」
「そうね、あなた……。でも私達はエミリーに、誠心誠意謝罪をしないといけない……。貴女が望むのならば、従うわ」

 お父様とお母様は涙を浮かべ、俯きながら言葉を紡ぎました。
 その姿は一見すると辛そうに見えますが、実際は違います。

「………………………………………………」

 原因は、桁外れの量の怒りと混乱なのでしょう。放心してしまっているマリオンこそが大事な子どもで、マリオンを追い出したくはない。けれどそうすれば、自分達は助かる。

 ――マリオンの犠牲だけで済む――。

 二人は心の中で、大喜びしていることでしょう。
 必要とあらば可愛い我が子であっても捨てる、自分達の幸せこそすべて。この人達はそういう人間であると、わたしはよく知っています。

「………………………………………………」
「エミリーにはこのまま一緒に馬車に乗ってもらい、お屋敷に戻ってからマリオンを追い出して――マリオンと一緒に乗りたくはないだろう。ならば一旦、我々だけで屋敷に戻って――そうしていると、日付が変わってしまうか……」
「そんな時間から伺うのは、あまりにも無礼よね。となると…………この子には、このまま出ていってもらいましょうか」
「そうだな。馬車に乗るのは、俺、リリアン、エミリーの3人。マリオンには適当にどこかに行ってもらうとしよう」

 ずっと可愛がっていた子を捨てる。とんでもないことをしているにもかかわらず、2人はさらっと口にして――

「お待ちください」

 ――引き続き放心しているマリオンを連れ出そうとし始めたので、止めました。

「ん? どうしたんだい?」「? どうしたの」
「これから皆様にお伝えしたいことがあります。その内容は3人全員にしっかり聞いてもらいたいものですので、マリオンを起こしてください」
「え? マリオンを? あ、ああ。分かったよ」

 お父様とお母様が身体をガクガクと揺さぶり、

「…………………………。っ!」

 十数秒で、マリオンが正気を取り戻しました。ですのでわたしはゆっくりと3人を見渡し、用意していたこの言葉を告げたのでした。


「ごめんなさい、やっぱりお屋敷に戻りたくはありません。お父様、お母様。マリオンと一緒に、お引き取りください」
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