上 下
8 / 24

第4話 罰がくだる日 オスカー視点(3)

しおりを挟む
「皆様、大変お待たせいたしました。こちらが元となった・・・・・、わたくしの作品でございます」

 移動で結構な時間が経っているが、大問題なため誰一人として帰った者はいない。俺は大勢に囲まれた状態で、オリジナル・・・・・を披露した。

「「「「「っっ」」」」」
「「「「「同じ……」」」」」
「「「「「何もかもが、一緒だわ(一緒だ)……」」」」」

 そうすれば至る所で息を呑む音が聞こえ、会場の雰囲気が一気に変わった。俺を信じる目線が、急激に増えた。

「ここに使用されている画材を調べれば『どちらが先』が分かりますし、色の下には日付を記しています。……アリス、これが俺の証拠だよ。今度は、君の証拠を見せてくれ」
「………………」
「どうしたんだいアリス? ノートがあるんだろう? 早く出してくれ」
「…………。そちらは、ありませんでした……」

 すっかり青ざめているヤツは、一部が破れてしまっているノートを取り出した。

「私はここにあったページに、この作品の下書きをしていました。ですがそれが、いつの間にかなくなってしまっていたのです……」
「……アリス。そんな言い分を、信じる人が居ると思うのかい? もう無理だよ、素直に認めてくれ」
「それは、できません。……これは、オスカー様の企みなのですから……っ」

 潤んでいた瞳が、きっと俺を睨みつけてくる。
 実際にあったものがなかったんだ。さすがに気付いたようだ。

「私がノートを最後に確認してから、アトリエには私と貴方以外入ってはいません。全て、逆です。貴方が私のアイディアを見て、先に絵にした……。その証拠を隠滅するために、破り捨てたのですね……っ?」
「……はぁ、今度は転嫁か。確かに俺は君の許可を得て、アトリエに入った。だがノートに触れたことはないし、そもそも、そんなノートがあるなんて知らなかった。見るなんて不可能だよ」
「違います……っ。貴方は2度アトリエを訪れ、その両方で――」
「いい加減にしてくれアリスっ! 見苦しいよ……っ。これ以上俺のイメージを、皆のっ、ファンのイメージを壊さないでくれ!!」

 俺もまた瞳を潤ませ、自身、来場者を一瞥し、並んでいる2つの作品を見据える。

「今回の件……盗作は許されることではないが、少なくとも、それまでの軌跡は本物。俺やここにいる方々に感動を与えたのは事実なんだ。……これ以上悪あがきを見せれば、それらにも影響をきたしてしまう。だから、お願いだ。婚約者として、ファンとして、画家を志す者として頼む。素直に、罪を認めてくれ。
「……できません。私は恥じる行いに、一切手を染めていませんので。ありもしないものを、認めることはできません」
「…………そうか、俺達の気持ちは届かなかったのか……。仕方がない。君が認めようが認めまいが、盗作は確定している。自ら退かないのであれば、業界によって強制的に退かせて――」
「その必要はない。アリス・レイニーラが口にしている内容は、事実なのだからね」

 大衆を味方につけて締めようとしていたら、新たな声が響いてきた。
 誰だ……? 誰が俺の邪魔を――………………。

((この声の主は……。王太子殿下……!?))

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

半月王1 竜王編

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:23

妻が遺した三つの手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,227pt お気に入り:49

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:96,737pt お気に入り:3,160

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,475pt お気に入り:2,187

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,733pt お気に入り:281

下等動物取扱規則

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...