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第4話 罰がくだる日 オスカー視点(3)
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「皆様、大変お待たせいたしました。こちらが元となった、わたくしの作品でございます」
移動で結構な時間が経っているが、大問題なため誰一人として帰った者はいない。俺は大勢に囲まれた状態で、オリジナルを披露した。
「「「「「っっ」」」」」
「「「「「同じ……」」」」」
「「「「「何もかもが、一緒だわ(一緒だ)……」」」」」
そうすれば至る所で息を呑む音が聞こえ、会場の雰囲気が一気に変わった。俺を信じる目線が、急激に増えた。
「ここに使用されている画材を調べれば『どちらが先』が分かりますし、色の下には日付を記しています。……アリス、これが俺の証拠だよ。今度は、君の証拠を見せてくれ」
「………………」
「どうしたんだいアリス? ノートがあるんだろう? 早く出してくれ」
「…………。そちらは、ありませんでした……」
すっかり青ざめているヤツは、一部が破れてしまっているノートを取り出した。
「私はここにあったページに、この作品の下書きをしていました。ですがそれが、いつの間にかなくなってしまっていたのです……」
「……アリス。そんな言い分を、信じる人が居ると思うのかい? もう無理だよ、素直に認めてくれ」
「それは、できません。……これは、オスカー様の企みなのですから……っ」
潤んでいた瞳が、きっと俺を睨みつけてくる。
実際にあったものがなかったんだ。さすがに気付いたようだ。
「私がノートを最後に確認してから、アトリエには私と貴方以外入ってはいません。全て、逆です。貴方が私のアイディアを見て、先に絵にした……。その証拠を隠滅するために、破り捨てたのですね……っ?」
「……はぁ、今度は転嫁か。確かに俺は君の許可を得て、アトリエに入った。だがノートに触れたことはないし、そもそも、そんなノートがあるなんて知らなかった。見るなんて不可能だよ」
「違います……っ。貴方は2度アトリエを訪れ、その両方で――」
「いい加減にしてくれアリスっ! 見苦しいよ……っ。これ以上俺のイメージを、皆のっ、ファンのイメージを壊さないでくれ!!」
俺もまた瞳を潤ませ、自身、来場者を一瞥し、並んでいる2つの作品を見据える。
「今回の件……盗作は許されることではないが、少なくとも、それまでの軌跡は本物。俺やここにいる方々に感動を与えたのは事実なんだ。……これ以上悪あがきを見せれば、それらにも影響をきたしてしまう。だから、お願いだ。婚約者として、ファンとして、画家を志す者として頼む。素直に、罪を認めてくれ。
「……できません。私は恥じる行いに、一切手を染めていませんので。ありもしないものを、認めることはできません」
「…………そうか、俺達の気持ちは届かなかったのか……。仕方がない。君が認めようが認めまいが、盗作は確定している。自ら退かないのであれば、業界によって強制的に退かせて――」
「その必要はない。アリス・レイニーラが口にしている内容は、事実なのだからね」
大衆を味方につけて締めようとしていたら、新たな声が響いてきた。
誰だ……? 誰が俺の邪魔を――………………。
((この声の主は……。王太子殿下……!?))
移動で結構な時間が経っているが、大問題なため誰一人として帰った者はいない。俺は大勢に囲まれた状態で、オリジナルを披露した。
「「「「「っっ」」」」」
「「「「「同じ……」」」」」
「「「「「何もかもが、一緒だわ(一緒だ)……」」」」」
そうすれば至る所で息を呑む音が聞こえ、会場の雰囲気が一気に変わった。俺を信じる目線が、急激に増えた。
「ここに使用されている画材を調べれば『どちらが先』が分かりますし、色の下には日付を記しています。……アリス、これが俺の証拠だよ。今度は、君の証拠を見せてくれ」
「………………」
「どうしたんだいアリス? ノートがあるんだろう? 早く出してくれ」
「…………。そちらは、ありませんでした……」
すっかり青ざめているヤツは、一部が破れてしまっているノートを取り出した。
「私はここにあったページに、この作品の下書きをしていました。ですがそれが、いつの間にかなくなってしまっていたのです……」
「……アリス。そんな言い分を、信じる人が居ると思うのかい? もう無理だよ、素直に認めてくれ」
「それは、できません。……これは、オスカー様の企みなのですから……っ」
潤んでいた瞳が、きっと俺を睨みつけてくる。
実際にあったものがなかったんだ。さすがに気付いたようだ。
「私がノートを最後に確認してから、アトリエには私と貴方以外入ってはいません。全て、逆です。貴方が私のアイディアを見て、先に絵にした……。その証拠を隠滅するために、破り捨てたのですね……っ?」
「……はぁ、今度は転嫁か。確かに俺は君の許可を得て、アトリエに入った。だがノートに触れたことはないし、そもそも、そんなノートがあるなんて知らなかった。見るなんて不可能だよ」
「違います……っ。貴方は2度アトリエを訪れ、その両方で――」
「いい加減にしてくれアリスっ! 見苦しいよ……っ。これ以上俺のイメージを、皆のっ、ファンのイメージを壊さないでくれ!!」
俺もまた瞳を潤ませ、自身、来場者を一瞥し、並んでいる2つの作品を見据える。
「今回の件……盗作は許されることではないが、少なくとも、それまでの軌跡は本物。俺やここにいる方々に感動を与えたのは事実なんだ。……これ以上悪あがきを見せれば、それらにも影響をきたしてしまう。だから、お願いだ。婚約者として、ファンとして、画家を志す者として頼む。素直に、罪を認めてくれ。
「……できません。私は恥じる行いに、一切手を染めていませんので。ありもしないものを、認めることはできません」
「…………そうか、俺達の気持ちは届かなかったのか……。仕方がない。君が認めようが認めまいが、盗作は確定している。自ら退かないのであれば、業界によって強制的に退かせて――」
「その必要はない。アリス・レイニーラが口にしている内容は、事実なのだからね」
大衆を味方につけて締めようとしていたら、新たな声が響いてきた。
誰だ……? 誰が俺の邪魔を――………………。
((この声の主は……。王太子殿下……!?))
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