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第10話 かけられた声の理由 エレーヌ視点(2)
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《………………ノエル、ごめんよ。約束を、守れなくって……》
リュドヴィック・ハーラント様の右手を、両手で握った瞬間でした。私の頭の中に、わたくしだった頃の記憶が――愛する人との最期の記憶が、独りでに浮かび上がってきました。
《君を一生幸せにするって、約束をしたのに……。ごめんよ……》
《なにを仰りますのっ! わたくしは、幸せでしたっ。貴方様と出会えてっ、貴方様の妻となれてっ! ずっとっ、ずっと幸せでしたわっ!》
《ははは…………ありがとう……。そう言ってもらえて、嬉しい…………けど、ね。一生は、無理だった。ノエルをおいていってしまう、残すことになってしまった……》
わたくしの夫、愛する人リアム様。この方は高位貴族とは思えない程に気弱で心配性で生真面目で、でも――。わたくしが関わると強くて勇敢な人になって、何よりもわたくしの幸せを願い喜んでくださる方だった。
なのでそれが気がかりで、どうしてもご自分を許せなかった。
《……寿命って、どうしてあるんだろうね……。悔しい、悔しいよ……》
『怖い』や『寂しい』ではなくて、『悔しい』。これから死んでしまう恐怖ではなく、わたくしに関する無念で涙を流してくださる。
そちらが胸を打たないはずはなくて、わたくしも大粒の涙を流しながら右手をしっかりと握りしめた。
《リアム様……っ。わたくしは……っ。わたくし、は……っっ》
《…………ノエル、ごめん。また君を、悲しませてしまったね。………………最期がこれじゃ、いけないな》
そんな力なんて、もう残っていないはずなのに。専属医は、もう身体を動かせないと言っていたのに……っ。
リアム様は、最後の力を振り絞って……。そっと親指でわたくしの目尻を拭ってくださり、
《もしも次のチャンスがあれば、今度こそ、ノエルを、一生幸せにする……。次はわたしが君を看取ると、約束する、から……。もし、ふたたび、会えたなら……。そのとき、は……。わたしと、また…………》
《ええっ、ええっ‼ その時は、喜んで妻になりますわっ‼ ならせてくださいリアム様っ‼ また一緒にっ、わたくしと過ごしてくださいましっ!》
《あはは…………ありがとう、ノエル……。わたしは…………おれ、は…………。しあわせ………………もの、だ、よ…………………………》
そうしてリアム様は穏やかに目を閉じ、旅立たれたのでした。
そしてわたくしはそのあと、手を握ったままリアム様に最期の口づけを行い――
((っ⁉ えっ!?))
――そこからは、わたくしでさえも知らない出来事が始まる。
「はじめまして。僕はリアムと申します」
「失礼。お話しをしても、よろしいでしょうか?」
リアム様から初めてかけられた言葉と、リュドヴィック様から初めてかけられた言葉。それが順番に蘇り、
「はじめまして。僕はリアムと申します」「失礼。お話しをしても、よろしいでしょうか?」
次は、それらが同時に蘇って――っっ! やがてリアム様のお姿とリュドヴィック様のお姿が、一つに重なったのでした。
…………これは、そういうことなのね。
リアム様は、リュドヴィック様――。
リュドヴィック・ハーラント様の右手を、両手で握った瞬間でした。私の頭の中に、わたくしだった頃の記憶が――愛する人との最期の記憶が、独りでに浮かび上がってきました。
《君を一生幸せにするって、約束をしたのに……。ごめんよ……》
《なにを仰りますのっ! わたくしは、幸せでしたっ。貴方様と出会えてっ、貴方様の妻となれてっ! ずっとっ、ずっと幸せでしたわっ!》
《ははは…………ありがとう……。そう言ってもらえて、嬉しい…………けど、ね。一生は、無理だった。ノエルをおいていってしまう、残すことになってしまった……》
わたくしの夫、愛する人リアム様。この方は高位貴族とは思えない程に気弱で心配性で生真面目で、でも――。わたくしが関わると強くて勇敢な人になって、何よりもわたくしの幸せを願い喜んでくださる方だった。
なのでそれが気がかりで、どうしてもご自分を許せなかった。
《……寿命って、どうしてあるんだろうね……。悔しい、悔しいよ……》
『怖い』や『寂しい』ではなくて、『悔しい』。これから死んでしまう恐怖ではなく、わたくしに関する無念で涙を流してくださる。
そちらが胸を打たないはずはなくて、わたくしも大粒の涙を流しながら右手をしっかりと握りしめた。
《リアム様……っ。わたくしは……っ。わたくし、は……っっ》
《…………ノエル、ごめん。また君を、悲しませてしまったね。………………最期がこれじゃ、いけないな》
そんな力なんて、もう残っていないはずなのに。専属医は、もう身体を動かせないと言っていたのに……っ。
リアム様は、最後の力を振り絞って……。そっと親指でわたくしの目尻を拭ってくださり、
《もしも次のチャンスがあれば、今度こそ、ノエルを、一生幸せにする……。次はわたしが君を看取ると、約束する、から……。もし、ふたたび、会えたなら……。そのとき、は……。わたしと、また…………》
《ええっ、ええっ‼ その時は、喜んで妻になりますわっ‼ ならせてくださいリアム様っ‼ また一緒にっ、わたくしと過ごしてくださいましっ!》
《あはは…………ありがとう、ノエル……。わたしは…………おれ、は…………。しあわせ………………もの、だ、よ…………………………》
そうしてリアム様は穏やかに目を閉じ、旅立たれたのでした。
そしてわたくしはそのあと、手を握ったままリアム様に最期の口づけを行い――
((っ⁉ えっ!?))
――そこからは、わたくしでさえも知らない出来事が始まる。
「はじめまして。僕はリアムと申します」
「失礼。お話しをしても、よろしいでしょうか?」
リアム様から初めてかけられた言葉と、リュドヴィック様から初めてかけられた言葉。それが順番に蘇り、
「はじめまして。僕はリアムと申します」「失礼。お話しをしても、よろしいでしょうか?」
次は、それらが同時に蘇って――っっ! やがてリアム様のお姿とリュドヴィック様のお姿が、一つに重なったのでした。
…………これは、そういうことなのね。
リアム様は、リュドヴィック様――。
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