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第1話 元婚約者・ルーラルトの本音 ルーラルト視点(1)
「大変だルーラルトっ! 大変だっ!!」
「はぁ、せっかくいいムードだったのに……。なんなのですか、父上」
邸内にある、我が家(いえ)自慢のサロン。そこで最愛の人と――ミーティエと二人きりの時間を楽しんでいたら、突如父上が飛び込んできた。
『ムードが乱れてしまうから、俺達が出てくるまでここには近づかないで欲しい』、そう頼んでいたのに。一体なんなんだ……?
「と、とんでもないことになってしまった……! なんてことなんだ……!!」
「お、おじ様……? る、ルーラルト様。どうされたのでしょうか……?」
「さ、さあ……? ち、父上、落ち着いてください。これでも飲んで冷静になってください」
飛び込んできたあとは、頭を抱えて膝から崩れ落ちてしまった。そこで仕方なくソファーから立ち上がって父上の元まで行き、室内にあった水を飲ませる。
そうしてどうにか落ち着きを取り戻したようなので、改めて尋ねることにした。
「父上。何が、あったのですか?」
「……………………ステラス。ステラス・レルアユスを、覚えているだろう?」
「聞きたくもない名ですね。俺の――俺とミーティエのいる前で出さないでください」
「こちらの質問に答えろ!」
「え!? あ、え、ええ。覚えていますよ」
このあいだまで婚約者だった女。世界で最も素晴らしい、そう思っていた女。アイツではなくミーティエと先に出会っていたら、すぐに婚約できていたのに……と強く思う、選択ミスをしてしまった女。それが、ソイツだ。
「?? そのゴミが、どうしたんです?」
「……隣国ワールレスで昨日開かれた、コンクール『ソレイテス』。そこであの者は…………初出場にもかかわらず、最高金賞を受賞したそうだ……」
「なっ!? なんですって!?」
父上があんなにも取り乱していた理由が、ようやく分かった。
ソレイテスといえば四年に一度開かれる、この世で最も権威あるコンクール。下位の賞に選ばれただけでも大きな大きな箔が付き、一生安泰になると言われているコンクールで……。その一番上を、獲得していた……。
「こ、これまでも、優秀な成績を収めてはいたが……。まさか、そんなことになるなんて――そっ、それはどうでもいい! ち、父上っ! ソレイテスでの、最高金賞はっ!」
「ああ……。この国『リオン』有史以来の、快挙だ……」
「じゃ、じゃあ……」
「あ、ああ……。帰国後は即、文化勲章を授与されるだろうな……」
史上初なのだから、当然そうなる。
しかも、それだけじゃない……。これまでその勲章を与えられた人間は、全員が歴史に名を刻んでいて……。その全員が、大きな大きな名声、地位を得ているのだ……。
「……白紙にしてすぐ、そんなことになるだなんて……。我が家の地位が、大きく向上していたのに……。なんて、ことだ……。最大の失敗を、してしまった……」
(…………失敗失敗って。ルーラルト様、わたくし気分を害しましたわ。おじさまに、強く言ってくださいま――)
「ミーティエ、お前は黙っていろ」
「ルーラルト様!? なにを――」
「黙っていろと言ったはずだ! ……父上、大丈夫ですよ。俺に考えがあります」
抗議をしてくる邪魔者を睨みつけ、大きな頷きを行う。
確かに失敗してしまったが、後悔は要らない。なぜならば――
「はぁ、せっかくいいムードだったのに……。なんなのですか、父上」
邸内にある、我が家(いえ)自慢のサロン。そこで最愛の人と――ミーティエと二人きりの時間を楽しんでいたら、突如父上が飛び込んできた。
『ムードが乱れてしまうから、俺達が出てくるまでここには近づかないで欲しい』、そう頼んでいたのに。一体なんなんだ……?
「と、とんでもないことになってしまった……! なんてことなんだ……!!」
「お、おじ様……? る、ルーラルト様。どうされたのでしょうか……?」
「さ、さあ……? ち、父上、落ち着いてください。これでも飲んで冷静になってください」
飛び込んできたあとは、頭を抱えて膝から崩れ落ちてしまった。そこで仕方なくソファーから立ち上がって父上の元まで行き、室内にあった水を飲ませる。
そうしてどうにか落ち着きを取り戻したようなので、改めて尋ねることにした。
「父上。何が、あったのですか?」
「……………………ステラス。ステラス・レルアユスを、覚えているだろう?」
「聞きたくもない名ですね。俺の――俺とミーティエのいる前で出さないでください」
「こちらの質問に答えろ!」
「え!? あ、え、ええ。覚えていますよ」
このあいだまで婚約者だった女。世界で最も素晴らしい、そう思っていた女。アイツではなくミーティエと先に出会っていたら、すぐに婚約できていたのに……と強く思う、選択ミスをしてしまった女。それが、ソイツだ。
「?? そのゴミが、どうしたんです?」
「……隣国ワールレスで昨日開かれた、コンクール『ソレイテス』。そこであの者は…………初出場にもかかわらず、最高金賞を受賞したそうだ……」
「なっ!? なんですって!?」
父上があんなにも取り乱していた理由が、ようやく分かった。
ソレイテスといえば四年に一度開かれる、この世で最も権威あるコンクール。下位の賞に選ばれただけでも大きな大きな箔が付き、一生安泰になると言われているコンクールで……。その一番上を、獲得していた……。
「こ、これまでも、優秀な成績を収めてはいたが……。まさか、そんなことになるなんて――そっ、それはどうでもいい! ち、父上っ! ソレイテスでの、最高金賞はっ!」
「ああ……。この国『リオン』有史以来の、快挙だ……」
「じゃ、じゃあ……」
「あ、ああ……。帰国後は即、文化勲章を授与されるだろうな……」
史上初なのだから、当然そうなる。
しかも、それだけじゃない……。これまでその勲章を与えられた人間は、全員が歴史に名を刻んでいて……。その全員が、大きな大きな名声、地位を得ているのだ……。
「……白紙にしてすぐ、そんなことになるだなんて……。我が家の地位が、大きく向上していたのに……。なんて、ことだ……。最大の失敗を、してしまった……」
(…………失敗失敗って。ルーラルト様、わたくし気分を害しましたわ。おじさまに、強く言ってくださいま――)
「ミーティエ、お前は黙っていろ」
「ルーラルト様!? なにを――」
「黙っていろと言ったはずだ! ……父上、大丈夫ですよ。俺に考えがあります」
抗議をしてくる邪魔者を睨みつけ、大きな頷きを行う。
確かに失敗してしまったが、後悔は要らない。なぜならば――
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