元婚約者様へ。私は決して復縁はいたしませんよ

柚木ゆず

文字の大きさ
6 / 51

第2話 ステラス・回想~予想外の反応な理由~ ステラス視点(3)

「謝罪と目が覚めたお祝いとして、これから外出をしませんか? 先日、ステラス様にぴったりの場所を見つけていたのですよ」
「私に、ですか……? は、はい、よろしくお願い致します」

 ザクター様の、折角のご厚意だったこと。コンクール開催は3日後に迫っていて、しっかりと気持ちを切り替えたかったこと。そういった理由で馬車に乗り込み、しばらく揺られて――私達は1時間半ほどの場所にある、『リベックの森』の中へとやって来ました。

「わぁ……! 空気が澄んでいて、木漏れ日が気持ちいい。ザクター様の仰る通りでした。今の私にはぴったりの、リラックスできる場所です」
「気に入っていただけて何よりです。ですがステラス様、これだけではないのですよ?」

 ザクター様の口元が品よく緩み、促されて傍にある切り株に腰を下ろしました。そうして3~4分くらい待っていると――

「「「「「ピピピッ。ピピピ♪」」」」」
「「「「「チチチチチッ♪」」」」」

 たくさんの小鳥がやって来て、私達の膝や肩にチョコンと乗ったのです。しかもその子たちは気持ちよさそうに、鳴き始めた歌い始めたのです。

「「「「「ピピピッ。ピピピピッ♪」」」」」
「「「「「チチチチチチチッ♪」」」」」

 私は明るい音が好きで、中でも楽しい音と幸せな音が大好き。この子たちの歌声はその両方の性質を含んでいて、聴いていてとても心地が良い。
 だから心が透き通っていって、

「「「「「ピピピッ。ピピピッ♪」」」」」
「「「「「チチチチチチチッ♪」」」」」
「♪♪♪♪♪~」

 気が付くと私も、一緒に歌っていて。それがあまりにも気持ちよくて、楽しくて。
 私はそれから3時間以上も、鳥さん達と過ごしてしまいました。

「「「「「ピピピッ。ピピピッ」」」」」
「「「「「チチチチチッ」」」」」
「うん。鳥さんたち、またね。バイバイ」

 陽が傾いてきたので、鳥さん達も私も帰らないといけません。そのため手を振って別れて馬車へと乗り込み、私は改めて正面へと頭を下げました。

「リベックの森はよく知っていましたが、こんな素敵な場所があったなんて知りませんでした。こんなにも楽しい時間を過ごせるとも、思っていませんでした。最高のお祝いをいただいてしまいましたね」
「楽しんでいただけて、僕も幸せですよ。ただ僕には、お礼を100%いただく資格はありません。あの場所を見つけてくれたのは、家の人間ですので」

 ザクター様は元々、コンテストの英気を養うための場として――。私が喜びそうな場所を、探してもらっていたそうです。

「僕は条件を提示して頼んだだけですので、そうですね。お礼は、5%ほどいただいておきますね」
「もっと資格はあると思いますが、分かりました。残りは、動いてくださった方々にお伝えくださ――あの、ザクター様。ザクター様のお家は――いえ、なんでもありません」

 こういった穴場的なスポットの発見力もそうですが、なにより、あの工作を――筆頭侯爵家が行ったものを、たった1日弱で見破ってしまったこと。それによって『お家』について知りたくなったのですが、ピアノの恩師先生の言葉を思い出して止めました。

 そう、でした。あの時私は先生から、ザクター様について――

感想 22

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

「退屈な女だ」と婚約破棄されたので去りましたが、翌日から国政が止まったそうです。え、私はもう存じませんけど?

にたまご
恋愛
公爵令嬢クラーラは、ユリウス王太子殿下に婚約を破棄された。 「退屈な女だ」「何の取り柄もない」と。 否定はしない。 けれど殿下が知らないだけで、通商条約も予算案も外交書簡も、この国の政務の大半を六年間匿名で回していたのは──この「退屈な女」だ。 婚約破棄の翌朝、宰相補佐官のレオンが焼き菓子と四十二件の緊急報告を携えて公爵邸を訪れる。 「貴女がいなくなった王宮は、控えめに申し上げて、地獄です」 ──存じません。私はもう、ただの無職ですので。

悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした

みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。 会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。 そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。

お前との婚約は、ここで破棄する!

もちもちほっぺ
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――