9 / 51
第3話 だから私の返事は ルーラルト視点(2)
「ここっ、3枚目のこの部分! 噂の調査をしていた際のっ、俺の行動!! ここがまるで違うんだよっ! この資料では『調査2日目の夜に、行きつけのリストランテでディナーを摂っていた』とあるだろうっ!? その時も俺は必死になって噂の発生源を探していた!! そんな事実はないんだよ!!」
実際その日は、最高の素材が手に入ったと聞いて食事を行っていた。だがそこを認めてしまうと、復縁はあり得なくなってしまう――最高金賞受賞者を妻にできなくなってしまう。
だからそれが記載されている部分を、力強く叩いた。
「解決を誓った次の日に、呑気にそんなことをしているはずがないっ。それにだ! 仮に実際に行っていたとしても、その情報が手に入るわけがないんだよっ。なぜならそのリストランテは父上の旧友が経営している上に、客や客がする会話などには守秘義務が発生する場所なのだからね!」
オーナーと父上は固い絆で結ばれていて、情報が洩れるような真似はしない。一応は作戦中だったため輪をかけて人目の有無を気遣っていて、入退店も間違いなく目撃されていない。
どこにも隙はないのに、なぜ事実を掴まれているのかは分からない。だが把握される要素がないのだから、押し通せるっ。挽回の切っ掛けにできる!
「よってここは捏造で、一つ捏造なら他の部分も捏造の可能性がある。……あいにくと他の部分は、この場で証拠を出して否定することはできない。だが時間を貰えれば、証拠を出して否定することも可能だと思う」
はっきり言って、そうできる術は思い浮かばない。
しかしウチにはお抱えのブレインなど、優秀な人材が複数いる。ソイツらにも協力させれば、上手くやり過ごせるはずだ。
「……ルーラルト様。私は、この情報を信じていて――」
「そう感じるのも、無理はない。でも俺の言葉に嘘はない、自作自演なんかではないんだ。あれは全て、君を想っての行動なんだ。できるだけ早く証明してみせるから、少しだけ待っていておくれ」
そうして俺は余裕たっぷりに微笑み、馬車に乗り込むと急いで屋敷へと走らせる。
最高金賞受賞者で文化勲章持ちは、大きなステータス。すぐ他の貴族達も目をつけ、群がってくるはずだ。だから――
「ん? なんだ、あの馬車は?」
レルアユス邸を離れて、間もなくだった。見慣れない馬車とすれ違い、ソレはレルアユス家の敷地内へと消えていった。
「どこかで、見た覚えがあるな……。どこだったか…………」
「ルーラルト様。あちらの馬車は、お抱え調律師殿のものと記憶しております」
「ああ、そうだそうだ。そうだったな従者。……調律師なら、気にする必要はないか」
一瞬『情報の収集者』もしくは『ステラスを狙う貴族』かと思ったが、調律師ならどちらもない。そこで俺は存在を無視して屋敷に戻り、大急ぎで作戦会議を始めたのだった。
実際その日は、最高の素材が手に入ったと聞いて食事を行っていた。だがそこを認めてしまうと、復縁はあり得なくなってしまう――最高金賞受賞者を妻にできなくなってしまう。
だからそれが記載されている部分を、力強く叩いた。
「解決を誓った次の日に、呑気にそんなことをしているはずがないっ。それにだ! 仮に実際に行っていたとしても、その情報が手に入るわけがないんだよっ。なぜならそのリストランテは父上の旧友が経営している上に、客や客がする会話などには守秘義務が発生する場所なのだからね!」
オーナーと父上は固い絆で結ばれていて、情報が洩れるような真似はしない。一応は作戦中だったため輪をかけて人目の有無を気遣っていて、入退店も間違いなく目撃されていない。
どこにも隙はないのに、なぜ事実を掴まれているのかは分からない。だが把握される要素がないのだから、押し通せるっ。挽回の切っ掛けにできる!
「よってここは捏造で、一つ捏造なら他の部分も捏造の可能性がある。……あいにくと他の部分は、この場で証拠を出して否定することはできない。だが時間を貰えれば、証拠を出して否定することも可能だと思う」
はっきり言って、そうできる術は思い浮かばない。
しかしウチにはお抱えのブレインなど、優秀な人材が複数いる。ソイツらにも協力させれば、上手くやり過ごせるはずだ。
「……ルーラルト様。私は、この情報を信じていて――」
「そう感じるのも、無理はない。でも俺の言葉に嘘はない、自作自演なんかではないんだ。あれは全て、君を想っての行動なんだ。できるだけ早く証明してみせるから、少しだけ待っていておくれ」
そうして俺は余裕たっぷりに微笑み、馬車に乗り込むと急いで屋敷へと走らせる。
最高金賞受賞者で文化勲章持ちは、大きなステータス。すぐ他の貴族達も目をつけ、群がってくるはずだ。だから――
「ん? なんだ、あの馬車は?」
レルアユス邸を離れて、間もなくだった。見慣れない馬車とすれ違い、ソレはレルアユス家の敷地内へと消えていった。
「どこかで、見た覚えがあるな……。どこだったか…………」
「ルーラルト様。あちらの馬車は、お抱え調律師殿のものと記憶しております」
「ああ、そうだそうだ。そうだったな従者。……調律師なら、気にする必要はないか」
一瞬『情報の収集者』もしくは『ステラスを狙う貴族』かと思ったが、調律師ならどちらもない。そこで俺は存在を無視して屋敷に戻り、大急ぎで作戦会議を始めたのだった。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません
黒木 楓
恋愛
子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。
激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。
婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。
婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。
翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。
「退屈な女だ」と婚約破棄されたので去りましたが、翌日から国政が止まったそうです。え、私はもう存じませんけど?
にたまご
恋愛
公爵令嬢クラーラは、ユリウス王太子殿下に婚約を破棄された。
「退屈な女だ」「何の取り柄もない」と。
否定はしない。
けれど殿下が知らないだけで、通商条約も予算案も外交書簡も、この国の政務の大半を六年間匿名で回していたのは──この「退屈な女」だ。
婚約破棄の翌朝、宰相補佐官のレオンが焼き菓子と四十二件の緊急報告を携えて公爵邸を訪れる。
「貴女がいなくなった王宮は、控えめに申し上げて、地獄です」
──存じません。私はもう、ただの無職ですので。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした
みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。
会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。
そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。
お前との婚約は、ここで破棄する!
もちもちほっぺ
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ
ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。
スピーナ子爵家の次女。
どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。
ウィオラはいつも『じゃない方』
認められない、
選ばれない…
そんなウィオラは――
中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。
よろしくお願いします。