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第3話 あっという間に消えた好意と、マリエットの来訪。そして ジェラール視点(2)

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「世間での評判は最悪。良いのは表面だけだった、路傍の石同然の女。こんなヤツと関係を持つメリットがどこにある。いいに決まっているだろう」

 俺はアドンに即答し、隣に居るマリエットを鼻で笑う。
 親バカのお前には、魅力たっぷりな女に見えるんだろう? だが現実は違う。ここにいるのは、デメリットしかないゴミだ。

「確かに俺はマリエットに夢中になっていたが、そんな『悪夢』からすでに目覚めている。コイツへの愛など一滴もない」
「ルアール卿、こういう状況となっているのですよ。この関係を続けても、こちらにプラスはありませんのでな。このお話は、なかったものとさせてもらいますぞ」

 不祥事が発生した場合は、問答無用で婚約を破棄できる。それはどの国にでもある、当然のルール。そこで俺達はぴしゃりと言い放ち、俺は門の方向へと顎をしゃくった。

「問題を起こしておいて、謝罪すらない。そんな貴様らは、存在しているだけで場を汚す。さっさと立ち去れ!!」
「……承知いたしました。では速やかに実行できるよう、お支払いをお願い致します」

 そうするとアドンは慇懃無礼に腰を折り曲げ、下卑た笑みを浮かべた。
 支払い……? コイツは、何を言っているんだ?

「クレランズ卿、ジェラール様、お忘れでございますか? わたくし共がお貸しした、1億5000万ギル(1ギル=1円)を」
「まさか。その件は忘れておりませぬよ」
「俺達は、由緒正しき伯爵家の貴族。借りたものは覚えている」

 婚約後は当然アドンとも密接な関係となり、その影響もあって、やがて父上は事業を立ち上げた。だがソレに失敗して莫大な借金が生まれ、特別に『無金利』『無期限』という条件で金を借りていたのだ。

「……わたくし共がこの条件を提示させていただいたのは、クレランズ家が娘の嫁ぎ先ゆえにございます。婚約を破棄なされるのであれば、無関係となってしまいますので。条件が満たされなくなってしまいますので、お約束通り即座の返済をお願い致します」
「バカを言え!! 関係消滅は貴様らの原因によるものだろうが!! そんな理屈が通用するものか――」
「それが、通用してしまうのですよ。契約書には、そう記されておりますので」

 ヤツは懐から書類を取り出し、………………。確かに、そうだ。すっかり、忘れてしまっていた。

『関係が解消された場合は即返済の義務が生じ、金利も遡って適応される』。
『いかなる理由があっても適応され、不履行などの対策として、支払いが完了するまで関係の解消は不可能』

 と、記されてあった。
 だから、俺達は顔を見合わせて……。揃って、正面へと向き直ると……。

「ですので破棄なさるのであれば、そうですね……。金利を追加した上で慰謝料を引かせていただきますので、1億ギルですか。こちらをご用意くださいませ。もちろん婚約の破棄を撤回してくださるのであれば、この場での返済は必要ありませんよ」
「ジェラール様。わたくしは貴方様を心よりお慕いしており、関係の修復を行いたいと強く願っておりますの。きっと後悔させないとお約束しますから、引き続きお傍に置いてくださいまし……‼」

 まるで悪魔のような笑みと、おもわずゾッとしてしまう程に必死な顔が、作られたのだった――。

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