俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず

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番外編 親子のその後~息子ジェラールside~ 俯瞰視点(2)

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((24時間365日体制で監視している? それがどうした!! そんなもの乗り越えてやる!!))

 新たに空になった、大きなジョッキ。それを叩きつけるようにテーブルへと起き、ジェラールは勢いよく立ち上がります。
 これまで溜まりに溜まったストレス。自己中心的な被害者意識。そこに大量のアルコール摂取による激しい酔いが加わり、彼はそう決心をしました。

((俺は次期伯爵様となる人間だったんだ!! こんな人生を送っていていい人間じゃないんだ!! 今度こそ、必ず成功させてみせる!!))

 口の周りについた泡を袖で力強く拭き、酒場を闊歩。バシッと音がするほど強くカウンターに代金を置き、来店時とは正反対の足取りで――力強い足取りで外へと出て、待機させていた馬車に乗り込みます。そうしてジェラールは、

「ミッデゲルを目指せ!! 全力疾走で以てミッデゲルへと走るんだ!!」

 御者に指示を出し、彼を載せた馬車は猛スピードで走り出しました。
 この国の東部に位置する街、ミッデゲル。そこにも貴族時代の知人がおり、幸いにもジェラールには貸しがありました。
 今回はその『恩』を使い、ミッデゲル経由で越境。2~3つ離れた国へと行方をくらまし、今一度リセットをさせようとしていたのです。

「不審な追跡は…………ないな。よーしよしよし。いける、いけるぞ……!!」

 走り出して3分ほどが経過したタイミングで、窓から周囲の様子をチェック。違和感なしを確信した彼は、満足げに大きく3度頷きました。

 これまで1年間、アドンに服従していた点。
 急遽思い付いたが故に、一切不審な前兆がなかった点。
 急遽思い立ったが故に、一切金品の持ち出しをしていない点。

 以上の3点により、所謂鬼門を突破できれば――スタートさえちゃんと切ることができれば、成功できる。ジェラールの中には、そんな考えがあったのです。

「突発的、前回とは正反対。だとしたら、結果も正反対となる。今度こそ、だ。俺は自由を得る……!!」

 あの時のように大金はなく、新たな地盤を作るのは苦労するだろう。だがそれでも、今よりは遥かにマシだ! おめでとうジェラール! よくやったジェラール‼
 彼は車内で快哉を叫び、鼻歌を歌いながら到着を待ちます。そうして上機嫌で、1時間ほど馬車に揺られて――

「っ!? な、なんだ……!?」

 突如、その余裕が消え去ってしまうこととなります。
 なぜならば。不意に急ブレーキがかかり、突然馬車が停まってしまったからです。

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