41 / 41
番外編 マリエットとアドンの、その後 俯瞰視点(5)
しおりを挟む
「ねえ、マリエット。最近、アドン様――お義父様が、全然いらっしゃらないね。何か聞いていないかい……?」
「え!? あ、おっ、お父様ですか!? お父様は最近多忙で、なかなか時間がないそうですわっ。何かと物入りなようですしっ!」
((ああ、監視の資金か……))「そうなんだ。ああそれともう一つ、気になることがあるんだ。マリエットは、今日も家から出ないのかい?」
「ええ、そうなんですのっ! わっ、わたくしは炊事洗濯に目覚めましてっ! こちらに夢中ですのっ! お友達とカフェでのんびりするより、楽しいんですのっ!」
パウル・ハネットスの来訪から、10日後。2人の住居では、そんなやり取りが行われていました。
もちろん、それらは全て嘘。父アドンにはああいったことが起き、娘マリエットには――
「君は金輪際、この敷地から出るな。ここでいつまでも、愛する運命の人と過ごすんだ」
こういった命令が出ており、反故にすれば大変な目に遭ってしまいます。そのためもう、ああいった贅沢な昼下がりを過ごすことはできなくなっているのです。
「そ、そうなのかい? ……言い方は悪くなってしまうけれど、君らしくないね。何かあったのかい?」
「なっ、なにもありませんわっ!! わたくしはずっとわたくしですわっ!! ですからわたくしらしくって、あらジェラール様っ! もうお時間ですわっ! お仕事の時間ですわよっ!!」
「え? う、うん、そうだね。じゃ、じゃあ、行ってくるよ」
そうしてジェラールは外へと出かけ、見送りが終わるやマリエットはへたり込みます。あっという間に下半身から力が抜け、玄関口で座り込んでしまいます。
「本当はわたくしだって、自由にしたいですわ……!! でも、出来ませんの……!!」
最愛の人と過ごす毎日は、とっても幸せ。だけど、敷地から外へ出られないのはつらい。
――幸せだけどつらい――。
「いや……。いや……っ。こんなの、いやぁぁ……っ。幸せだけが、欲しい……っ。つらいのは、要らない……っ。いやぁぁぁぁぁぁ……!!」
そのため頭を抱えて嘆きますが、どうにもなりません。
理不尽な怒りによって善良な令嬢を傷付け、悪びれず、ジェラールの人生を支配したマリエット。そんな彼女もまた他者によって支配をされてしまい、薔薇色だった人生には大量の茨が生えてしまったのでした――。
「え!? あ、おっ、お父様ですか!? お父様は最近多忙で、なかなか時間がないそうですわっ。何かと物入りなようですしっ!」
((ああ、監視の資金か……))「そうなんだ。ああそれともう一つ、気になることがあるんだ。マリエットは、今日も家から出ないのかい?」
「ええ、そうなんですのっ! わっ、わたくしは炊事洗濯に目覚めましてっ! こちらに夢中ですのっ! お友達とカフェでのんびりするより、楽しいんですのっ!」
パウル・ハネットスの来訪から、10日後。2人の住居では、そんなやり取りが行われていました。
もちろん、それらは全て嘘。父アドンにはああいったことが起き、娘マリエットには――
「君は金輪際、この敷地から出るな。ここでいつまでも、愛する運命の人と過ごすんだ」
こういった命令が出ており、反故にすれば大変な目に遭ってしまいます。そのためもう、ああいった贅沢な昼下がりを過ごすことはできなくなっているのです。
「そ、そうなのかい? ……言い方は悪くなってしまうけれど、君らしくないね。何かあったのかい?」
「なっ、なにもありませんわっ!! わたくしはずっとわたくしですわっ!! ですからわたくしらしくって、あらジェラール様っ! もうお時間ですわっ! お仕事の時間ですわよっ!!」
「え? う、うん、そうだね。じゃ、じゃあ、行ってくるよ」
そうしてジェラールは外へと出かけ、見送りが終わるやマリエットはへたり込みます。あっという間に下半身から力が抜け、玄関口で座り込んでしまいます。
「本当はわたくしだって、自由にしたいですわ……!! でも、出来ませんの……!!」
最愛の人と過ごす毎日は、とっても幸せ。だけど、敷地から外へ出られないのはつらい。
――幸せだけどつらい――。
「いや……。いや……っ。こんなの、いやぁぁ……っ。幸せだけが、欲しい……っ。つらいのは、要らない……っ。いやぁぁぁぁぁぁ……!!」
そのため頭を抱えて嘆きますが、どうにもなりません。
理不尽な怒りによって善良な令嬢を傷付け、悪びれず、ジェラールの人生を支配したマリエット。そんな彼女もまた他者によって支配をされてしまい、薔薇色だった人生には大量の茨が生えてしまったのでした――。
503
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(275件)
あなたにおすすめの小説
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
2021/7/18
HOTランキング1位 ありがとうございます。
2021/7/20
総合ランキング1位 ありがとうございます
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
丸山 令様。大変申し訳ございません……。通知を毎回、見落としてしまっていたようでして……。せっかくいただいていた感想に、まったくお返事ができなかったこと(お礼をできていなかったことを)、お許しくださいませ……。
やはり。悪いことをしてしまったら、返ってきてしまうようです。
そのため全員が、こんな風になってしまって。あちらとこちら(悪いことをしていない人としている人)は、正反対の未来となってしまいました。
そして。
ほかのお話までチェックをしてくださり、本当にありがとうございます。
年末年始は、忙しい時期ですし。ご無理はなさらないでくださいませ……っ。
柚木ゆず様😊こんにちは✨
エピローグ 幸せの始まり
まで、拝読致しました。
こちらはハッピーエンディング😊
ご両人甘々で
おめでとうございました🎊
一方もう一組のハッピー(?)
エンディング。
娘の執着もおっかないけど
親父さんが超怖いんですがw
いやぁ!
どうなっちゃうのぉ🤣
またお邪魔いたしますね
丸山 令様。お返事が非常に遅れてしまい、申し訳ございませんでした。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
あの人の父親は……。かなり、別の意味で危険な人でして。
このあと……。
色々なことが、彼らを、待っていると思います……!
第11話まで拝読致しました♪
追い詰められたジラール様、てっきり下手に出てくるかと思ったら、クラリスちゃんを恫喝するなんてw斜め上すぎて、笑かして頂きました🤣
婚約者からも結婚を迫られ、元婚約者からも、結婚するように言われw
正に前門の虎後門の狼。
その上更に脱走劇に続くんですねw
不幸に向かって突き進んでいくジラール様^_^
引き続き楽しみにお邪魔しますね♪
丸山 令様。同じくお返事が遅くなってしまい、申し訳ございません。
はい……。どっちに転んでも、な状況になってしまっております。
そしてここから更に、彼の形勢は悪くなっていくようでして。
最終的には……。
かなりのことに、なりそうです。