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5話(3)

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「待たせたね。解決したとのメッセージが届き、集めた兵を解散させていたんだよ」

 午後1時50分。約束の時間から20分も過ぎて、爽やかそうに見える若者こと第一王子が到着。年配の人――この街にいたという前国王の元側近を引き連れて現れた彼は、まったく悪びれた様子もなく対面のソファーに座った。


 緊急性がなくなったと分かるや、平気で自分の都合を優先させる。


 こういう部分は、元両親や元兄達にそっくり。呆れ笑いが出そうになってしまう。

(今のミファは平民で、コイツは雲の上の地位を持つ者だ。対応には気を付けてくれよ?)
(分かってるわよ。我慢しておくわ)

 悪口は、心の中だけ。外には決して漏れ出さないようにして、外用のしとやかな微笑みを維持させる。

「事情は、伝書鳩の文で把握しているよ。たまたま近くにいた新人冒険者のミファ・ソーラとティル・レイルが、敵を討ち取ったそうだね」
「はい、そうでございます。こちらの少女と少年が、危険を顧みず人型魔物と刃を交え、見事勝利いたしました」
「ふーん、この二人が、ねえ。……ギルドマスターの、レノン・アルジェ。人型魔物襲来は、本当に発生した案件なんだよね?」

 ふむふむ。つまり、『こんな子供が二人で倒した? 信じられないよ。漁師たちと組んで嘘の報告をしたんじゃないの?』と言いたいのね。
 私は心の中で、人様にはお聞かせできない酷さの暴言を吐きました。まる。

「失礼ですがそれはイタズラの範疇を超えておりますし、そもそも彼女たちに騒ぐメリットはありません。そして事実だという証拠が、こちらにございます」
「その魔石は…………確かに、人型のものだね。全ては事実だったようだ」

 魔石を確認したバカ王子は、一言も謝罪をせずに納得する。
 ちなみにこれが逆で平民が王族や貴族にこんな疑惑を持ったら、真偽がどうであれ平民に厳罰が下る。……ホントなんなんでしょうね、この仕組みは。

「だとしたら、ますます不可解な騒動だね。なぜソイツは、このタイミングであんな地点に降り立ったのだろうか? 動機はなんなのだろうね……?」
「それに関しては、魔物の口から説明があったようです。ソーラさんレイルさん、お願いいたします」
「「畏まりました」」

 あいにく身分上は圧倒的に上な存在なので、私達は揃って一礼。それから、


 ノルスが覚醒し、夫人を増やしている行為が勘違いをされていること。
 その牽制のために、人型魔物が各地に派遣されたこと。
 いずれもっと強い魔物、もしくは魔王がこの地を狙うこと。


 以上の内容を、バカ王子でも理解できるよう懇切丁寧にお伝えさせていただいた。

「これらがレミス川で発生した、件の事件の全容となります。全てに間違いはございません」
「私も、右に同じでございます。今の言葉には、僅かな間違いもございません」
「…………なるほど、よく分かったよ。……君たちは、余計な真似をしてくれたね」

 長々とした細説を終えると、バカ王子が鼻から大きく息を抜いた。
 ……は? 余計な真似をした、ですって?
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