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7話(1)

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「…………。おかしいな」
「そうね、ティル。魔物の侵攻が全然起きないのは、おかしいわね」

 クーデターを起こして絶品料理を頂いた日から、3日後。私達は宿の部屋にある午後1時8分を示す掛け時計を眺め、すっかり癖となった腕組みをした。
 ちなみにこの掛け時計は、漁師さんからのプレゼント。他にもいくつか生活に必要なものをもらっていて、この部屋も随分とにぎやかになっているのです。

「いくらなんでも、三日も経てば『部下が討たれた』と気付く。この空白は不自然だ」
「普通なら、怒ってすぐに仕掛けてくるわよね。どうなってるのかしら……?」

 実は56歳だったアルジェさん達とも相談してるけど、皆目見当がつかない。おかげで毎日ソワソワしてて、24時間落ち着かない。

「もしかして……。魔物側は、こうやって神経を衰弱させるのが狙い……?」
「こればっかりは、なんとも言えないな。魔物の情報は、肝心な部分が揃っていないからな」

 どこに魔王と大魔王がいるのか? 人型魔物は何体いるのか? 魔物という生き物は、どうやって生まれてくるのか? どういう理由で獣型や虫型や人型になるのか?
 これまで人類もあの手この手で突き止めようとしていたらしいけど、全然結果が出ていないみたいなのよね。

「そもそもなぜ、人型の魔物は人語を喋ってるんだろ? そこも謎よね」
「これに関しても様々な説が出ているが、どれも決め手はない。本当に謎だな」
「……ここまで謎な相手なら、考えるだけ時間の無駄ね……。お昼ご飯を食べたらギルドに行って、クエストでも受けましょうか」

 私達は国のお金を使うつもりはないので、手持ちは10万5700E。これだけしかないのだ。


 3日前にあったはずの、199万7800E――。人型魔物の魔石を売ったお金と、緊急クエストの成功報酬――。


 その大半がなくなっている理由は、その殆どが武器の調達に消えちゃったから。
 私が使うと、武器は使い捨てになっちゃうからね……。それとちょっとした考えがあって、高価な武器を買っちゃったからね……。懐が寂しいのです。

「資金がなければ、様々な面に支障が出る。名声上げを兼ねて、資金調達を行おう」

 こうして私達の方針が決まり、出掛ける前に食堂で昼ご飯。今日のメニューであるオムライスとポテトサラダ(サーゼルさんが大盛にしてくれた)を味わい、ギルドを目指したのでした。
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