勇者になった幼馴染に婚約破棄された上に追放されたので、英雄になってざまぁしようと思います

柚木ゆず

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第2章

1話(5)

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 ティルの思うところ。それはなんなんだろ……?

「店主殿がお召しになられているのであれば、呪いは間違いなく事実ではありません。となると購入者に一か月間で100人以上何かしらがあるというのは、偶然での発生を考慮しても多すぎる。この数字は明らかに捏造されていて、この噂は間違いなく悪意を持って流されています」
「ぁっ、確かにっ。ティルの言う通りね」

 エンジュで購入した人が短い間に100人以上病気になったり怪我をしたりするなんて、偶然起こることじゃない。この数字こそウソで、大半の被害は出任せだ。

「もしそういう者に心当たりがあるのであれば、仰ってください。こちらの服を着ている事で、ミファに――彼女に何かあっては困りますからね」

 ティルは店主さんに対して「厳しい言葉をお向けして申し訳ありません」と続け、男性の両目を見つめた。
 ……いつもありがとうね、ティル。感謝してます。

「そうでしたね、すみません。僕が思いつく話をさせていただきます」

 店主さんは両手を前で揃えて腰を折り曲げ、店の奥から一枚のポスターを取って来た。

「ええっと……。それは…………『最優秀服飾店 決定コンテスト』と書いてますね」
「この街では一週間後から全3日程の日程で服飾に関するお祭りが行われて、その目玉企画が決定コンテスト。この街にいる人の投票をして、一番良いお店を決める催し物なんですよ」
「ふむ、なるほど。そこでの投票を阻止するために、妨害をされている可能性がある、のですね?」
「…………はい。一位になりますと拍が付きますし、エンジュはおかげ様でとても評判の良い店でしたから。このような手を使ったと思っております」

 5秒くらいの沈黙があったあと、店主さんは静かに頷いた。

「相手は恐らく同業者で、これ以上の大きな事をすると営業権を剥奪されます。なのでお二人の身に何かしら降りかかる心配は、絶対にございません」
「……営業権を失っては元も子のない上に、我々は冒険者。下手したら実行犯が捕まる恐れがあるのであれば、まず間違いなくそういう真似はしませんね」
「そうなのです。とはいえ僕の浅慮で、そういう面を考えてはいなかった――情けないことに、払拭に必死で気が回っていませんでした。ですので無償提供はなかったことにしていただきまして、その代わりにこちらのお金で他店のものを購入してもらえればと思います」

 店主さんはもう一度大急ぎで奥に入り、5万Eを差し出した。

「浅慮のお詫びです。遠慮なくどうぞお受け取りください」
「こっ、こんなの受け取れませんよっ。ねえティルっ」
「ああ、そうだな。……言動で、店主殿の性質を理解致しました。貴方は悪意を微塵もお持ちでない故、噂払拭のお手伝いをさせていただきますよ」

 ティルは店主さんの右手をそっと押し返し、近くにあった黒のシャツと同色のズボンを手に取った。
 自分の過ちをちゃんと打ち明けられる人に、悪い人はいないもんね。私も店内をパパパッと物色して、白色のワンピースを持ってきた。

「お店の服には刺繍があって、ちゃんとアピールできますよね? もらった分はバッチリ宣伝して、バッチリ噂を消しますよ」
「……お客様……。ありがとう、ございます……」
「持ちつ持たれつで、お礼なんて要りませんよ。それじゃ私達はこれで――っとそうだ。お名前はなんですか?」

 各所で『エンジュの〇〇さん製の服』と言えば、効果はもっと上がるよね。その時にちゃんと言えるように、聞いておこう。

「僕はテオ・クリルと申します。テオは自慢の父がつけてくれたものですので、どうかテオとお呼びください」
「分かりました、テオさん。噂は任せてくださいね」

 私達も一応自己紹介をして、お店で着替えさせてもらってから出発。宣伝のためテオさん製の服に身を包み、この街のギルドを目指したのでした。
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