運命の人と出逢ったから婚約を白紙にしたい? 構いませんがその人は、貴方が前世で憎んでいた人ですよ

柚木ゆず

文字の大きさ
2 / 27

第1話 前世の記憶 ミシュリーヌ視点

しおりを挟む
「ジュリエット! この間は悪かった。俺と改めて婚約をしてくれ!」
「…………ブリュノ、なにを言っているの……? 貴方には、ファトート様がいらっしゃるんじゃないの……?」
「そうだね。1年前の俺は、そんな信じられないこと・・・・・・・・を言っていた。……あれは、とんでもない間違いだった。あの女は『運命の人』なんかじゃなかったんだよ」

 ……………………。
 気が付くとわたしは『ジュリエット』と呼ばれていて、見知らぬ場所で『ブリュノ』という男性と言葉を交わしていました。

((これは……。なんなのですか……?))

 分かりません。
 なにもかも、分からない。
 なのに――

 わたし達、ザルフェル子爵令嬢ジュリエットとミアテーズ子爵令息ブリュノは幼馴染。
 ちょうどわたしとアルチュールと同じ17歳の時に婚約を交わし、でも、その僅か一週間後に――今から1年前に、ブリュノが『運命の人と出逢ってしまった!』『ファトート子爵令嬢ミレーユと婚約したい!』と言い出し婚約は解消した。

 ――そういうことを、なぜか知っています。

「……貴方もファトート様も、運命的なものを感じ合っていたのに……。なにがあったの……?」
「…………アイツが俺に言った『わたくしも運命を感じております』『きっとわたくし達は前世で夫婦だったに違いありません』、あれはとんでもない嘘だった。あの女は俺の――ウチの財が目当てで、俺の勘違い・・・を利用して近づき、甘い汁を吸おうとしていたんだ……!」

 それはお互い18歳となって飲酒が認められるようになり、その記念として生まれて初めてワインで乾杯を行った際のこと。酔ったファトート様がうっかり本音を零し、そちらが切っ掛けで本心に気付いた。
 その際は二人きりのため本心の証明ができず慰謝料の請求はできなかったものの、色々あって今朝2人の婚約は白紙になった。そうです。

「……事情は分かったわ。それで、どうしてわたしと――なんて話になるの?」
「アイツに騙されていて怒り狂った日の夜のこと。久し振りにジュリエットの夢を見たんだ。……応援してもらったり、励まされたり、慰められたり、笑い合ったり……。次々と一緒に過ごしてきた記憶が蘇って、そうしてやっと、気が付いたんだよ。ジュリエットこそが運命の人なんだって」

 だから今日、わたしのもとへとやって来て――。
 それを切っ掛けにして……。
 悲劇が起きてしまうことを、思い出しました。

「ジュリエット、過去の過ちはしっかりと償うと約束しよう。だからもう一度その手を握らせてくれ!」
「ごめんなさい。それはできないわ」

 その頃のわたしはすでに新たな婚約を結ぶ準備をしていて、そちらは最終段階に入っていました。それにお相手であるポルーイル子爵令息ステファン様はとてもお優しく、常に気遣ってくださる方で、わたしは恋もしておりました。
 ですので、即座に断り帰ってもらったのですが……。

 その一か月後。ステファン様とジュリエットの婚約が発表された直後。
 最悪の事態が発生してしまうのでした。

「ジュリエットは俺の運命の相手なんだぁあああああああああ!! お前さえいなければぁああああああああああああああ!」
「がぁ……!?」

 自分勝手に想い直したあげく自分勝手にジュリエットへの恋心を暴走させていたことと、短期間で婚約解消を2度も行った結果自分ではなく実弟が嫡男になってしまったこと。それらによってブリュノは自棄を起こし、大勢が居る前でステファン様を刺殺してしまったのです……。

「次はミレーユだ!! 同じように殺してやる――ぐああ!? 離せ!! はなせぇえええええええええ!!」

 ブリュノはすぐに取り押さえられ、貴族界の法に則り厳しい罰がくだされました。
 ですがいくらブリュノが裁かれても、ステファン様は戻ってこない。
 ですから…………

「ぁぁぁぁぁ……。ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!」

 ジュリエットは泣き崩れて絶望し、その時のショックが原因で激しく体調を崩してしまい……。そのままこの世を去ってしまったのでした。





((………………そういうこと、だったのですね……))

 ようやく、理解しました。
 これは、わたしの前世の記憶で…………。記憶が蘇った今なら、本能的に分かりました。

 ――ブリュノ・ミアテーズは、アルチュール――。
 ――ミレーユ・ファトート様は、ヴィルジニー様――。

 と、いうことを。
 そして、もうひとつ。
 ステファン様とわたしが死の直前に祈った、

 ――もし叶うなら……。来世では……今度こそ……。君と、夫婦に、なりたいよ……――。
 ――来世では、今度こそステファン様と幸せに過ごしたい――。

 を叶えるために、生まれ変わっていたということを。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。予約投稿済みです。

何か勘違いされていませんか?

りのりん
恋愛
楽しかった日常に不穏な雰囲気が あんなに憧れていた兄様が…… ダブルざまぁでさようなら

王族の言葉は鉛より重い

Vitch
恋愛
 フォークライン公爵の娘であるミルシェ。  彼女は間違い無く公爵の血を引く娘だった。  あの日までは……。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?

時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。 どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、 その理由は今夜の夜会にて

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...