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第2話 記憶が戻って ミシュリーヌ視点(2)
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「…………前世の記憶、か。荒唐無稽な話だが、長期間の記憶を鮮明に説明できるということは……。事実なのだろうな」
2時間半ほど自室にこもったあと。執務室に向かい細説を行うと、お父様は戸惑いながらも信じてくださりました。
「あのアルチュールくんが、前世でミシュリーヌを絶望させた……。こたびの婚約白紙の件が霞んでしまうほどの情報だな……」
「わたしも蘇る記憶を感じていて、言葉を失ってしまいました。でも、よかったです。このタイミングで気がつけて」
「そうだな。どうしても『家』が第一になってしまうが、それでもだ、お前には出来る限り幸せでいて欲しい。不幸にする要因に気がつけて、排除できてよかった」
お父様はテーブルを一瞥されたあと――常に飾っているお母様の婚約指輪へと視線を動かした後、穏やかに頷かれました。
「あの場で起きた全ての出来事への抗議も含め、婚約に関する処理は任せておいてくれ。他に、私に伝えたいことはないのかい?」
「もう一点ございます。こちらをご覧ください」
「? これは……?」
「アルチュールの暴走。今後起こるであろう出来事に備えた、悲劇を回避するための対策でございます」
アルチュールの『ドザベルド家』よりヴィルジニー様の『ザストール家』が裕福になっているなど、前世と異なる部分はあります。ですが『わたし達は幼馴染』『あの時と同じ年齢、同じ日に解消を提案されている』など、共通点の方が明らかに多いのです。
ですので何かしらの理由で『アルチュールとザストール様は別れる』と確信しており、その後についても嫌な予感がしているのです。
「前世では1年後でしたが、すでに異なる点があるため時期がずれる可能性もあります。それらはそういった部分にも対応しておりまして、そちらを行っていただくだけで回避が可能です」
発生する時期が不特定なのは厄介ですが、ウチとドザベルド家は力的に大差なく、加えてマチュおじ様は――アルチュールのお父様は、最低限の常識は持っている。その現状と性質を活かせば、比較的に容易に対応できるのです。
「……なるほど、よく分かった。すぐに取り掛かろう」
「ありがとうございます」
「私は台本通りに動けばいいだけだ。大した苦労はないさ」
お父様は優しく微笑まれ、そのあと、ご自身の後頭部を指差しました。
「その様子だと問題はなさそうだが、用心するに越したことはない。医者を呼ぶから安静にしていなさい」
「はい。ありがとうございます」
今度はお気遣いに感謝をし、わたしはお医者様がいらっしゃるまでベッドで横になります。そうすると、記憶が蘇った影響――脳に、予想外の負荷がかかった影響なのかもしれませんね。
((この人生にはそういう意味があったなんて、驚きました。ステファン様、貴方様とも再会できるのですよね? その時を楽しみにして、おり、ます…………))
そんなことを考えているうちに自然とまぶたが降りて、わたしはそのまま眠りの世界に落ちていったのでした――
2時間半ほど自室にこもったあと。執務室に向かい細説を行うと、お父様は戸惑いながらも信じてくださりました。
「あのアルチュールくんが、前世でミシュリーヌを絶望させた……。こたびの婚約白紙の件が霞んでしまうほどの情報だな……」
「わたしも蘇る記憶を感じていて、言葉を失ってしまいました。でも、よかったです。このタイミングで気がつけて」
「そうだな。どうしても『家』が第一になってしまうが、それでもだ、お前には出来る限り幸せでいて欲しい。不幸にする要因に気がつけて、排除できてよかった」
お父様はテーブルを一瞥されたあと――常に飾っているお母様の婚約指輪へと視線を動かした後、穏やかに頷かれました。
「あの場で起きた全ての出来事への抗議も含め、婚約に関する処理は任せておいてくれ。他に、私に伝えたいことはないのかい?」
「もう一点ございます。こちらをご覧ください」
「? これは……?」
「アルチュールの暴走。今後起こるであろう出来事に備えた、悲劇を回避するための対策でございます」
アルチュールの『ドザベルド家』よりヴィルジニー様の『ザストール家』が裕福になっているなど、前世と異なる部分はあります。ですが『わたし達は幼馴染』『あの時と同じ年齢、同じ日に解消を提案されている』など、共通点の方が明らかに多いのです。
ですので何かしらの理由で『アルチュールとザストール様は別れる』と確信しており、その後についても嫌な予感がしているのです。
「前世では1年後でしたが、すでに異なる点があるため時期がずれる可能性もあります。それらはそういった部分にも対応しておりまして、そちらを行っていただくだけで回避が可能です」
発生する時期が不特定なのは厄介ですが、ウチとドザベルド家は力的に大差なく、加えてマチュおじ様は――アルチュールのお父様は、最低限の常識は持っている。その現状と性質を活かせば、比較的に容易に対応できるのです。
「……なるほど、よく分かった。すぐに取り掛かろう」
「ありがとうございます」
「私は台本通りに動けばいいだけだ。大した苦労はないさ」
お父様は優しく微笑まれ、そのあと、ご自身の後頭部を指差しました。
「その様子だと問題はなさそうだが、用心するに越したことはない。医者を呼ぶから安静にしていなさい」
「はい。ありがとうございます」
今度はお気遣いに感謝をし、わたしはお医者様がいらっしゃるまでベッドで横になります。そうすると、記憶が蘇った影響――脳に、予想外の負荷がかかった影響なのかもしれませんね。
((この人生にはそういう意味があったなんて、驚きました。ステファン様、貴方様とも再会できるのですよね? その時を楽しみにして、おり、ます…………))
そんなことを考えているうちに自然とまぶたが降りて、わたしはそのまま眠りの世界に落ちていったのでした――
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