7 / 27
第4話 記念すべき席で アルチュール視点(2)
しおりを挟む
「? アルチュール様、どうされたのですか?」
「? アルチュール……?」
「? アルチュールくん……?」
「…………………………え? あ、ああ。今、誰かの声が聞こえませんでしたか?」
ヴィルジニーのグラスにワインを注ぎ始めて、すぐ。1秒くらい経ったタイミングだったと思う。
女の声が、うっすらと聞こえた。
「声、ですか? わたくしには、聞こえていませんね」
「私にも、聞こえてはおらんな」
「同じく。アルチュールくん、あの声はなんて言っていたんだい?」
「声の大きさはとても小さくて、全体は聞き取れなかったんですが……。『わたくし』と言っていたのは分かりました」
それも本当にうっすらとだったが、そこだけは理解できた。わたくし、と言っていた。
「わたくし、ですか……」
「話し声? のようだった気がする。誰かに向けて何かを話していて、その一部を聞き取れたのだと思う」
「うーむ。アルチュール。声質は分かるか?」
「…………ヴィルジニーに似ていました。ただ少し低く、少しだけ大人びていたように感じましたね」
だから聞こえて来た瞬間は、ヴィルジニーがボソッと呟いたのかと思った。
だがあの時彼女の口は、閉じられていたんだ。ヴィルジニーが呟いた可能性は0で、そもそも本人が否定しているのだから100パーセント違う。
「ヴィルジニーくんに、似ているのか……。屋敷内の声が聞こえたのかと思ったが、似たような声の者はおらんな……」
「ヴィルジニーとそっくりな声の人間が喋りながら敷地外を歩いていたなら、ありえる話だが……。敷地外の声がここまで聞こえるとは思えない……」
「ですわね、お父様。なんなのでしょうか……?」
「……………………ヴィルジニーも父上もクレマンお義父さんも聞こえていないなら、気のせいなのでしょう。ヴィルジニー、ワインを継ぎ直すよ」
気にはなるが、気にしていてもしょうがない。だって解明しようがないのだから。
そこで仕方なく再度ボトルを手に取り、ヴィルジニーのグラスに注ぎ始め――…………。また、すぐだった。
《わたくし、ブリュノ様と『18歳記念』をお祝いできると思っていませんでした》
もう一度、しかしながら今度ははっきりと、謎の声が聞こえてきたのだった。
((ち、違う! 聞こえてきているんじゃない。頭の中に響いてきてるんだ!))
しかも……。
それは、一度きりではなくて――
「? アルチュール……?」
「? アルチュールくん……?」
「…………………………え? あ、ああ。今、誰かの声が聞こえませんでしたか?」
ヴィルジニーのグラスにワインを注ぎ始めて、すぐ。1秒くらい経ったタイミングだったと思う。
女の声が、うっすらと聞こえた。
「声、ですか? わたくしには、聞こえていませんね」
「私にも、聞こえてはおらんな」
「同じく。アルチュールくん、あの声はなんて言っていたんだい?」
「声の大きさはとても小さくて、全体は聞き取れなかったんですが……。『わたくし』と言っていたのは分かりました」
それも本当にうっすらとだったが、そこだけは理解できた。わたくし、と言っていた。
「わたくし、ですか……」
「話し声? のようだった気がする。誰かに向けて何かを話していて、その一部を聞き取れたのだと思う」
「うーむ。アルチュール。声質は分かるか?」
「…………ヴィルジニーに似ていました。ただ少し低く、少しだけ大人びていたように感じましたね」
だから聞こえて来た瞬間は、ヴィルジニーがボソッと呟いたのかと思った。
だがあの時彼女の口は、閉じられていたんだ。ヴィルジニーが呟いた可能性は0で、そもそも本人が否定しているのだから100パーセント違う。
「ヴィルジニーくんに、似ているのか……。屋敷内の声が聞こえたのかと思ったが、似たような声の者はおらんな……」
「ヴィルジニーとそっくりな声の人間が喋りながら敷地外を歩いていたなら、ありえる話だが……。敷地外の声がここまで聞こえるとは思えない……」
「ですわね、お父様。なんなのでしょうか……?」
「……………………ヴィルジニーも父上もクレマンお義父さんも聞こえていないなら、気のせいなのでしょう。ヴィルジニー、ワインを継ぎ直すよ」
気にはなるが、気にしていてもしょうがない。だって解明しようがないのだから。
そこで仕方なく再度ボトルを手に取り、ヴィルジニーのグラスに注ぎ始め――…………。また、すぐだった。
《わたくし、ブリュノ様と『18歳記念』をお祝いできると思っていませんでした》
もう一度、しかしながら今度ははっきりと、謎の声が聞こえてきたのだった。
((ち、違う! 聞こえてきているんじゃない。頭の中に響いてきてるんだ!))
しかも……。
それは、一度きりではなくて――
201
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?
時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。
どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、
その理由は今夜の夜会にて
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる