どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず

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第18話 声をかけた理由 アリシア視点

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((意趣返しは、思った以上に効いてしまったわね……))

『おぶぅ…………』
『おぶ……。おぶぶぶぶ…………』
『ぼのぉぼけええふぇえええええええええええふぇふぇふぇヴぇヴぇええヴぇええヴぇヴぇええヴぇえええヴぇえせぇえええええ!!』

 ものすごい奇声を発しながら運ばれていった、ヴァイオレット様。よだれ塗れになってニヤリとしている異様な姿を目にしていた私は、なんだか申し訳ない気持ちになっていた。

((初めて知ったわ……。人って、あんな風になってしまうのね……))

 あの方はパーティーの主催者で、一番の悪。自業自得とはいえ、アレを見てしまったら……。
 多分、誰だってこんな気持ちになると思うわ。

((……ヴァイオレット様、大丈夫かしら……? 無事、よね……?))

 あのまま意識が戻らなかったり、意識は戻ったもののあの状態のまま――。そんなことになったら、さすがに気の毒よね。

((ここまでするつもりは、なかったんだし。私も他の参加者と一緒に、無事を祈りましょうか))

 そうしてアルマ様達と共に胸の前で手を組み、回復を願って…………。よかった。

「……皆様、多々ご心配をおかけしました。娘は現在眠りについておりますが、精神は安定しており問題がありませぬ」

 1時間ほどするとぺティノール卿がいらっしゃって、大丈夫なのだと分かった。
 そのため心配はもう不要となったし、主催者不在によりパーティーはお開きとなった。なので、私も去ろうとしたのだけれど――。

((ヴァイオレット様がまた何かをしてきたら、面倒なことになりそうね))

 ふと、それが頭をよぎった。
 これから私は婚約に関することで慌ただしくなるし、ロイス様に関する『アレ』もある。そちらに付き合っている余裕なんてないのよね。

((ヴァイオレット様なら、『よくも騙したわね!』って逆恨みしそうなのよねぇ。だから――))

 一つ、保険をかけておくことにした。

「ペティノール卿、お願いがございます」

 絶品のローストビーフ。ボヌール管弦楽団の生演奏。ムカデのブローチ。貴重な体験をしたし、パーティーが切っ掛けでエッグタルトのお土産までいただいた。
 なのでその感謝を込めて、『保険』。ヴァイオレット様が何もしなければ平穏な日常が続き、動き出したら日常が崩壊するように『仕込み』をしておいたのだった。



 ヴァイオレット様。今夜は素敵な時間をありがとうございました。
 賢明な選択を、期待しております。

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