unison~元婚約者様へ。私は決して、復縁はいたしません~

柚木ゆず

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第15話 うまくいった! マーティン視点(3)

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「マーティン様。こちらの方々を、よくご存じですよね?」
「し、知らない……。面識なんてない……。どうしてコイツらは、俺の名を叫んでいるんだ……?」

 どうなっている!? どうなってるんだ!!
 あの様子、セリアは裏切ってはいない! そもそも裏切るはずがない!! 連行担当の局員だって、大金で買収していて裏切るはずはない!! 侯爵家の力を使って細心の注意を払って動いていて、露見することだってないはずなのに!!
 なぜっ、こんなことになっているんだ!?

「俺も、理由が分からない……。こちらが教えて欲しいくらいだよ……!」
「そうなのですね。では、お教えいたします。お三方がこのような状態になり、こう仰られているのは、貴方様から協力を持ちかけられていたからですよ」

 先日『ポワール』――行きつけの店でセリアに接触し、100万などを渡して仲間にしたこと。父上の旧友――治安局幹部と接触し、忠実な部下2人を用意させたこと。
 それらに関する情報が…………情報だけではなく証拠が記された書類を、ステラはこちらに向けた……。

「マーティン様、私は――私達はずっと、今日ここで何が起きるのかを知っていました。お芝居をしていたのは、そちらだけではなかったのですよ」
「ば、バカな……。そんな、バカな……。なんで……。こんなことに…………⁉」

 裏で動いていると掴まれたら、取り返しのつかない状況になる。だからソコは輪をかけて慎重に動いた。例えだ! 俺に疑いを持っていて! 注視していても、悟られないように動いていたのに……。
 どう、なっている……!?

「わ、訳が分からない……。あり得ないことが、起きている……。これは、夢か……? 悪夢なのか……!?」
「いいえ、夢ではなく現実です。……マーティン様。その疑問は、ヴィクター様が解決してくださいますよ」

 ヴィクター? ソイツは調律師だろう。調律師がどう解決するんだ……!?
 混乱する頭でそんなことを考えていると、ヤツがステラの隣に――俺の前にやって来た。

「お、お前が……。なにか、していたというのか……!?」
「そうなりますね。そちらについてこれから詳説を行いますが――そのままでは、受け入れられない内容となっています。そこでそちらを解消できるよう、まずは僕の正体をお教えしましょう」

 な、なんだ? ヴィクターは突然頭部へと右手を伸ばし………………は? 茶色の長髪が取れて――ウィッグがはずれて、その下からは金色の髪が出てきた。
 そして更には目の下を擦ると左にあった泣きボクロが消え、それによって目の前には見覚えのある姿が――お姿が、現れた……。

「そ、そんな……。い、いや、まさか……。そんなはずが――」
「あるんだよ。これがその証拠さ」

 おもわず後ずさっていると、今度は胸元にペンダントが表れた。
 そこに刻まれている、獅子と剣の紋章。これはこの国『リオン』の、王家の紋章。

 だから…………やはり、そうだった。今、目の前にいらっしゃるのは……。ずっとヴィクターだと思っていた男は――


 リオンの、第二王子殿下。レオナード・リオンゼル様だった…………。

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