クローンだった私と、兄

柚木ゆず

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「こ、これ……。これってまさか……っっ」
「そうだよ。あの事故で死んだのは、妹じゃなくて兄妹。僕もクローンなんだよ」

 彼は様々な感情が入り混じった微苦笑を浮かべ、自分の胸元に触れた。

「兄妹は一緒に買い物に出掛けていて、あのとき夏樹さんも一緒に亡くなったんだって。この日記帳に、書いてあったよ」
「かっ、貸してっ! そんなことが本当に……………………。書いて、ある……」

 居眠り運転をした車が突っ込んできて、咄嗟に夏樹が動いたものの、二人とも死んでしまった。
 もう二人を見れないのは、辛い。もう二人と話せないのは、辛い。
 こんな現実は、認められない。
 だから子供達の死体を使い、事故に遭う直前の状態を再現した。

 そんな文字が、ペンで綴られていた。

「僕はね、春香に本物の姿を重ねてはいないんだよ。だってこの僕も、本物じゃないんだから」
「そ、そう、なんだ……。アンタ――アナタは。同じ境遇の仲間で、先に知って自分が苦しんだから……っ。ずっと隠して、優しくしてくれてたんだね……」
「ううん、それは違うよ。僕は春香が本当に好きだから、ああしていたんだよ」

 今までと同じように。優しく、温かく、微笑んだ。
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