7 / 27
第4話 現婚約者と前婚約者 エメリー視点(2)
「レステラ侯爵家のファスティーヌ! あの女は我がオーレン家の商会を狙っているのです!! すでに現当主夫婦は何らかの形で操られてしまっておりまして!! 大変な事態となってしまっているのでございます!!」
できる限り多く、ベルナール様の正義感を刺激できるように。先ほどよりもレステラ様の悪事を強調して、オーレン邸での出来事を説明しました。
「このままでは我々――我々はともかくっ、善良な領民にまで何かしらの影響が出かねませんっ! その可能性がっ、危険性が非常に高くっ! ですのでどうかっ!! 領民のためにっ!! お力をお貸しくださいっっ!!」
「……領民。貴様はそこを、利用するのか」
「利用っ!? とんでもございませんっ!! この男は昔から、領民第一でございます!!」
そんな話は、聞いたことがありません。むしろファスティーヌ様と関係を持って、気が大きくなったのでしょう。何度か、悪い噂を耳にすることもありました。
「こちらはっ、心よりの言葉でございます……!! 領民に何かあったら、死んでも死に切れませんので……!! どうか、領民をお守りくださいませ……!!」
「………………。エメリー様。この件の対応を任せていただいても、よろしいでしょうか?」
「はい。お願い致します」
わざわざ体全体を向けて確認をしてくださり、私は姿勢を正しつつ頷きを返します。そうすると「ありがとうございます」と仰ってくださって、表情と態度が再び変化。それらが冷たく厳しいものとなって、オーレン様へと向き直りました。
「…………いいだろう。領民に関しては、僕が守ってやろう」
「本当でございますかっ!? あっ、ありがとうございますっ!! こっ、これからどうしましょうっ!? わたくしはどうすればよろしいでしょうかっ!?」
「さあね。貴様のことは知らない。好きにすればいい」
「…………。え……?」
大喜びをしていたオーレン様は、石像のように固まりました。
「僕は、領民を守る――領民である方々に、何かしらの悪い影響が出ないように動くだけだ。貴様たち一家のことは知らない。どうしようもない下衆、愚者3人がどうなろうが興味はないさ」
オーレン様の父ヒューゴ様と母グレース様。お二人から正式な謝罪は一度もなく、嬉々として息子を応援していた。その事実をベルナール様も御存じですので、そう言い捨てました。
「邸外に被害が出ないように、僕は動くだけだ。邸内の事は知らない。家の平穏を取り戻したければ、自力で何とかするんだな」
「そ、そんな……。ご、ご慈悲を――」
「領民が第一、なのだろう? それ以上何を望むんだ?」
ベルナール様の視線と声音が、鋭く低くなります。
この方は人格者故に、民の利用を酷く嫌います。オーレン様は知らず知らず、最悪の選択肢を選んでしまっていたのです。
「そ、それは……。その……っ。いっ、色々事情がございまして!! どうにかわたくしをたすけて――」
「テリエス卿。この男はチャンスを欲しがっておりましたので、曰く悪女と戦うチャンスを与えましょう」
「そうですな。……お前達、この件は不問とする。門外にある馬車までお送りしてやってくれ」
ですのでオーレン様は解放されることとなり、警備の方々によってオーレン家の馬車に乗せられました。
「全ては身勝手な婚約解消から始まったこと、貴様が蒔いた種だ。これまでの行いを後悔しながら、必死になってもがくといい」
「おっ、お待ちくださいっ!! たっ、助けてっ!! 助けてくださ――」
速やかなる退去の指示が出ていますので、馬車は出発。猛スピードで車は遠ざかってゆき、すぐに蒼白のお顔と大声は聞こえなくなってしまったのでした――。
できる限り多く、ベルナール様の正義感を刺激できるように。先ほどよりもレステラ様の悪事を強調して、オーレン邸での出来事を説明しました。
「このままでは我々――我々はともかくっ、善良な領民にまで何かしらの影響が出かねませんっ! その可能性がっ、危険性が非常に高くっ! ですのでどうかっ!! 領民のためにっ!! お力をお貸しくださいっっ!!」
「……領民。貴様はそこを、利用するのか」
「利用っ!? とんでもございませんっ!! この男は昔から、領民第一でございます!!」
そんな話は、聞いたことがありません。むしろファスティーヌ様と関係を持って、気が大きくなったのでしょう。何度か、悪い噂を耳にすることもありました。
「こちらはっ、心よりの言葉でございます……!! 領民に何かあったら、死んでも死に切れませんので……!! どうか、領民をお守りくださいませ……!!」
「………………。エメリー様。この件の対応を任せていただいても、よろしいでしょうか?」
「はい。お願い致します」
わざわざ体全体を向けて確認をしてくださり、私は姿勢を正しつつ頷きを返します。そうすると「ありがとうございます」と仰ってくださって、表情と態度が再び変化。それらが冷たく厳しいものとなって、オーレン様へと向き直りました。
「…………いいだろう。領民に関しては、僕が守ってやろう」
「本当でございますかっ!? あっ、ありがとうございますっ!! こっ、これからどうしましょうっ!? わたくしはどうすればよろしいでしょうかっ!?」
「さあね。貴様のことは知らない。好きにすればいい」
「…………。え……?」
大喜びをしていたオーレン様は、石像のように固まりました。
「僕は、領民を守る――領民である方々に、何かしらの悪い影響が出ないように動くだけだ。貴様たち一家のことは知らない。どうしようもない下衆、愚者3人がどうなろうが興味はないさ」
オーレン様の父ヒューゴ様と母グレース様。お二人から正式な謝罪は一度もなく、嬉々として息子を応援していた。その事実をベルナール様も御存じですので、そう言い捨てました。
「邸外に被害が出ないように、僕は動くだけだ。邸内の事は知らない。家の平穏を取り戻したければ、自力で何とかするんだな」
「そ、そんな……。ご、ご慈悲を――」
「領民が第一、なのだろう? それ以上何を望むんだ?」
ベルナール様の視線と声音が、鋭く低くなります。
この方は人格者故に、民の利用を酷く嫌います。オーレン様は知らず知らず、最悪の選択肢を選んでしまっていたのです。
「そ、それは……。その……っ。いっ、色々事情がございまして!! どうにかわたくしをたすけて――」
「テリエス卿。この男はチャンスを欲しがっておりましたので、曰く悪女と戦うチャンスを与えましょう」
「そうですな。……お前達、この件は不問とする。門外にある馬車までお送りしてやってくれ」
ですのでオーレン様は解放されることとなり、警備の方々によってオーレン家の馬車に乗せられました。
「全ては身勝手な婚約解消から始まったこと、貴様が蒔いた種だ。これまでの行いを後悔しながら、必死になってもがくといい」
「おっ、お待ちくださいっ!! たっ、助けてっ!! 助けてくださ――」
速やかなる退去の指示が出ていますので、馬車は出発。猛スピードで車は遠ざかってゆき、すぐに蒼白のお顔と大声は聞こえなくなってしまったのでした――。
あなたにおすすめの小説
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!
百谷シカ
恋愛
私の婚約者クライトン伯爵エグバート卿は善良で優しい人。
末っ子で甘えん坊の私には、うってつけの年上の彼。
だけど、あの人いつもいつもいつもいつも……なんかもうエンドレスに妹たちの世話をやいている。
そしてついに、言われたのだ。
「妹の結婚が先だ。それが嫌なら君との婚約は破棄させてもらう」
そして破談になった私に、メイスフィールド伯爵から救いの手が差し伸べられた。
次々と舞い込んでくる求婚話。
そんな中、妹の結婚が片付いたと言ってエグバート卿が復縁をもちかけてきた。
「嘘でしょ? 本気?」
私は、愛のない結婚なんてしないわよ?
======================================
☆読者様の御親切に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
ご心配頂きました件について『お礼とご報告』を近況ボードにてお伝えさせて頂きます。
引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです♡ (百谷シカ・拝)
諦めていた自由を手に入れた令嬢
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。
これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。
実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。
自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた──
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は──
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。
そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。
母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。
アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。
だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。