お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

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第5話 どうするどうするどうする……⁉ ガエル視点(1)

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「くそがぁ!! エメリーっ、ベルナール!! こんなにも人が頼んでいるのに……!! ふざけたヤツらだ!! アイツらはクズだ!!」

 馬車が出発してから、およそ1分後。俺は車内の壁を殴り、大声を上げていた。
 別に、体を傷付けたわけじゃないだろう!? 別れ話なんてよくあるだろう!? 犯罪行為でもなかっただろう!? なのにアレだ!!
 ふざけてやがる!!

「ちょっとした判断ミスをここまで責めるなんて……!! アイツらは失敗をしないのかっ!? するに決まってる!!」

 だったらそういったことも考慮して対応するべきなんだ!! そんなものさえもできないなんて、あの男と女は人の姿をしたゴミ!! 汚物だ!!

「もういい!! 俺は人、だからな!! 汚物なんぞの手は借りん!! この問題は自分自身で解決してやる!!」

 今一度、壁を思い切り殴る。そうして苛立ちを無理やり発散させ、今後について考えることにした。

「ファスティーヌ……。あの女は、どうやって父上と母上を操っているんだ……?」

 改めて、当時の状況を振り返る。
 20分の密会のあと、態度が激変した。2人は他者に譲るような人間ではないにもかかわらず、結婚すれば即一任すると言い出した。

「…………偽装、粉飾、不正……? ファスティーヌは何らかの形で商会の弱みを握り、それを使って脅した?」

 いいや、それはない。
 ソレらは経営陣にしか分かり得ない秘密。いくらファスティーヌが上級貴族であっても、商会に深く食い込まない限り把握できないものだ。

「となれば…………。やはり可能性は、洗脳か……」

 どんな方法を使ったのかは、分からない。そういったものは物語や演劇でのみ存在する、創作の一種だと思っていたが……。
 それしかあり得ないんだ。父上と母上は、操られてしまっているのだろう。

「……洗脳や乗っ取りは、犯罪行為だ……。犯罪行為ということは……っ」

 治安機関が取り締まるべき問題だ!

「そうだっ、そうじゃないか! 俺は何をやっていたんだっ! 最初からソコを頼っておけばよかったんじゃないかっ‼」

 動揺によって、正常な思考ができなくなってしまっていたらしい。悪事を働いているのなら、ソレを懲らしめる存在に助けを求められばいいだけだ!!

御者ダンゲル!! 最も近くの治安局を目指せ!!」

 見落としてしまっていた俺は大きく息を吸い込み、高らかに指示を出したのだった。


 はははっ! はははははっ! エメリー、ベルナールっ、残念だったな!! お前ら如きの手を借りなくても、問題は解決するぞ!!

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