お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

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第12話 終わりの始まり ファスティーヌ視点(1)

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「ファスティーヌ」
「ええ、お父様。ふふふ」
「「かんぱい!」」

 レステラ邸内にある、広々とした食堂。そこでわたくしとお父様は、満面の笑みを浮かべてグラスを合わせていた。
 わたくし達が上機嫌な理由、それは――。今日は初めて金の生る木から金色の実を収穫した、記念すべき日だから。

『『ファスティーヌ様。我々の商会をよろしくお願い致します』』
『会頭に相応しい人間は、俺ではなく貴方様です。かじ取りはお任せ致します』

 ガエルの洗脳を済ませた一週間後に、わたくしは彼と結婚した。そしてその1か月半後に会頭を引き継ぎ、トップに就任。
 本当は即座に動き出したかったけれど、念のは念をでステイ。暫く大人しくしておいて、今日、まずはレステラ家に資金の一部を流しましたの。

「ファスティーヌのおかげで、一気に潤った。これからはファスティーヌ様、と呼ばないといけないね」
「いやですわ、お父様。お父様があの液体を調達してくださったからこそ、ですわよ」
「いいや。創作物は完全なる創作ではない。その可能性に目をつけたから、ああして動くことができたんだ。やはり一番の功労者は、ファスティーヌだよ」
「それでもお父様が探し回ってくださらなければ、そもそも手に入っていないんですもの。活躍度はお父様が7割、わたくしはせいぜい3割ですわ」
「何を言うんだ、逆だよ。俺が3割、ファスティーヌが7割さ」

 そうしてわたくし達は相手を褒め合い、揃ってぷっと噴き出す。
 この会話は、特に大したものではありませんわ。なのに、非常に楽しい。笑いが止まりませんわっ。

「こういったやり取りは、いつまでもできてしまえそうだ。とはいえ、いつまでもこうしていたら料理が冷めてしまう」
「そうですわね、お父様」

 目の前には、最高級の素材を使ったメニューが並んでいる。せっかく用意してしまったものが、台無しになってしまいますわね。

「この続きは、食後に行うとしよう。……では、ファスティーヌ。改めて」
「ええ、お父様。素晴らしいこの日にかんぱ――なっ!? なんですの貴方達は!?」

 素晴らしいこの日に乾杯! 改めてグラスを合わせようとしていたら、扉が乱暴に開いて屈強な男が5人も入ってきた……!?
 な……。なんなの……!?

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