お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

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第12話 終わりの始まり ファスティーヌ視点(2)

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「何者だ貴様らは!! ここがどこだか分かっている――」
「重々承知しておりますぞ、レストラ家当主殿。わたしはこの地域を担当する治安局の局長、フェリシテ・グレス。この5人はわたしの部下、治安局員でございます」

 お父様が立ち上がりつつ怒声を放つと、最後に登場した6人目の男が、淡々と説明を行った。
 この者達は、治安局員……。しかも先頭の男は、そのトップ……。

「ならば問おう。ここは侯爵家邸であり、俺は邸内はおろか敷地への立ち入りさえも許可していない。詰まるところ貴様らが行っていることは、違法だ。まさか、それが分からないのではあるまいな?」
「我々は治安を司る存在故に、法はしかと理解しておりますよ。ですので、法を犯す愚行は致しません」
「……何だと。ではこれはっ、合法だと言うのか!?」
「ええ、そうなりますね。我々は正当な理由で、この場を訪れております」

 局長グレスが、懐から一枚の紙を取り出した。
 そ、それは……。所謂、捜査令状……。

「当主殿、ファスティーヌ殿。実を言いますと治安局にとある垂れ込みがあり、貴方がたをマークしておりました」
「「な……!!」」
「そして――。そうしていたことにより本日、貴方がたの周囲で怪しい金の流れを発見したのですよ」

 今日。わたくし達の周囲で。
 それは……。商会の、お金…………。

「この金の移動は、自然なようで自然ではありません。そのため追及する必要性があり、以上の理由で本格的な調査に乗り出すこととなりました。……当主殿。これより法に則り、邸内を調べさせていただきます」
「まっ、待て!! それは何かの間違いだ!! 後ろめたいものなど一切ない!! やめろっ!! 従わぬのであればしかるべき処置をとるぞ!!」
「現在の貴方には、そのように動く権利はございませんよ。妨害などを行った場合は、複数の罪が適用されます故。ご注意ください」

 こんなことを言われてしまったら、何もできるはずがない……。そうして外に居た治安局員も合流して、大人数による所謂家宅捜索が始まって……。
 邸内を……。隅から隅まで、調べられているんですもの……。

「レステラ当主殿。『後ろめたいものなど一切ない』と仰られましたが、ありましたな」

 やがて証拠が見つかってしまい……。おまけに……っ。おまけに……っ!

「そして、こういったものも発見されました。わたしには思い当たる節があるのですが、念のために伺いましょうか。この液体は、なんなのですかな?」

 いつか必要な時が、来るかもしれない。そう思って、保管していた……。
 あの小瓶まで、見つけられてしまった……。

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