お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

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第14話 結婚式で思うこと 父ロンドル 母ミラス 視点

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 ベルナール様と、結婚を前提にして交際をすることになった。そんな話を始めて聞いた時、わたし達は不安になった。
 ルクナ侯爵家のベルナール様。身分の差などで直接的な交流はなかったものの、その評判は存じ上げていた。そしてこの屋敷にいらっしゃるようになったことで、直接性質を理解することができた。

 真摯。正義。

 評判通り――それ以上の人格者なのだと、すでに理解をしていた。
 けれど……。

『愛しき彼女を、エメリーを生涯幸せにすると誓います』

 ベルナール様ほどではないとはいえ、好青年と賞されていたガエル様――ガエルは、あのようになってしまった。
 平然と娘を捨て、あの子は心ない言葉と態度裏切りによって傷ついてしまった。

 ――我が子の幸せを願わない親なんていない――。

 だから、不安だった。
 幸せそうにしているエメリーを見ていると、喜びよりも不安がやってきていた。不安で仕方がなかった。

 でも。
 ベルナール様が交際の報告にいらっしゃられた際、その後半で、そんなモヤモヤは全て消えてしまった。

『テルエス卿、ミラス様。僕は第2のガエル・オーレンにはなりませんよ』

『エメリー様はこれまで出会った女性の誰よりも、美しい心をお持ちでした。……勿論彼女は、美しい方です。けれどわたしはエメリー様の、心、性質に惹かれておりますので。エメリー様がエメリー様である限り、つまり一生涯、愛し続けますよ』

『……と説明をさせていただいても、やはり不安になってしまうと思います。ですのでテルエス卿、ミラス様。ここに、誓約書を用意いたしました。万一わたしからこの婚約を解消した場合は、貴方様がたが望むお好きな罰を受けるとお約束します』

 ベルナール様はわたし達をも案じてくださっていて、わざわざ正式な書類を用意してくださっていた。圧倒的に格下の者に行うようなことではない行動を、当たり前のように行ってくださっていた。

 だから――

『いえ、そちらは結構でございます。……ベルナール様、ありがとうございます。娘をよろしくお願い致します』
『素敵な方と出逢うことができて、本当によかった。ベルナール様。娘を、よろしくお願い致します』

 わたし達は誓約書へのサインを断り、揃って頭を下げた。喜びの涙を溜めながら、感謝の気持ちを告げたのだった。
 だから――

「「おめでとう。エメリー」」

 ――純白のウェディングドレスを纏い、誓いのキスを交わした娘に――エメリー・ルクナとなった娘に。わたし達は、心からの祝福の言葉を贈ったのだった。

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