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第3話 翌日 アルマ視点(2)
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「ギャスパー・ルルダールの愚行3つ。『ジェルズ・イゾナスへの理不尽な攻撃』、『イザック・サフォザットへの理不尽な激昂』および『地位の差を利用した攻撃』、は紛れもない事実だと認定されました」
お屋敷への帰路を静かに進む馬車の中。わたしの対面では仮面をつけた男性が、一切感情の籠っていない声調で淡々と口を動かしました。
「よって11条12項が適応され、実行可能となりました」
ギャスパー・ルルダール様への対応に必要となっていた、ジェルズ・イゾナス様の証言。そちらが要る理由は、ギャスパー・ルルダール様の愚行が実際にあるかどうかを確かめる必要があるため。
要するに、隠れて聞いていた第三者であるこの方が『紛れもない事実』だと判断する必要があったのです。なので――
『暴力を振られそうになっているところにイザックが勝手に飛び込んできただけで、自分は一回も助けてくれとは言っていない。頼んでいないのだから自分は関係ない。確かに仰る通りかもしれません。ですがその結果貴方様へ向かっていたヘイトが逸れ、ビンゴ大会の賞品に関する件で貴方様がルルダール様から怒りを買うことはなくなったのですよ? そちらを理解されていらっしゃいますか?』
『当然、理解しています。その上での回答です』
『……なぜ、そんな風に言えるのですか? 理由をお教えください」
『お教えくださいって……。もう忘れてしまったのですか? 昨日ちゃんと説明したはずですよ?』
――こういったやり取りを意図的に行い、違う形で証言をさせたのです。
「お手数をお掛けいたしました。御足労感謝いたします」
「とんでもございません。我々にとっても看過できぬことでありますし――我が主は貴方様方に大きな感謝の念を抱いております故、苦労の文字は存在致しません」
「そう仰っていただけると、気が楽になります。……では」
「能ある鷹が、その鋭利な爪を出す時が訪れました」
ここで初めて、声調が変わる。淡々とした中に極僅か興奮の色が含まれるようになり、仮面の奥で少しばかり口元が緩んだのが分かりました。
「とはいえ残念ながら、その爪はギャスパー・ルルダールが実際に手を出した時にのみ剥き出しとなります。不穏な動きがありましたらご一報を。即座に参ります」
「はい。その際は、ルートBでご連絡を差し上げます」
「B、しかと記憶致しました。。…………では――。本日この場で行う会話は、以上で終了となります。失礼いたします」
そう言い終えた時にはもう彼の姿は車内にはなく、彼がいた場所には真っ赤な薔薇が――この国の国花が置かれていました。
「……お嬢様」
「ええ、必要な手順はすべて踏み終えた。あとは待つだけね」
さっき言っていたように、実際に発生して初めて対応ができるようになります。ですからこれからすることは、『待つ』。
把握したら即連絡できる態勢を整えつつ、ルルダール様が動き出すのを待って――
お屋敷への帰路を静かに進む馬車の中。わたしの対面では仮面をつけた男性が、一切感情の籠っていない声調で淡々と口を動かしました。
「よって11条12項が適応され、実行可能となりました」
ギャスパー・ルルダール様への対応に必要となっていた、ジェルズ・イゾナス様の証言。そちらが要る理由は、ギャスパー・ルルダール様の愚行が実際にあるかどうかを確かめる必要があるため。
要するに、隠れて聞いていた第三者であるこの方が『紛れもない事実』だと判断する必要があったのです。なので――
『暴力を振られそうになっているところにイザックが勝手に飛び込んできただけで、自分は一回も助けてくれとは言っていない。頼んでいないのだから自分は関係ない。確かに仰る通りかもしれません。ですがその結果貴方様へ向かっていたヘイトが逸れ、ビンゴ大会の賞品に関する件で貴方様がルルダール様から怒りを買うことはなくなったのですよ? そちらを理解されていらっしゃいますか?』
『当然、理解しています。その上での回答です』
『……なぜ、そんな風に言えるのですか? 理由をお教えください」
『お教えくださいって……。もう忘れてしまったのですか? 昨日ちゃんと説明したはずですよ?』
――こういったやり取りを意図的に行い、違う形で証言をさせたのです。
「お手数をお掛けいたしました。御足労感謝いたします」
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「そう仰っていただけると、気が楽になります。……では」
「能ある鷹が、その鋭利な爪を出す時が訪れました」
ここで初めて、声調が変わる。淡々とした中に極僅か興奮の色が含まれるようになり、仮面の奥で少しばかり口元が緩んだのが分かりました。
「とはいえ残念ながら、その爪はギャスパー・ルルダールが実際に手を出した時にのみ剥き出しとなります。不穏な動きがありましたらご一報を。即座に参ります」
「はい。その際は、ルートBでご連絡を差し上げます」
「B、しかと記憶致しました。。…………では――。本日この場で行う会話は、以上で終了となります。失礼いたします」
そう言い終えた時にはもう彼の姿は車内にはなく、彼がいた場所には真っ赤な薔薇が――この国の国花が置かれていました。
「……お嬢様」
「ええ、必要な手順はすべて踏み終えた。あとは待つだけね」
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把握したら即連絡できる態勢を整えつつ、ルルダール様が動き出すのを待って――
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