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第13話 新たに動き出す闇 俯瞰視点
しおりを挟む「ちぃっ。あの王女エーナもあの国王ルシアンも、ここまで使えないとはな」
建国パーティー終了後。王城内にある一室では、忌々しげな舌打ちが響いていました。
その発生源は、アドリク・オルジー。この執務室の主である、この国の宰相です。
「あれほど息巻いていた雌は、直前になって怖気づく。あんなにも地位に執着していた雄は、娘が可愛くなる。あまりの不甲斐なさに、おもわず殺してしまいそうだった」
マティアスがエーナに言わせた、自然な言い分。そして、部屋にあった吐瀉物。
理路整然としたものとマティアスが媚薬を出すために実際に吐いた物が真実味を持たせ、アドリクは手の平に爪を食い込ませました。
「…………こうなった以上、あの雄と雌は役にたたない。オレが直接、仕掛けるとしよう」
瞑目によって精神を落ち着かせた彼は、瞼を上げると指を鳴らします。そうするとどこからともなく幾つものどす黒い球体がやってきて、アドリクの手の平の上で一つに集合しました。
「………………ふむ、上出来だな。各墓場での収穫は、予想以上だ」
イリスが口にしていた、墓場の閉鎖。あれの立案者は、このアドリク。国王ルシアンを巧みに操り、自分に都合の良い状況を作り出していたのです。
「…………これならば問題はないだろうが、油断は失敗のもと。シミュレーションをしておくか」
脳内で、作戦をイメージ。客観的に脳内でシュミレートを100回以上繰り返し、それを済ませると最後指をパチン。どす黒い球体達は、すぅっと姿を消しました。
「やはり、問題は何もない。この策は確実に、成功となる。相手が、さしもの英雄であってもな」
確信を持ち、頷くアドリク。そうした彼は、デスクの上に置いてあったカクテルグラスを手に取り――。窓の外で輝くストロベリームーンに向けて、こう呟いたのでした。
「あと少しだけ、お待ちくださいませ。復活の時は、まもなくでございます。……偉大なる魔王様」
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