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第1話 監視者の来訪と、変化のはじまり (2)

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「これは『映鏡(えいきょう)』と呼ばれるもので、こんな風に――。受信用の映鏡を創れば、送信用の映鏡が捉えた映像と声を見て聞けるんスよ」

 もう一度指を鳴らすと新たな鏡が私の頭上に現れ、その鏡には鏡を見上げる私が映っていました。
 これは、驚きです。このようなことをできる人が、いたのですね。

「映鏡は使用者が送受信用どちらかの近くにいれば永久的に使えるし、その気になれば透明にできるっス。なので実は、治安の維持や他国の様子見なんかに活躍してますっスよ。ちなみにこういう力を持つ者は、『鏡映師(きょうえいし)』と呼ばれていますっスね」
「鏡映師……。初めて耳にしました」
「ウチの一族にのみ宿る力なんで数が少ないですし、性質上秘匿されてるんスよ。知ってるのは王族と、王宮関係者だけっスね」

 情報は、想像以上に洩れやすいものです。他国用にも使われているのなら、それは至当ですね。

「こいつを使って祈る姿を王宮に届けるんで、ここにいるのは俺だけなんスよ。ってついでに監視の補足もしておいて、話を戻すっス」
「はい。よろしくお願いします」
「鏡映師は聖女の次に希少な存在で、その力を上手く使えば色々なことができるっス。だから昔から王族は、あれこれ理由付けをして鏡映師を私的に利用しようとしてたんスよ」

 自分達に敵意を持つ者の監視等々、便利な使い方は沢山あります。ああいう人達なら、正しくない使い方をしたがりますね。

「なので代々ウチは『人を見る目』を鍛えていて、瞳を見れば大抵は分かるんスよ。殿下達は元々濁っていたし、ミウヴァ様は強い強い責任感のある目をしていた。無茶苦茶を言う人から日々真剣に頑張ってくれてる人の監視を頼まれたんで、俺は端から疑ってないんスよ」
「……そう、だったのですね。とても失礼なのですが、見掛けのみで判断していました」
「能ある鷹は爪を隠す、だな。あれは全てを演じている俺で、こっちが本物の俺なんだよ」

 ラズフ様はクールに口を緩め、全身からは『どうどうっ? こういうキャラ、カッコイイっスよねっ?』と言いたげなオーラが大量に放出されています。

 なので、嘘ですね。観察眼がとても鋭い点は事実なのですが、この人はこんな性格に憧れているイメージ通りの方です。

「くくく、驚いただろ? いい勉強になったな、聖女様」
「そうですね。ですのでそのお礼も兼ねまして、私も一つ貴方にお明かししましょう」

 こちらだけ教わるのは、不公平です。この人なら問題なさそうですし、アレをお伝えしましょう。





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