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第1話 監視者の来訪と、変化のはじまり (3)
しおりを挟むクール顔が継続中ですが、そろそろ祈りの時となります。時間があまりないので、お話を始めさせてもらいましょう。
「ラズフ様。殿下はあのような疑惑を持たれ、高飛車に決めつけを行い、挙句の果てには私の殺害を仄めかされました。そのため性格の矯正を目的として、本日よりある計画を実行します」
「はあっ!? 殺害だって!? アイツ、そんなことまで言ったんスか!?」
「……ラズフ様。素に戻っていますよ?」
「それはどうでもいいんスよっ! マジで言ったんスか!?」
「はい。『我々とは異なり、代わりある存在だ』、『改善が見られないようなら、次の聖女が誕生することになるかもしれない。肝に銘じておくのだぞ?』。そう、しっかりと臭わされましたよ」
残念なことに、これは脅しではありません。殿下達は自分が望む結果にならなければ、間違いなく実行するでしょう。
しかも、躊躇なく。罪悪感もなく。
「ですので今日から殿下達5人を庇護から外し、本当に手を抜いたらどうなるのかを体験していただきます。その弊害は翌日からジワジワと表れ始め、6日後には大騒ぎになると思いますよ」
「……………………」
「こういう形での矯正は、聖女失格かもしれませんが。私は今回――」
「いややいっ、そういう問題じゃないっスよ! ミウヴァ様っ、そこは理不尽に対してキレましょうっスっ! 矯正云々じゃなくって、自分に対することで怒るべきっスよ!」
?
黙っていた彼は突如拳を振り上げ、その大声は続きます。
「代わり!? 失礼極まりないっス! てかっスよっ、国王達より弟である大公閣下一家の方が優秀! 王達の代わりこそ居るっス! むしろ、今の5人は邪魔者っス!」
「……そ、そうかもしれませんね」
「そんでもって、聖女は『物』じゃないっス!! 国みんなの恩人に吐く言葉じゃないっス!!」
「…………そ、そうかもしれませんね」
「『かも』ではなく『そう』で、ヤツらが今まで以上に嫌いになりましたっスっ! 許せないっス! だからっ!」
「だ、だから……?」
「俺も、色々と協力させてもらいますっス! ただしそれは、矯正が目的じゃないっスっ! ミウヴァ様へしたことへのお返しを、ガツンとしてやりますっスよ!!」
ラズフ様は何度も何度も頷き、私の右手を両手でガシッとに握り締めてくださいます。
……この方は思っていた以上に他者を思い遣ってくださる方で、とてつもない勢いで宣言してくださいました。神殿関係者のように、『仰せのままに』などが返ってくると思っていた私は……。おもわず、目が点になってしまいました。
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