最愛の人と弟だけが味方でした

柚木ゆず

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第7話 掌を返される妹 サーシャ視点(3)

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「アリシアを味方につけるには、我々が心から反省したと思わせることが不可欠――サーシャを厳しく叱り、それによってサーシャは改心したという要素が必要なんだ。それができないのであれば、『悪びれていないから、修道院で修業をさせて見つめ直させる』という風にしなければならないのだよ」
「もちろんあの子が結婚して、落ち着いたら連れ戻しに行くわ。貴女を捨てるわけではないから、安心して頂戴」

 あたしが口をパクパクさせていると、お父様とお母様は平然とそんなことを言い出した。
 か、金のために……。修道院って……。

「不自然さが出ないようにしたいから、そうだな……。1年後には、迎えにいけると思う」
「修道院は、国の中で最も環境が良くて楽なところを選ぶわ。だから、大丈夫よ――」
「何が大丈夫なの!? 修道院に入ったら普段できてることの殆どが出来なくなっちゃうのよ!? そんなところで1年だなんて、全然大丈夫じゃないわよ!!」

 そんなの死んだも同然! 一週間だって無理よ!!

「お前は唯一の娘・・・・と思っていて、そうなると我々だって辛いんだよ。だがサーシャは、できないのだろう?」
「それしか、方法がないのよ。……わたくし達が考えている『勝負』が成功したら、商会の立ち位置もぐんとよくなる。今以上に生活が潤って――そうだわっ! 貴女が腹を立てていた例の女に偉そうにできるようになるのよ!」

 !!
 あの女に、偉そうに、できる。

「サーシャ。無能なやつにペコペコするのは、つらかっただろう?」
「う、うん! つらかった!!」

 偶々生まれた場所がよかっただけのアレの、ご機嫌をとらないといけない。
 屈辱、地獄だった。

「そうよね? 逆転するためには、少しの間我慢しなければならないの。サーシャ、自分のためでもあるのよ。耐えて頂戴」
「万が一勝負が失敗したとしても、商会持ち同士が結婚するのだ。おのずと立ち位置も上昇し、これまでのように下手にでなくてもよくなる。どうなろうとも、明るくなるみらいしかないのだよ!」
「……………………………………………………分かった。だったら、改心したフリをするわ」

 1年間も修道院で暮らしていたら、おかしくなっちゃうもの。苦肉の策、消去法で、しぶしぶそっちを選んだ。

「……サーシャ、よく選んでくれた……っ。父さん達は嬉しいぞ……!」
「英断よ、サーシャ。一週間、お互いに頑張りましょうね……っ!」
「うん、お父様お母様。幸せのために、頑張るわ」

 その先には、今まで通りの――ううんっ。今まで以上の毎日が待ってるんだもん。あたしはプライドを一時的に捨て、幸せを掴むための戦いを始めたのでした。


 うまくいったら、ずっと欲しかった200万するリングも買ってくれるって約束してくれたしね。一週間の辛抱よ、あたし……!




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