最愛の人と弟だけが味方でした

柚木ゆず

文字の大きさ
21 / 27

第10話 3人はようやく、理解する サーシャ視点(5)

しおりを挟む
「……ユリス義兄様、アリシア姉様。このままだと、ダニエルも苦労をする羽目になるわよ。それでもいいの?」

 閃いたあたしは下げていた頭を上げ、立ち上がる。
 もう、ペコペコする必要なんてない。ここからは対等よ。

「サーシャ、君は何を考えてるんだ? それは、どういうことなんだい?」
「義兄様の作戦によって、あたし達一家は追い出されてしまう。もしそれが実現してしまったら、隣にいるダニエルも路頭に迷うのよ? 散々我慢をして助けてくれた大切な人も大変な目に遭うけど、それでもいいのかしら?」

 親族共は、自分達が実権を握りたがっている。内心、ずっとあたし達を妬んでいた。
 前商会頭の子どものひとりを、残しておくはずがない。

「っっ! その通りだっ! よくやったサーシャ!!」
「盲点だったわ! さすがわたくし達の子どもよ!!」
「ふふっ、ありがとう父様母様。…………ね、ユリス義兄様。それでもいいの? あたし達に支援をして、追い出しを回避した方がいいと思うわよ?」

 ダニエルは要だから、特別に邪険にはしない。ちゃんとこれまで通りの環境で生活させてあげる・・・

「勇気ある者が苦しむのは、嫌でしょ? ゆ・り・す・義兄様。あたし達に、頂戴?」

 ニヤリと笑って、手を伸ばす。そうすれば、義兄様は大きな息を吐いて――


「断る。貴方達に渡すものなどありませんよ」


 ――え……? 即答した、ですって……!?

「な、んで……。ダニエルが苦労してもいいのっ!? 自分と自分の大切な人だけが幸せになればいいっていうのっ!? 捨てるつもりなのっ!?」

 例外なんてありえないのよ!? このままだと巻き込まれちゃうのよ!?
 それでもっ、いいっていうの!?

「いいえ。我慢を重ねた彼が苦労する未来など、あってはならない。そして、彼もまた俺にとって大切な人だ。捨てるつもりなんて、微塵もありませんよ」
「じゃあっ、じゃあ! どうして渡さないのっ!? ワケが分からないっ!! どうしてなのよっ!?」
「どうして、なのか。その理由は、このまま追い出されても彼には一切悪い影響はないからですよ」

 ……………は?
 おもわずお父様お母様と一緒に、間抜けに口を開けてしまった。
 一切影響はないって……。この男、なにを言っているの…………?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多
恋愛
 クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。  両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。  おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。  でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!  そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い

雲乃琳雨
恋愛
 バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。  ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?  元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

処理中です...