婚約者が、他の女性と内緒で出掛けているのを見つけました。でも、それには理由があったようです

柚木ゆず

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第1話 追跡開始と、不思議な出来事(2)

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「2人で動き始めて、およそ1時間半が経過した。そろそろ行ってもいい頃だな?」
「ええ、お願いいたしますわ。ユリウス様」

 不思議に感じて耳を研ぎ澄ませていると、ユリウスとマーガレットは向かい合った。
 ユリウスはスケッチブックを構えて、マーガレットは品よくちょこんと膝を曲げている。あの2人は、これから何を行うのかしら……?

(ラーゼン様は絵が趣味で、非常にお上手でしたよね? あの男は浮気相手のデート姿を目に焼き付けておいて、絵にするつもりなのでしょうか……?)
(ユリウスが手にしているのは、万年筆に見えるわ。それはないみたいね)

 その筆記用具は、文字を書くためのもの。言わずもがな無理をすれば絵を描くことは可能だけれど、そこまでする意味はないわよね。

(いえ、お嬢様……っ。あの万年筆は、あの女から初めてもらったプレゼントっ。『初めてで初めてを描きたいんだ』とか気持ち悪いコトを言っていて、今日はそのためのデートだったのかもしれませんよ……っ! あの男、タルトを食べるあの女の姿をじっと見てましたし……!!)

 確かに途中で、そういう場面はあった。あれは見惚れていると同時に、その時のために目に焼き付けていたということも有り得るかもしれない。

(でも、やっぱりその可能性はないわね。それならなおさら万年筆は不自然だし、ジュリア。私ではなく、ユリウスを見て)
(? あの男が、どうかしました――あっ。書き終えちゃってますね)

 スケッチブックにペンを走らせ始めて、僅か十数秒後。万年筆の先端は紙面から離れ、アドリヤンさんの手に戻った。
 絵は、こんなにも短時間では完成できない。どうやら、何かの文字を記したみたいね。

(ペンを従者に返して………………あの女に、書いたものを見せようとしてますっ! だけど、くぅ……っ。ここからだと、見えませんね……っ)
(見えないのなら、見える位置に行けばいいわ。急ぎましょ、ジュリア)

 私達は2人に対して垂直となる位置にいるため、内容を伺うことができない。そこで速やかにマーガレットの背中側へと周り、立ち話をするフリをしてその時を待つ。

「出来上がったのですね。ユリウス様、お願いいたします」
「ああ。これだ、マーガレット」

 期待に胸を膨らませた、そんな声。ユリウスはそれに静かに頷いて、伏せていたスケッチブックを彼女へと向けた。
 そうすれば私達にも伺える状態になって、

((え……?))

 おもわず、私とジュリアは小声でユニゾンしてしまった。
 どうして私達の台詞が一致して、同様に仲良くキョトンとしているのか。その理由は――


《50C》


 ――スケッチブックに書かれていたものは、理解することができない文字だったのだから。

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