婚約者が、他の女性と内緒で出掛けているのを見つけました。でも、それには理由があったようです

柚木ゆず

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第12話 なぜですの⁉(その3) マーガレット視点

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「0!? 0クララって!! 1すらないって!! どういうことですの!?」

 一瞬気が遠くなっていたわたくしは、意識が戻るや彼の瞳を見つめた。
 声のボリュームなんて気にしている余裕なんてないっ。なんなんですの!?

「見ての通りだ。俺にとって君は、0。クララと比較することさえで出来なくなった、と言っている」
「なっ!? わたくしの、胸は……。マイナス25……。意味は、なかったんですの……!?」
「そうだな。キスなど以外には従う取り決めをしていた為、じっとしていたが――。そんな約束がなければ即座に振り払う程に、不快だった」

 腕に押し付けてきて、それは時間と共に強くなっていく。非常に動きにくく、邪魔だった。

 外見は無意味だと言ったのにもかかわらず、そこを使ってくる。しつこく物分かりの悪い者は嫌いだ。

 身体を使えば、好きなように操れる。そんな魂胆が見え見えで、苛立ちを覚える。

 などなど。マイナスな感想ばかりが、やって来た。

「そ、んな……。だ、だったら……。胸を当てた直後のアレは、なんなんですの……?」

 彼はしっかりと、わたくしの方を見た。確かに、意識をしていたのに……。あれは、一体……?

「あれは、君ではなくその後方――君がいた方向を見ていたんだ。奇妙な声が、響いてきたからな」
「声……!? そんなの、聞こえなかった……」
「大方、自分のことに集中していたのだろう。『みぎょぇわぁ』『ぴんじょきゅろっぺぇあ』というもので、周囲の方々も気にされていたぞ」

 そう言うので慌てて周りの人々に確認をしてみたら、答えはイエス。ちゃんと、そんな気色悪い声が発生していて……。
 わたくしは……。また……。勘違いをしてしまっていた……。

「残念だったな、マーガレット・リルファ。『クララより自分が上』、それを証明することはできなかったな」

 ショックを受けていると彼の視線が、午後5時を示す時計へと動いた。
 3つ失敗して、たっぷりと遠回りをしたせいで……。もう、時間切れ……。

「もっとも、いくら時間があっても一緒なのだが――。とにかく、タイムアップとなってこちらは約束を守った。そちらも守ってもらうぞ」

 彼は懐から紙を取り出し、わたくしに突きつけてきた。
 これは……。《このデート中に100Cを超えなかった場合は、大人しく手を引きます》。《約束を破った場合、クララに八つ当たりをした場合は、一家全員で貴族籍を手放します》。という内容のある、拇印付きの誓約書……。

「君に付き纏われると、クララに迷惑がかかってしまうんだ。……言わずもがなこれを違えてしまえば、君たち親子に相応のものが返ってくることになる。それをゆめゆめ忘れるな」
「まっ、待ってくださいっ! ユリウス様っ!! わたくしは――」
「君との時間は終わっていて、これ以上相手をする義理はない。マーガレット・リルファ、永遠にさようなら」

 何度呼び止めても、無駄。彼は淡々と踵を返して歩き出し、一度も振り向かず……。従者を引き連れ、去ってしまったのだった……。



 そ、そんな……。そんな……っ。
 こんなことが、あるなんて……………………。

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