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第3話 エリスが読み取っていたもの ~辛い記憶、理不尽な出来事~
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「ねえ橋本さん。一体どんな『ズル』をしたんですか?」
テニス部の次の大会の――1年生にとっては初めてとなる大会のレギュラーが発表され、1年では唯一涼子が選ばれた日のこと。涼子が喜びを噛み締めながら下校していると、追いかけてきたチームメイトはそう口にしました。
大和撫子然とした、穏やかでおっとりとした少女。不正に言及してきたのは、同じく1年の加藤百合でした。
「え……。加藤さん……? ズルって、なんの話ですか……?」
「知らないフリをしようとしても、無駄ですよ。レギュラーになるためのズルをした、っていうお話ですよ」
涼子と百合は、どちらもテニス経験者。入部時から、レギュラー争いをしている関係でした。
そして百合にとって涼子は、自分より2年もテニス歴が短い格下。『自分が選ばれなかったのはおかしい』という理由で、こういったことを言っていたのでした。
「私は小学校1年生からテニスを始めて、小学6年生の時は大きな大会で優勝したことがあるんですよ? そんな私が貴方なんかに負けて、レギュラーから外れるなんて有り得ません。監督にお金か何かを渡したんですよね?」
「しっ、してませんっ。何もしていませんよっ。私は正々堂々部活動をしていましたからっ」
「…………そうですか。認めないんですね。レギュラーを辞退する気は、ないんですね?」
「あっ、ありませんっ! お金とか物とか、悪いことなんてなにもしていませんからっ!」
「…………そうですか。そうですか。だったらこちらも、手段は選びません。卑怯なことには卑怯ことでお返しします。私のプライドを踏みにじったこと、後悔させてあげますよ」
そうしてその翌日から、涼子の部活は――部活、だけではありません。学校生活までもが、大きく変わってしまいます。
『ねえ、知ってる? 監督と橋本さんって、遠い親戚らしいよ』
『うそっ!? そうなの!?』
『家族ぐるみで出かけているのを見た人が居るんだって。遠い親戚だから加藤さんじゃなくて橋本さんをレギュラーにしてあげたんじゃないかって、あちこちで言われ始めてるよ』
こんなありもしない噂が流れたり、
『ね、聞いた? 3組の、橋本さん。4組の加藤さんに、ずっとイジワルしてたんだって』
『知ってる知ってるっ。レギュラー争いに勝つため、やってたんだってね』
『ずっとレギュラーなら強い高校に推薦入学で入れるから、やってたみたい。監督と遠い親戚の噂もあるし、サイテーだよね』
百合は自分の野望を涼子の野望にして広めたり、
『ねえ……。なんであたしのお財布が、橋本さんの鞄に入ってるの……?』
部室で盗難を発生させ、涼子を犯人にしたり。
何個もの悪質で根も葉もない噂を流し、橋本涼子の評価は180度変わってしまう。窃盗なども含め涼子は繰り返し否定しましたが、悪評があまりにも多くあったために信用されることはなく――。心も体も、ボロボロになってしまいました。
そして、
(橋本さん。早く正直に白状した方がいいですよ? でないと、もっと酷い目に遭いますよ?)
今日廊下ですれ違う際にそう囁かれ、その後涼子は壊されたラケットと破られたユニフォームを見つけてしまう。しかもそれは百合のせいにするため自分でやったことだと言われてしまい、涼子の中の負は限界量を超えてしまったのでした――。
テニス部の次の大会の――1年生にとっては初めてとなる大会のレギュラーが発表され、1年では唯一涼子が選ばれた日のこと。涼子が喜びを噛み締めながら下校していると、追いかけてきたチームメイトはそう口にしました。
大和撫子然とした、穏やかでおっとりとした少女。不正に言及してきたのは、同じく1年の加藤百合でした。
「え……。加藤さん……? ズルって、なんの話ですか……?」
「知らないフリをしようとしても、無駄ですよ。レギュラーになるためのズルをした、っていうお話ですよ」
涼子と百合は、どちらもテニス経験者。入部時から、レギュラー争いをしている関係でした。
そして百合にとって涼子は、自分より2年もテニス歴が短い格下。『自分が選ばれなかったのはおかしい』という理由で、こういったことを言っていたのでした。
「私は小学校1年生からテニスを始めて、小学6年生の時は大きな大会で優勝したことがあるんですよ? そんな私が貴方なんかに負けて、レギュラーから外れるなんて有り得ません。監督にお金か何かを渡したんですよね?」
「しっ、してませんっ。何もしていませんよっ。私は正々堂々部活動をしていましたからっ」
「…………そうですか。認めないんですね。レギュラーを辞退する気は、ないんですね?」
「あっ、ありませんっ! お金とか物とか、悪いことなんてなにもしていませんからっ!」
「…………そうですか。そうですか。だったらこちらも、手段は選びません。卑怯なことには卑怯ことでお返しします。私のプライドを踏みにじったこと、後悔させてあげますよ」
そうしてその翌日から、涼子の部活は――部活、だけではありません。学校生活までもが、大きく変わってしまいます。
『ねえ、知ってる? 監督と橋本さんって、遠い親戚らしいよ』
『うそっ!? そうなの!?』
『家族ぐるみで出かけているのを見た人が居るんだって。遠い親戚だから加藤さんじゃなくて橋本さんをレギュラーにしてあげたんじゃないかって、あちこちで言われ始めてるよ』
こんなありもしない噂が流れたり、
『ね、聞いた? 3組の、橋本さん。4組の加藤さんに、ずっとイジワルしてたんだって』
『知ってる知ってるっ。レギュラー争いに勝つため、やってたんだってね』
『ずっとレギュラーなら強い高校に推薦入学で入れるから、やってたみたい。監督と遠い親戚の噂もあるし、サイテーだよね』
百合は自分の野望を涼子の野望にして広めたり、
『ねえ……。なんであたしのお財布が、橋本さんの鞄に入ってるの……?』
部室で盗難を発生させ、涼子を犯人にしたり。
何個もの悪質で根も葉もない噂を流し、橋本涼子の評価は180度変わってしまう。窃盗なども含め涼子は繰り返し否定しましたが、悪評があまりにも多くあったために信用されることはなく――。心も体も、ボロボロになってしまいました。
そして、
(橋本さん。早く正直に白状した方がいいですよ? でないと、もっと酷い目に遭いますよ?)
今日廊下ですれ違う際にそう囁かれ、その後涼子は壊されたラケットと破られたユニフォームを見つけてしまう。しかもそれは百合のせいにするため自分でやったことだと言われてしまい、涼子の中の負は限界量を超えてしまったのでした――。
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