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第8話 切っ掛けは部室で(4)
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「…………もしかしなくても、この手紙って……。ユリが作った、偽物……?」
「ちっ、違います! わたしはそんな真似はしませんよ!!」
「だったら、どうしてここにこの髪の毛があるの? この色この長さこのクセで、全く同じ特徴を持つ人の鞄から出てきた。そうなっちゃうよね?」
「こっ、これはっ! きっと鞄に入れている間に手紙が動いて、中にあった抜け毛が入っていって――」
「抜けた毛が、偶然そんな隙間に入っていくなんて有り得ない。この髪は、封筒を閉じる時に挟まってるんだよ」
百合はすぐさま否定しますが、それもまたすぐさま否定をされてしまいます。
加藤百合が制作者だと思わせる証拠が、あまりにも多い。そのため部長を始めとしたこの場の全員が、百合の言い分を信じません。
「「「「「加藤(加藤さん)(ユリ)(百合)(百合さん)……」」」」」
「本当にっ、違うんですっ! 信じてくださいっ!! それは――そうですっ! きっと橋本さんが何かを企んでいて、わたしが偽装したと思わせようとしているんですっ。昨日抜け落ちた髪を盗られていて、わたしが今日通るところにワザと置いたっ! わたしの性格を利用して、嵌めようとしているんですよっ!!」
「「「「「……………………」」」」」
「皆さん、信じてくださいっ!! わたしは決して非道な真似をしませんっ。お願いですっっ! わたしを信じてくだ――あっ! なかっ、中を見てみましょうっ! 手紙を読んでみたらっ、何かが分かるかもしれませんよっっ!!」
便箋を埋めているのは、涼子の癖を完全を再現した文章。こういったコピーはそうそうできはしない――周囲は誰も血のにじむような悪しき小細工を知らないため、この言い分は通る。
咄嗟に閃いた内容をそのまま言葉へと変換し、部長達は真相を追求すべく、封筒を開けて二つ折りの便箋を広げました。
((そこに違和感は何一つないし、そもそもっ。わたしが正当な罰を与えているとは誰も知らない。一切、感付かれないようにしてきた))
この手の行動の発覚は、致命傷。逆に自分自身が謹慎処分となる恐れがあるため、入念に入念を重ねて行ってきました。
それ故に、問題はない――。上手くやりすごせる――。
百合は自分にそう言い聞かせて動揺を抑え、全員が手紙に集中している間に、ここからの展開を考えます。
〇〇と聞いてきたら、〇〇と答えよう。○○のようだと言われたら、〇〇と返そう。こういった場合は回答速度が信頼へと繋がる為、百合は懸命に頭を働かせ――
「ねえ。百合。この手紙って、監督に宛てたものだったんだけどさ……」
「はい、なんでしょうか。部長さん」
――万全な体制で、飯島早苗を見返す加藤百合。
でしたが。全ての『用意』は無意味なものと、水の泡と化します。なぜならば早苗から出た言葉は、予想外かつ対処のしようがないものだったからです。
「これ、リョーコじゃなくてユリが書いてるよね? こんな綺麗な字を書けるのは、ユリしかいないもん」
「ちっ、違います! わたしはそんな真似はしませんよ!!」
「だったら、どうしてここにこの髪の毛があるの? この色この長さこのクセで、全く同じ特徴を持つ人の鞄から出てきた。そうなっちゃうよね?」
「こっ、これはっ! きっと鞄に入れている間に手紙が動いて、中にあった抜け毛が入っていって――」
「抜けた毛が、偶然そんな隙間に入っていくなんて有り得ない。この髪は、封筒を閉じる時に挟まってるんだよ」
百合はすぐさま否定しますが、それもまたすぐさま否定をされてしまいます。
加藤百合が制作者だと思わせる証拠が、あまりにも多い。そのため部長を始めとしたこの場の全員が、百合の言い分を信じません。
「「「「「加藤(加藤さん)(ユリ)(百合)(百合さん)……」」」」」
「本当にっ、違うんですっ! 信じてくださいっ!! それは――そうですっ! きっと橋本さんが何かを企んでいて、わたしが偽装したと思わせようとしているんですっ。昨日抜け落ちた髪を盗られていて、わたしが今日通るところにワザと置いたっ! わたしの性格を利用して、嵌めようとしているんですよっ!!」
「「「「「……………………」」」」」
「皆さん、信じてくださいっ!! わたしは決して非道な真似をしませんっ。お願いですっっ! わたしを信じてくだ――あっ! なかっ、中を見てみましょうっ! 手紙を読んでみたらっ、何かが分かるかもしれませんよっっ!!」
便箋を埋めているのは、涼子の癖を完全を再現した文章。こういったコピーはそうそうできはしない――周囲は誰も血のにじむような悪しき小細工を知らないため、この言い分は通る。
咄嗟に閃いた内容をそのまま言葉へと変換し、部長達は真相を追求すべく、封筒を開けて二つ折りの便箋を広げました。
((そこに違和感は何一つないし、そもそもっ。わたしが正当な罰を与えているとは誰も知らない。一切、感付かれないようにしてきた))
この手の行動の発覚は、致命傷。逆に自分自身が謹慎処分となる恐れがあるため、入念に入念を重ねて行ってきました。
それ故に、問題はない――。上手くやりすごせる――。
百合は自分にそう言い聞かせて動揺を抑え、全員が手紙に集中している間に、ここからの展開を考えます。
〇〇と聞いてきたら、〇〇と答えよう。○○のようだと言われたら、〇〇と返そう。こういった場合は回答速度が信頼へと繋がる為、百合は懸命に頭を働かせ――
「ねえ。百合。この手紙って、監督に宛てたものだったんだけどさ……」
「はい、なんでしょうか。部長さん」
――万全な体制で、飯島早苗を見返す加藤百合。
でしたが。全ての『用意』は無意味なものと、水の泡と化します。なぜならば早苗から出た言葉は、予想外かつ対処のしようがないものだったからです。
「これ、リョーコじゃなくてユリが書いてるよね? こんな綺麗な字を書けるのは、ユリしかいないもん」
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