黒い鍵の令嬢と陰陽師執事は、今夜も苦しむ魂を救う

柚木ゆず

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後日譚 エリスと蓮。二人の日常と、とある感謝(1)

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「お嬢様。本日もお疲れ様でした」
「蓮、貴男も一日お疲れ様。お互い、そろそろ休みましょうか」
 とある日の、午後6時半過ぎの事。寝間着ネグリジェを纏っていたエリスは、自室の椅子で小さく伸び。複数冊のノートを鞄に入れ、愛用のナイトキャップをかぶりました。

 負霊が誕生する時間。それは霊的要素が多くなる、丑三つ時午前2時と決まっています。そして対処が遅れてしまえば、悲劇へと繋がってしまいます。
 そのため『活動』を行うエリスと蓮にとって、一番大事なのは午前2時。このタイミングを万全の体勢で迎えられるよう、そこを生活の中心としているのです。


 2人にとって1日の終わりは午後6時半前後で、始まりは午前0時半。寝覚めが悪いエリスは熱めのシャワーを浴びて意識を覚醒させ、蓮が丁寧に髪を乾かし整え、その時に備えリラックスしつつ様々な『補給』を行います。
 そしてその後は負霊が発生した場合は現場に急行し、幸いにも発生がないのであれば、所謂本業を――服やアクセサリーのデザインを始めます。
 宝城家は活動資金を潤沢に得られるよう負霊救済を円滑に進められるよう、宝城ホールディングスという会社を所有。その中に服飾部門があり、エリスはそこのデザイナーを務めているのです。
 そうしてエリスは日が昇るまで仕事を行い、午前7時に朝食。蓮特製のパンやオムレツに舌鼓を打ったあとは制服に着替え、蓮が運転する車で自身が所属する女学校に登校。令嬢であり高校3年生として過ごし、帰宅したら課題などを片付け、夕食と入浴を済ませて就寝。

 これが、2人の毎日なのです。

「おやすみなさい、蓮。よい夢を」
「お休みなさいませ、お嬢様。よい夢を」

 微笑みと、流麗な一礼。エリスと蓮はいつもの動作を行い、いつもと同じように眠りの世界への向かいます。
 そして今日は――。そんな『いつも』に、一つの奇跡が加わる日。
 エリスと蓮は、夢の世界でとある出会いをするのでした。


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