もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず

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第3話(1)

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「お父様、お母様。あの夜会があった日のお昼、アリーの父親グエント様とアリーさんがいらっしゃられましたよね? 何時ごろだった覚えてますか?」
「あれは、午後1時半過ぎだったね。間違いないよ」
「グエント様と、会う約束をしていたものね。ワタシも何度か時計を確認していて、よく覚えているわ」
「……そう、ですか……。では私とエリオットさんがケンカをしたのは、いつ頃だったか覚えていますか?」
「その話が中盤に差し掛かった辺りだから、ええっと…………午後の、2時前後だね。いやぁ、あの時はビックリしたよ」
「天井の上から2人の怒鳴り声が聞こえてきて、そのあと貴方が泣きながら降りてきたんですもの。最近では一番、驚いたわ」

 毎日つけている日記の、時間の記入を忘れていた。あの時を思い出して欲しい。家に戻ったあとリビングでお父様とお母様に尋ねたら、このようなものがスラスラと返ってきました。
 午後1時半過ぎにアリーさんの来訪はなく、言い合いも泣いて降りてきた覚えもないのに。2人ともに、確信を持っています。

((お父様とお母様の反応を、見ていたら……。私が間違っているのかもしれないと、感じてきます))

 再びそちらの方向に引っ張られるような感覚があって、この思考こそが異常なのではないか? と、不安になってしまいます。
 ですが、それこそが間違いです。あの日は確かに、そういった事は一切起きていないのですから。

((やっぱり、お父様とお母様は変です。……ここに、手掛かりがありそうですね))

 こういった怪しい部分はどちらも、その際の記憶が異様に鮮明になっています。したがって他の質問をしてみて、同様のものがあればソレも怪しい。
 そこを追求していけば、きっとこの異常の原因を突き止められるはずです。

「お父様、お母様。そういえば私は感情が爆発してしまっていて、実はあの時の事をよく覚えていないんですよ。そちらも日記に記入しておきたいので、教えていただけませんか?」
「ああ、勿論だとも。今となっては、あの日は『良いターニングポイント』になった日だからね」
「ええ。ルシィを本当に愛してくれる人と出会える切っ掛け、となった出来事ですものね。ちゃんと覚えていないのは、勿体ないわ」

 私は2人に話を合わせ、そうして夜会当日の懐古が始まりました。
 回想ではなくて、懐古。お父様達は心底嬉しそうな、ホッとした様子で振り返っていって――。そのおかげで私は、複数の不自然を発見することが出来たのでした。

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