もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず

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第3・5話 部屋で聞こえた大きな音 俯瞰視点

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「ごめんな、ずっと耳がゴワゴワしてたよな? もう終わりだから安心してくれ」

 ハーナン邸の傍で急停止したあと、大急ぎで荷台を確認して走り去った大型の馬車。あのあとその馬車は人気(ひとけ)がない場所で止まり、御者の少年は――エリオット・ファムルは、2頭の馬と自分につけていた耳栓を外していました。

「ありがとうな。お前達のおかげで、上手くいったよ」

 あの大音は偶然ではなく、意図的なもの。パンパンになるまで空気を詰め込んだ厚めかつ大きな袋たちを、ルシィの近くで一気に破裂させる――。これが、彼の作戦でした。

 マインドコントロールを解く方法は、光と音による刺激を与える。

 丘での行動で光の刺激を与えたため、次は音。あの出来事のおかげでルシィは、レオンの卑猥な目線に気付くことができていたのでした。

「ルシィならこれが切っ掛けになって洗脳が弱まり、アイツの本性に気付く。そして今日は――今日は時間的に遅くて、明日だな。もう一人の犯人ことアリーのもとを訪ねる」

 エリオットとルシィは、幼馴染。エリオットにとってルシィは、これまでずっと傍にいた、誰よりも大事な存在。
 そのため行動は完璧に予想できており、実際全て的中していました。

「……アリーもアリーで、なかなかに性悪で狡猾。まだ完全に解けてないルシィだったら、巧みに誤魔化されてしまう――最悪、白と思い込んでしまう可能性が高い」

 彼女は、レオンの協力者。アリーは非常に上手く隠していましたが、ずっとエリオットに恋をしていました。そして、邪魔者であるルシィをどうにかしようとしていました。
 そうして『邪魔者を排除できる方法』を探しているところを、レオンが偶然目撃。そのしたたかさを買われ、利害の一致により手を組んでいたのです。
 しかもアリーは、レオンよりも厄介な相手。彼と違って、表情には決して出さない――絶対にバレないと高をくくって本心を顔や行動に出さないため、会話だけではどうやっても判断できないのです。

「だが俺は全てを知っていて、あちらは俺に感付かれているとは知らない。となれば、アレを使えば――。アリーに対して白黒付けられなくても、最終段階に進める」

 エリオットは指をパチンと鳴らし、その後2つ離れた街にある・・・・・・・・・馬車屋に向かって馬と車を返却。そうして自身の家の馬車に乗り換えた彼は、手綱を操りとある場所へと移動したのでした。

「不完全な状態でも、ルシィならきっと仕込みに気付いてくれる。…………頼んだぜ、13年来の幼馴染」

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