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プロローグ レアン・ロマイーン視点(1)
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「お父様、お母様、ただいま戻りまし――? どうされたのですか?」
現在時刻、午後7時47分12秒。ラボからお屋敷に戻ると、階段の傍でお二人が渋面で腕組みをされていました。
お父様もお母様も、普段は人前でこういった表情を見せません。そんなお二人がこのようになってしまっているということは、相当な『何か』が起きているようです。
「あ、ああ、お帰りレアン。今日もお疲れ様」
「お帰りなさい、ずっと気付かなくてごめんなさいね。今日もお疲れ様」
「常に申し上げておりますが、アレはわたしの我が儘の延長にあります。こちらこそ、いつもありがとうございます」
こんな時でも労ってくださるお父様達に笑みを返し、早々でありますが踏み込んでみることにしました。
「留守にしている間に、悪い風が吹いたみたいですね? わたしが首を突っ込んでも構わない問題なのでしょうか?」
「……分からない。分からないが、ソレに関してレアンに頼みたいことがあるのだよ」
なるほど。現時点では、お父様は――お母様も、トラブル? の全容を把握できていないのですね。
「畏まりました。わたしは、何をすればよろしいのでしょうか?」
「…………レアン。落ち着いて聞いて欲しい」
「その前置きで理解しました」
お父様やお母様がわたしにそう仰るケースは、ただひとつだけ。ルナミアスお姉様が関わっている場合だけ。
謎のトラブルは、お姉様が関係しているのですね。
「お父様、何があったのですか?」
「ルナミアスがな……。泣きながら帰って来て、そのまま部屋に閉じこもってしまっているのだよ」
今からおよそ1時間25分前に戻られて、お父様やお母様の声に反応することなく――返事をする余裕すらない状態で、自室に直行されたそうです。
「お姉様の今日の予定は午前中にあるパーティーにアントワーヌ様と共に出席し、その後お二人でランチを行い解散。他の予定は入っていなかったはずなので、後者の中で何かあったのでしょうね」
「戻ってきた時間を鑑みると、その可能性が高いな。ただ……」
「あの方と、そんな風になるとは思えないのよね……」
アントワーヌ様こと、ザロットス伯爵令息アントワーヌ様18歳。この方とお姉様は、今から半年前の6月2日に政略的な婚約を交わしました。
我がロマイーン家は子爵家で、あちらは伯爵家。財力の面ではウチが圧倒的に上であるため対等な関係を築けておりますが、それでも『爵位』と『家の歴史』の方が重要だと裏で小馬鹿にする人間も少なくありません。
とはいえそんな思考を持たない当主が率いる家を選んでもらっていますし、
『アントワーヌ様は、わたくしが嫌な気持ちになることは絶対に仰らないの。お父様の見立て以上に、とてもお優しい方よ』
どんな時でも最大限に気を遣ってもらっているそうで、ソレはお姉様はもちろんのことわたしに対しても同様。ですのでお姉様はいつも、自分は幸せ者、だと喜んでいました。
そんな事実があるため、お父様とお母様も眉根を寄せました。
「あちらの当主殿は間違いなくあの子を傷付けるような真似はなさらない御人で、このように謎だらけ。そこでなレアン、本当にすまないのだが……。お前に、理由を把握してきてもらいたいのだよ」
「わたくし達がいくら声をかけても、返ってくるのは『大丈夫です』『明日には元に戻れます』の二つだけ。それはきっと、このあとも変わらない。だからね、気が進まないでしょうけど…………あの子のためにも、本音を確認してきて欲しいのよ」
「そういうことでしたか。…………方向性は違えど、終着点は同じ。その役目、引き受けましょう」
お母様達の仰る通りで、気は進みません。
とはいえ――。そこまでの『何か』を、お姉様ひとりに抱えさせ続けるわけにはいきません。
そこでわたしは一旦部屋に戻って準備を整え、厨房に寄ったあと、ルナミアスお姉様のお部屋を訪ねたのでした。
現在時刻、午後7時47分12秒。ラボからお屋敷に戻ると、階段の傍でお二人が渋面で腕組みをされていました。
お父様もお母様も、普段は人前でこういった表情を見せません。そんなお二人がこのようになってしまっているということは、相当な『何か』が起きているようです。
「あ、ああ、お帰りレアン。今日もお疲れ様」
「お帰りなさい、ずっと気付かなくてごめんなさいね。今日もお疲れ様」
「常に申し上げておりますが、アレはわたしの我が儘の延長にあります。こちらこそ、いつもありがとうございます」
こんな時でも労ってくださるお父様達に笑みを返し、早々でありますが踏み込んでみることにしました。
「留守にしている間に、悪い風が吹いたみたいですね? わたしが首を突っ込んでも構わない問題なのでしょうか?」
「……分からない。分からないが、ソレに関してレアンに頼みたいことがあるのだよ」
なるほど。現時点では、お父様は――お母様も、トラブル? の全容を把握できていないのですね。
「畏まりました。わたしは、何をすればよろしいのでしょうか?」
「…………レアン。落ち着いて聞いて欲しい」
「その前置きで理解しました」
お父様やお母様がわたしにそう仰るケースは、ただひとつだけ。ルナミアスお姉様が関わっている場合だけ。
謎のトラブルは、お姉様が関係しているのですね。
「お父様、何があったのですか?」
「ルナミアスがな……。泣きながら帰って来て、そのまま部屋に閉じこもってしまっているのだよ」
今からおよそ1時間25分前に戻られて、お父様やお母様の声に反応することなく――返事をする余裕すらない状態で、自室に直行されたそうです。
「お姉様の今日の予定は午前中にあるパーティーにアントワーヌ様と共に出席し、その後お二人でランチを行い解散。他の予定は入っていなかったはずなので、後者の中で何かあったのでしょうね」
「戻ってきた時間を鑑みると、その可能性が高いな。ただ……」
「あの方と、そんな風になるとは思えないのよね……」
アントワーヌ様こと、ザロットス伯爵令息アントワーヌ様18歳。この方とお姉様は、今から半年前の6月2日に政略的な婚約を交わしました。
我がロマイーン家は子爵家で、あちらは伯爵家。財力の面ではウチが圧倒的に上であるため対等な関係を築けておりますが、それでも『爵位』と『家の歴史』の方が重要だと裏で小馬鹿にする人間も少なくありません。
とはいえそんな思考を持たない当主が率いる家を選んでもらっていますし、
『アントワーヌ様は、わたくしが嫌な気持ちになることは絶対に仰らないの。お父様の見立て以上に、とてもお優しい方よ』
どんな時でも最大限に気を遣ってもらっているそうで、ソレはお姉様はもちろんのことわたしに対しても同様。ですのでお姉様はいつも、自分は幸せ者、だと喜んでいました。
そんな事実があるため、お父様とお母様も眉根を寄せました。
「あちらの当主殿は間違いなくあの子を傷付けるような真似はなさらない御人で、このように謎だらけ。そこでなレアン、本当にすまないのだが……。お前に、理由を把握してきてもらいたいのだよ」
「わたくし達がいくら声をかけても、返ってくるのは『大丈夫です』『明日には元に戻れます』の二つだけ。それはきっと、このあとも変わらない。だからね、気が進まないでしょうけど…………あの子のためにも、本音を確認してきて欲しいのよ」
「そういうことでしたか。…………方向性は違えど、終着点は同じ。その役目、引き受けましょう」
お母様達の仰る通りで、気は進みません。
とはいえ――。そこまでの『何か』を、お姉様ひとりに抱えさせ続けるわけにはいきません。
そこでわたしは一旦部屋に戻って準備を整え、厨房に寄ったあと、ルナミアスお姉様のお部屋を訪ねたのでした。
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