2 / 29
プロローグ レアン・ロマイーン視点(2)
しおりを挟む
「お姉様、わたしです。お邪魔してもよろしいでしょうか?」
『……ごめんなさい、今はひとりにして欲しいの……。大丈夫。明日には元に戻っているから』
お部屋の扉をノックしてみると、返って来たのは涙声。お姉様はまだ、涙されているようです。
「お姉様、こちらこそごめんなさい。そんなお姉様を放ってはおけないんです。せめて、お持ちした食事を召し上がっていただけませんか?」
「……………………」
「飲まず食わずではお身体に障ります。お食事が終わりましたら、去るとお約束します。入れてくださいませんか?」
「……………………分かったわ。どうぞ」
ガチャリと音がして鍵が開き、扉がゆっくりと開き――ウサギのような瞳になったお姉様が現れました。
「こんな顔と声で、ごめんなさい」
「いえ、応じてくださりありがとうございます。オムレツと野菜のスープをお持ちしました。温まりますよ」
温かくしている部屋にいたはずなのに冷え切ってしまっている手を取り、ワゴンを引いてお姉様をベッドへと導く。
今日は特別。こちらで召し上がっていただきましょう。
「よろしければ、わたしがお口まで運びましょうか?」
「そこまでしてもらえないわ。いただくわね」
お姉様は弱々しい笑みを浮かべ、いつもの半分くらいのスピードではありましたが、両方を完食。お皿とカップが空っぽになりました。
「お姉様、安心いたしました。約束通り失礼します」
「ぁ……。わざわざ来てくれたのに、ごめんなさい」
「お気になさらないでください。わたしにできることがありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「ええ、本当にありがとう。わたくしが何かをされたとか、そういうものではないの。だから、安心して欲しい。お父様とお母様、使用人たちにも伝えてもらえるかしら?」
「承知しました。今日ゆっくり休んでくださいね」
右手の上にそっと重ねられた手に左手を重ね返し、わたしはワゴンを押して退室。お姉様が使用したカトラリー達を厨房まで運び、
((……そろそろですね))
ぴったり30分経ったタイミングで動き出し、再びルナミアスお姉様のお部屋の前にやって来ました。
「お姉様、わたしです。レアンです」
『…………ふぁ、ごめんなさい。食事のおかげで、少しウトウトしていたわ。どうしたの?』
「やっぱりお姉様が心配で、戻ってきてしまいました。…………お姉様。お姉様がそんなにも落ち込み涙されている理由を、わたしに教えてください」
扉の向こう側に向かい、はっきりと大きな声で発音しました。そうすると――
『……分かったわ。教えるわ』
――今回はこんなお返事があり、続いて、こんな言葉がわたしの耳に飛び込んできたのでした。
『わたくしがこんな風になっている理由は、アントワーヌ様。アントワーヌ様の言動に、耐えられなくなってしまったの』
『……ごめんなさい、今はひとりにして欲しいの……。大丈夫。明日には元に戻っているから』
お部屋の扉をノックしてみると、返って来たのは涙声。お姉様はまだ、涙されているようです。
「お姉様、こちらこそごめんなさい。そんなお姉様を放ってはおけないんです。せめて、お持ちした食事を召し上がっていただけませんか?」
「……………………」
「飲まず食わずではお身体に障ります。お食事が終わりましたら、去るとお約束します。入れてくださいませんか?」
「……………………分かったわ。どうぞ」
ガチャリと音がして鍵が開き、扉がゆっくりと開き――ウサギのような瞳になったお姉様が現れました。
「こんな顔と声で、ごめんなさい」
「いえ、応じてくださりありがとうございます。オムレツと野菜のスープをお持ちしました。温まりますよ」
温かくしている部屋にいたはずなのに冷え切ってしまっている手を取り、ワゴンを引いてお姉様をベッドへと導く。
今日は特別。こちらで召し上がっていただきましょう。
「よろしければ、わたしがお口まで運びましょうか?」
「そこまでしてもらえないわ。いただくわね」
お姉様は弱々しい笑みを浮かべ、いつもの半分くらいのスピードではありましたが、両方を完食。お皿とカップが空っぽになりました。
「お姉様、安心いたしました。約束通り失礼します」
「ぁ……。わざわざ来てくれたのに、ごめんなさい」
「お気になさらないでください。わたしにできることがありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「ええ、本当にありがとう。わたくしが何かをされたとか、そういうものではないの。だから、安心して欲しい。お父様とお母様、使用人たちにも伝えてもらえるかしら?」
「承知しました。今日ゆっくり休んでくださいね」
右手の上にそっと重ねられた手に左手を重ね返し、わたしはワゴンを押して退室。お姉様が使用したカトラリー達を厨房まで運び、
((……そろそろですね))
ぴったり30分経ったタイミングで動き出し、再びルナミアスお姉様のお部屋の前にやって来ました。
「お姉様、わたしです。レアンです」
『…………ふぁ、ごめんなさい。食事のおかげで、少しウトウトしていたわ。どうしたの?』
「やっぱりお姉様が心配で、戻ってきてしまいました。…………お姉様。お姉様がそんなにも落ち込み涙されている理由を、わたしに教えてください」
扉の向こう側に向かい、はっきりと大きな声で発音しました。そうすると――
『……分かったわ。教えるわ』
――今回はこんなお返事があり、続いて、こんな言葉がわたしの耳に飛び込んできたのでした。
『わたくしがこんな風になっている理由は、アントワーヌ様。アントワーヌ様の言動に、耐えられなくなってしまったの』
134
あなたにおすすめの小説
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
『平民を人間扱いしない公爵令息、あなたも平民です! ~系譜検察官の目は欺けません~
鷹 綾
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
公爵令息アドリアン・ジオニックは、平民の少女を連れて現れ、堂々と言い放った。
「身分など関係ない。彼女こそ、私の真実の愛だ」
だがその一方で、彼は平民や下級貴族を露骨に見下し、使用人を人間扱いすらしない傲慢な人物だった。
そんな彼の振る舞いに違和感を抱いたのは、王宮図書室に通う地味な令嬢アウレリア。
古文書や家系記録を研究する彼女の正体は、王国の貴族制度を守るために存在する一族――系譜検察官の家系の娘だった。
「公爵家にしては……家系が妙です」
調査を進めるアウレリアは、やがて驚くべき事実に辿り着く。
――その公爵家の家系図は、偽造されたものだった。
王宮舞踏会での公開の場。
提出された調査報告書により、王命が下る。
爵位剥奪。
財産没収。
そして貴族身分の完全剥奪。
貴族を名乗り、平民を見下していた男に突きつけられる残酷な真実。
「私は貴族だ!」
叫ぶ元公爵令息に、アウレリアは静かに告げる。
「いいえ。あなたは――ただの平民です」
平民を人間扱いしなかった男が、自らも平民だったと知るとき。
王国史に残る、最も皮肉なざまぁ事件が幕を開ける。
夫に君も愛人を作ればいいと言われましたので
麻麻(あさあさ)
恋愛
「君も愛人を作ればいい」と夫に言われたので売り言葉に買い言葉で出会った愛人候補は自分が魔法使い伯爵と言いました。
全15話。プロローグから4話まで一挙公開。
翌日からは20時に2話ずつ公開。11日は最終話まで3話一挙公開。
登場人物
マーリン・ダグラス
結婚2年目にして夫の不倫を問い詰めたら黒だった令嬢。母に聞かされた結婚は夫となる人を大事にという言葉を守ってるが夫のギルバートにブチギレてこの度愛人を探すと決める。
デミトリアス・ドラモンドまたはアロン
マーリンが仮面舞踏会で知り合った自称魔法使い伯爵。次の日にマーリン好みの執事アロンに姿を変えて彼女の屋敷に来る。
ギルバート・ダグラス
マーリンの夫で伯爵。ギルと呼ばれている。愛人を作れば発言をした。
シェリー・モーヴ
ギルバートの愛人
エミリー
マーリンの親友で既婚者。
ララとリリー
マーリンの屋敷のメイド達。
【完結】意思という名の番(つがい)
しえろ あい
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは、婚約者・王太子アルベルトの政務を裏で完璧に代行する「影の統治者」。
本能的な「番(つがい)」に溺れ、自分を「冷たい人形」と蔑む王太子に対し、アンジェリカは政権奪取の機を伺い始める。
第二王子レオナルドと密かな想いを通じあわせたことをきっかけに、知略と執着で愚かな王太子を破滅へと追い込む計画が動き出す。
神の定めた宿命を、人の意志でねじ伏せ、真の玉座を掌握する、残酷で美しい共謀劇。
※小説家になろう様でも投稿しています
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
双子の姉に聴覚を奪われました。
浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』
双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。
さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。
三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。
嘘つきな私は婚約解消を告げられました
夏生 羽都
恋愛
伯爵令嬢のイエンナは8歳の時に、避暑地として知られている街にひと夏の予定で家族と訪れていた。
そこでルークと名乗る少年と出会う。
ルークとイエンナはすぐに仲良くなって毎日一緒に遊んでいたのだが、黙って外に出ている事を母親に知られてしまい、部屋で謹慎を言い渡されてしまう。
ルークはイエンナに会いに来るが、父親も知るところとなり、ルークとは二度と関わってはいけないと言われてしまう。
ルークと引き離されるように王都へ戻ってきたイエンナは父親の友人の息子であるジョエルと新たに婚約を結ぶ。
少し我儘なジョエルだったが、イエンナの努力で良好な関係で過ごしているうちに数年が経った。
学園へ入学する事になったイエンナだが、入学式でルークと再会してしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる