お姉様を泣かせましたね?

柚木ゆず

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プロローグ レアン・ロマイーン視点(2)

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「お姉様、わたしです。お邪魔してもよろしいでしょうか?」
『……ごめんなさい、今はひとりにして欲しいの……。大丈夫。明日には元に戻っているから』

 お部屋の扉をノックしてみると、返って来たのは涙声。お姉様はまだ、涙されているようです。

「お姉様、こちらこそごめんなさい。そんなお姉様を放ってはおけないんです。せめて、お持ちした食事を召し上がっていただけませんか?」
「……………………」
「飲まず食わずではお身体に障ります。お食事が終わりましたら、去るとお約束します。入れてくださいませんか?」
「……………………分かったわ。どうぞ」

 ガチャリと音がして鍵が開き、扉がゆっくりと開き――ウサギのような瞳になったお姉様が現れました。

「こんな顔と声で、ごめんなさい」
「いえ、応じてくださりありがとうございます。オムレツと野菜のスープをお持ちしました。温まりますよ」

 温かくしている部屋にいたはずなのに冷え切ってしまっている手を取り、ワゴンを引いてお姉様をベッドへと導く。
 今日は特別。こちらで召し上がっていただきましょう。

「よろしければ、わたしがお口まで運びましょうか?」
「そこまでしてもらえないわ。いただくわね」

 お姉様は弱々しい笑みを浮かべ、いつもの半分くらいのスピードではありましたが、両方を完食。お皿とカップが空っぽになりました。

「お姉様、安心いたしました。約束通り失礼します」
「ぁ……。わざわざ来てくれたのに、ごめんなさい」
「お気になさらないでください。わたしにできることがありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「ええ、本当にありがとう。わたくしが何かをされたとか、そういうものではないの。だから、安心して欲しい。お父様とお母様、使用人たちみんなにも伝えてもらえるかしら?」
「承知しました。今日ゆっくり休んでくださいね」

 右手の上にそっと重ねられた手に左手を重ね返し、わたしはワゴンを押して退室。お姉様が使用したカトラリー達を厨房まで運び、

((……そろそろですね))

 ぴったり30分経ったタイミングで動き出し、再びルナミアスお姉様のお部屋の前にやって来ました。

「お姉様、わたしです。レアンです」
『…………ふぁ、ごめんなさい。食事のおかげで、少しウトウトしていたわ。どうしたの?』
「やっぱりお姉様が心配で、戻ってきてしまいました。…………お姉様。お姉様がそんなにも落ち込み涙されている理由を、わたしに教えてください」

 扉の向こう側に向かい、はっきりと大きな声で発音しました。そうすると――

『……分かったわ。教えるわ』

 ――今回はこんなお返事があり、続いて、こんな言葉がわたしの耳に飛び込んできたのでした。


『わたくしがこんな風になっている理由は、アントワーヌ様。アントワーヌ様の言動に、耐えられなくなってしまったの』


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