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第6話 始 レアン視点(1)
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友人の婚約者――。婚約者の妹――。今回のパーティーにはそういった立場でわたし達姉妹は招待されており、そんな面もあって所謂挨拶回りは3人で行う。
ですので本日は、面白い光景を間近で見ることができました。
「いえいえそんな、ラードロン様には遠く及びませんよ」
「滅相もございません。心より尊敬しております」
「なんと……! ますますお美しくなられて……!」
「申し訳ございません。ローズ様の美に見惚れておりました」
心の中ではお姉様の前でしたように、女性に接する際には怒ったり頭を抱えたり奇声を発しながら嘆いたりしているのでしょうか? それとも本日は最愛の人がいらっしゃらないので、そこまで怒ってはいないのでしょうか?
真実を知る由はありませんが、とにかく――。アントワーヌ様は巧みに爽やかな仮面を貼り付け、あちこちで格上令嬢に対して感嘆の表情を振り撒きました。
((いずれにせよ、ストレスは溜まっているのでしょうね。残された時間を楽しんでいただきたかったのですが、残念ながら無理でしたね))
会場内にある豪奢な時計を確認してみると、もうまもなく30分が経過します。
半年間、そして先日のお姉様への行いのせいなのでしょうか。心労を背負ったまま始まってしまう羽目になりました。
「次は、どうしようかな。今、お声がけできそうなのは……」
お隣で顎に手をやっているアントワーヌ様はいつもと変わらない様子に見えますが、その実まるで違う。いつでも始められる状態に――ついになり、わたしは動き出すタイミングを図りはじめます。
((…………………………発見。ようやくいらっしゃりましたね))
たった今会場に入られた、キツイツリ目が印象的なふくよかな女性。この方をわたしは待っていました。
あちらの女性は主催であるザアエス家と深い関係にある、ヴァサホア侯爵家の御令嬢フィウナ様。面倒な人間が多い貴族界でも、特に気難しい人、として有名な人です。
「フィウナ様がいらっしゃった。ふたりとも、ご挨拶に行くよ」
そんな性質もあって『次』がすぐさま決まり、わたし達は揃ってフィウナ・ヴァサホア様のもとへと向かいました。
「フィウナ様、ご機嫌麗しゅう」
「「ご機嫌麗しゅうございます」」
「あらアントワーヌ様、お久しぶりですわね」
アントワーヌ様とフィウナ・ヴァサホア様は面識があり、挨拶が終わるといつものようににこやかなやり取りが始まりました。
でも――。
今日は、『いつも』が続きはしません。
((…………今ですね))(お姉様、あちら)
(え? どうかしたの?)
フィウナ・ヴァサホア様がよそ見をしたタイミングを見計らってお姉様の意識を一瞬遠ざけ、その隙にアントワーヌ様の耳元でとあるワードを囁く。そうすることでこれまで仕込んできたもの全てが繋がり、その結果――。
不意に、アントワーヌ様の口からこんな言葉が飛び出したのでした。
「フィウナ様が綺麗? お世辞に決まっているだろう。こんな女が綺麗なはずがない」
ですので本日は、面白い光景を間近で見ることができました。
「いえいえそんな、ラードロン様には遠く及びませんよ」
「滅相もございません。心より尊敬しております」
「なんと……! ますますお美しくなられて……!」
「申し訳ございません。ローズ様の美に見惚れておりました」
心の中ではお姉様の前でしたように、女性に接する際には怒ったり頭を抱えたり奇声を発しながら嘆いたりしているのでしょうか? それとも本日は最愛の人がいらっしゃらないので、そこまで怒ってはいないのでしょうか?
真実を知る由はありませんが、とにかく――。アントワーヌ様は巧みに爽やかな仮面を貼り付け、あちこちで格上令嬢に対して感嘆の表情を振り撒きました。
((いずれにせよ、ストレスは溜まっているのでしょうね。残された時間を楽しんでいただきたかったのですが、残念ながら無理でしたね))
会場内にある豪奢な時計を確認してみると、もうまもなく30分が経過します。
半年間、そして先日のお姉様への行いのせいなのでしょうか。心労を背負ったまま始まってしまう羽目になりました。
「次は、どうしようかな。今、お声がけできそうなのは……」
お隣で顎に手をやっているアントワーヌ様はいつもと変わらない様子に見えますが、その実まるで違う。いつでも始められる状態に――ついになり、わたしは動き出すタイミングを図りはじめます。
((…………………………発見。ようやくいらっしゃりましたね))
たった今会場に入られた、キツイツリ目が印象的なふくよかな女性。この方をわたしは待っていました。
あちらの女性は主催であるザアエス家と深い関係にある、ヴァサホア侯爵家の御令嬢フィウナ様。面倒な人間が多い貴族界でも、特に気難しい人、として有名な人です。
「フィウナ様がいらっしゃった。ふたりとも、ご挨拶に行くよ」
そんな性質もあって『次』がすぐさま決まり、わたし達は揃ってフィウナ・ヴァサホア様のもとへと向かいました。
「フィウナ様、ご機嫌麗しゅう」
「「ご機嫌麗しゅうございます」」
「あらアントワーヌ様、お久しぶりですわね」
アントワーヌ様とフィウナ・ヴァサホア様は面識があり、挨拶が終わるといつものようににこやかなやり取りが始まりました。
でも――。
今日は、『いつも』が続きはしません。
((…………今ですね))(お姉様、あちら)
(え? どうかしたの?)
フィウナ・ヴァサホア様がよそ見をしたタイミングを見計らってお姉様の意識を一瞬遠ざけ、その隙にアントワーヌ様の耳元でとあるワードを囁く。そうすることでこれまで仕込んできたもの全てが繋がり、その結果――。
不意に、アントワーヌ様の口からこんな言葉が飛び出したのでした。
「フィウナ様が綺麗? お世辞に決まっているだろう。こんな女が綺麗なはずがない」
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