Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

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第3章

愚かなる皇子

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 昔々、一人の心優しき女皇がいました。
 彼女は、賢皇と呼ばれる程の正しき治世を布き国民を導いていました。


 しかし、悲しい事に彼女には肉親と言える人が、身体の弱い弟だけでした。
 彼女にとって、弟はとても大切で、血を分けた、たった一人の可愛い弟です。
 せめて、人並みの人生を送らせてあげたいと思っていました。
 ……けれど、彼女と弟は創星皇の子孫。
 創星皇の直系と、七人の賢者の血を引きし者は星を守護する要。それ故に……。
 この星に在る限り、そのくびきから逃れる事は出来ない。

 彼女は自分が皇位につく時、一つだけの我が儘を願い出た。
 時の賢者達は、その願いを聞き入れ、一時的な誓約の書き換えを行使した。
 その制約の魔法は、彼女が生きて皇位にいる間だけの限定的なものであった。
 成人した皇族の義務である【星の贄】の役目を肩代わりすると言うものである。

――――そして、女皇の願いにより、皇弟は人並みより少し上の健康を得た。

 だが、その選択により、己を悲しみの底に落とす原因を作り出してしまっていた。
 元々持っていた魔力の半分以上を星に捧げ、行使出来る魔法の幅も威力も少なくなったが、彼女にとっては苦ではなかった。
 可愛い唯一の肉親である弟が健やかであれば、幸せだった。
 その日が来るまでは…………。

 それは、女皇が別の星へと公務の為出掛けていた隙を狙ったものだった。
 皇弟が、皇位簒奪を企てたのだ。
 彼は……星を維持する為の救済的な強制魔法装置に手を出した。
 それを使えば、七賢者の認定が無くとも皇位に即ける事が可能となる。

 『皇位選定版《クラウン》』別名『星喰みの石版《サクリファイス》』と呼ばれるそれを使う事で、皇位を継げる事が可能となる。

 彼はそれを使う事のリスクを考えず、自分を褒め称える周囲の声に酔いしれた。
「貴方様は王に相応しい」
「女皇の力は衰えて来たのですから、変革を起こすなら今しかありません」
「我々は、貴方にこそ王になって欲しいのです」

 そんな都合の良い言葉に踊らされた。


――――運命の日。

 愚かな皇子は、『皇位選定版《クラウン》』に手を出す。
 そして、自らの幸せを手放す。
 姉の慈悲を踏み躙り、彼は己に課せられていた皇族の義務を……そして、求めた代償を支払う。
 彼は『皇位選定版《クラウン》』に、命まで奪われなかった。
 姉が彼の暴挙を止める事が出来たからである。
 魔力の全てを奪われ、それでも皇位を継ぐ為に必要な魔力量に達せず、更に生命力までも奪われることとなった。
 結局、彼は一年程昏睡状態に陥る。
 目覚めた時、彼は本当に大切なものを失っていた。


――――健康な身体。
――――人並み以上の魔力。
――――皇族としての地位。

 彼に課せられたのは、星の為の生贄としての魔力の献上。
 この星に居る限り、人並み以下の身体となる。
 それは、ちょっとの事でも病魔に侵されやすい事を意味する。
 元々が虚弱体質だったのだから、仕方がないかもしれない。
 この地に住み生きる事は、死なない程度に……苦しんだとしても……魔力を搾取され続ける。
 古の魔法は契約に沿った形で、間違いなく行使され続けるもの。
 だが、女皇はそれを受け入れられなかった。否、受け入れたくなかった。
 両親に死なれ、家族は弟一人となった時より、彼女は日々怯えて暮らしていた。
 女皇と言う頂点に立ち笑顔を浮かべた、その裏で。
 ただ独り残されることを。
 そして、彼女は一計を案じた。
 人並みの身体で生きられる方法を……古の魔法からは逃れられないのを逆手に取り、魔力を吸い取る魔導具を使い罪人の証とした。
 そして、外の惑星に追放する事で彼の身体と命を守ろうと考えた。
 人並よりほんの少しの余剰魔力《せいめいりょく》を残して搾取される様に設定すれば、虚弱体質までにならないからだ。
 命を脅かす位まで搾取されるのと、一定量の魔力を献上するのとではどちらが良いか明白だ。


――――そして、皇弟は故郷を離れ、年に一度、魔力を溜めた魔導具を献上し、新しい魔導具を枷られる。
 その際、自分を案じ、愛してくれる姉からの手紙を受け取り過ごしたという。
 弟もまた、姉への手紙を綴った。


 それは、どちらかが死ぬまで、文のやり取りが続けられたと言われている。
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