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反撃の行進曲2

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「なんなんだ、あれは!?」
「え?」
「魔法が使えない筈じゃ……」
「どういうことだ?!」
 向こう側では間抜けな面を晒す、王子と不愉快な仲間達が狼狽えている。


「……武器を持ち出したのですから、仕方ありませんわね。義兄様、そして、同罪の皆様方も、反撃致しますから、お覚悟なさいませ。はぁ……ローザリンデもジークベルトも私が何処の血筋かを理解したのに義兄様だけが分からないなんて情けない。あぁ、これはランプロス公爵家の許可済みですので悪しからず」
 失望の表情も隠すことなく、事も無げにエルーシャは告げる。

反撃付加カウンターオプション拘束せよグレイニプル!」
 白い指先が盾に触れると、白銀の波光が波紋の様に広がり、淡い燐光を纏う。白銀に光る細い紐のようなものが、盾からしゅるしゅるっと伸びてくる。まるで生きているかの様に、自在に動き、目標に向かって伸びていく。

 まず始めの標的である炎の剣を絡み取り、柄を持っている持ち主も絡め捕っていく。
「な! くそっ、放せエルーシャ! こんなもの燃やしてくれる」

 もがくカルステンは、剣に魔力を込め刃に更なる炎を纏わせる。
「往生際が悪いですわね。義兄様。梱包ラッピング!」
 パチリと指を鳴らし、更に固有魔法を発動させる。

「うわっ?!」
 グルグルグルと白銀が、炎を纏う刃をいとも容易く、繭玉の如くまとい付いていく。それは、形だけを残して炎も熱も遮断した上で、更にはカルステンの手から柄を外し、彼すらもミノムシ状態にしていった。見えない背中側には、ワンポイントな飾り的なリボン風に白銀の紐がゆらゆら揺れている。きっちりと梱包ラッピングされている。端から見るとある意味惨いし、恥ずかしいであろう。
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