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反撃の行進曲4
しおりを挟む急がず焦らず歩を進める国王達に、皆固唾呑んで凝視していた。前代未聞の大騒動の当事者(主犯格)の父が混じっているのだから、何が飛び出すか……と誰もが同じ気持ちを抱いていた。
国王がゆっくりと口を開いて言う。
「エルーシャ嬢よ、此度の件に尽力してくれたこと誠に感謝する。また、この愚息達の処分は任せて貰いたい」
国王はエルーシャ達に近付き、笑顔で告げる。床に転がった実の息子をチラと視界の端に捉えただけで、国王は何の反応も示さずにエルーシャに向かい合ったのだ。その上、礼を述べると言う状況に、目を見開き呆然とする王子と愉快な仲間達。周囲は静まり返って、国で一番偉い人がいるので誰もが沈黙を守り、見詰めていた。
すっと淑女の礼をしたあと、エルーシャは口を開き、堂々とした立ち居振舞いで国王に返答する。
「はい、お任せ致します」
「苦労を掛けた。誠に感謝する」
国王の表情は少し暗く、申し訳なさそうでもあった。しかし目に宿る決意は揺るがない。先程の態度からしても、為政者として一線を確実に引いていた。国に混乱と争いをもたらす息子を権力から遠ざける事に決めているのだろう。
「いいえ、国王陛下並びに、お義母様達の一助になったのならば幸いです。それに、国の要請とあらば、私も骨を折りましょう。それが私に課せられた使命ですから」
国王自らの言葉に反対意見を述べる訳にはいかないので、エルーシャは微笑んで退いておく。下手を打てば内政干渉になりかねないからである。
現状売れるだけの恩は売ったし、王子達による大きな貸しも勝手に付いた。後は国からの褒美を待つだけだ。
うむ、と小さく首肯して国王ははっきりと言う。
「出来る限りの便宜を図ると約束しよう」
「では、同盟更新と貿易の一部緩和の件、何卒良しなにお願い申し上げますわ」
「議会を通した後に、正式に帝国へ打診が行くのは数ヶ月だと思うが良いかな?」
「ええ、お待ちしております」
ニッコリと微笑み、エルーシャは国王に返事を返した。
満足そうに頷き、国王は隣にいる宰相を見て言う。
「さて、宰相、何一つ情報規制をしていないのにも関わらず、事の真偽を確かめずに見事に踊り狂っていた輩へのこの場での通達を」
「畏まりました、国王陛下。ランプロス公爵夫人の『姪』であり、エスカーラ帝国の王太子エルーシャ・デ・グラン=エスカーラ王太子殿下に対する不敬及び、国家反逆罪、国家転覆未遂に当たる数々の罪状により、この者達は各家より廃嫡となった。これは、勅命である。一同を捕らえよ!」
恭しく了承し、宰相は冷静に朗々と宣言した。侍る騎士達に王の意向を告げると、無駄のない動きで、騎士達はミノムシとなっている王子達を担ぎ上げて、この場より消えていった。
「ふぅ……やっと肩の荷が下りたな」
勅命の発動で、流石に参加者達は驚愕を隠せずに騒ぎ出す。そんな中、ポツリと国王は安堵と疲れを滲ませたため息を吐きながら呟く。
「はい、陛下」
宰相が小さく同意して応える。そのやり取りを聞いていた者は、エルーシャ達のみである。
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