悪役にされた令嬢は、阿呆共に報復する

龍希

文字の大きさ
12 / 38

反撃の行進曲5

しおりを挟む
「水をさされた舞踏会ですが、王太子殿下と、ご婚約者のファルクス殿にはファーストダンスをお願いしたい」
 ざわざわした周囲が落ち着いてくると、宰相がエルーシャ達に告げ、国王に視線を移す。

「うむ、では気を取り直し、これより、王立学園の創立記念舞踏会を開催する。余から皆へ、宮廷料理からデザートも沢山用意してあるから、踊れる者も躍りの苦手な者も楽しんで欲しいと思う」
 国王が開催の声を上げる。

「音楽を!!」
 宰相がそう言うと、音楽隊が曲を奏で始める。ゆったりとした前奏曲が始まっていく。
 退場させられた王子達が居ない今、ファーストダンスを踊る最上位の立場はエルーシャである。エルーシャが踊らないと、他の皆が踊れないのだ。

「では、エル、お手を」
 ふわりと笑ってファルクスが、エルーシャに右手を指し出す。執事然としていた表情とは打って変わって、とても柔らかく甘い。
「ええ。宜しくね、ファルクス」
 ファルクスに嬉しそうな笑顔で応じると、エルーシャは左手を彼の手の上に乗せる。
 ホールの中央へ二人は歩き、向かい合う。
 見詰め合う二人の口元には、笑みが浮かぶ。二人の間に入っていくことの出来ない絆のような雰囲気があった。
 ワルツの曲が始まると、二人は息ぴったりの動きで踊り始める。
 時折、目が合うと微笑み、終始楽しそうにダンスを披露する。
 見ている者を魅了する、美しい舞踏である。あるものはほうっと見惚れ、あるものは素晴らしいと驚嘆し、あるものはあの様に踊りたいと目標にする、非の打ち所のない一組であった。
 終わった瞬間、拍手が巻き起こる。
 一礼をして、エルーシャとファルクスはホール中央から国王達の方へ戻って行く。

「エル、楽しかった?」
 優しい表情でエルーシャに問いかけるファルクス。
「ええ。表情を取り繕わなくていいもの」
 とても素直な笑顔で、エルーシャがファルクスに答える。今まで、執事と令嬢と言う風にそれっぽく上下関係を匂わす雰囲気をわざわざ作っていた。なので、実はストレスが掛かっていたエルーシャである。


 そして、次の曲が始まると、他の参加者達が次々とパートナーと一緒に踊り始めたのだった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います

下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。 御都合主義のハッピーエンドです。 元鞘に戻ります。 ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。 小説家になろう様でも投稿しています。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約破棄? あ、ハイ。了解です【短編】

キョウキョウ
恋愛
突然、婚約破棄を突きつけられたマーガレットだったが平然と受け入れる。 それに納得いかなかったのは、王子のフィリップ。 もっと、取り乱したような姿を見れると思っていたのに。 そして彼は逆ギレする。なぜ、そんなに落ち着いていられるのか、と。 普通の可愛らしい女ならば、泣いて許しを請うはずじゃないのかと。 マーガレットが平然と受け入れたのは、他に興味があったから。婚約していたのは、親が決めたから。 彼女の興味は、婚約相手よりも魔法技術に向いていた。

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。

処理中です...