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12話:説教と書いてハリケーンと読む
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アルジェン王子の奇襲を撃退し、カエは意気揚々と――バラー・アールシュに抱っこしてもらいながら――館に戻った。
館に入ると、血相を変えたマドゥが駆けてきて、
「姫様お早くっ!」
バラー・アールシュごと急かされて、大広間へ連れていかれた。
「うん?」
黄金がまばゆく煌めく広い居間には、カルリトス、バークティ妃、シャムが床に座り、壁際にはカイラとルドラ、2人の≪トイネン≫が控えていた。
「ただいまー。あのね私」
「何を考えておるんじゃバッカもん!」
「あなたに何かあれば計画が台無しなのよ自覚なさい!!」
「っとに大バカなのかてめーは!!!」
カルリトス、バークティ妃、シャムの3人から、息継ぎなしの特大の雷を落とされた。
鬼の形相の3人に、カエは「ひいっ」とびくつき飛びのいて、バラー・アールシュにしがみついた。
「我が教えた」
悪びれず、にっこりと微笑みながらアールシュが言う。
森での出来事が、すでにカルリトスに筒抜けになっていたようだ。
「…はうん」
3人の前に座らされたカエは、しゅんっと肩をすぼめ、説教と言う名のハリケーンを耐えた。
「そもそも老師が庭の池に行けって…」
唇を尖らせて反論すると、
「真に受けて本当に行く馬鹿がドコにおるんじゃ!」
「ダヨネ…」
はあ、とカエはため息をついた。
もっとも、いろんなことを言われすぎて、右から左に風と共に去っている。
「中々どうして、身のこなしが軽く、しっかり自衛も出来ていたぞ」
この状況を面白そうに見ていたアールシュが、笑いながら茶々を入れた。
「でしょでしょ」
「調子に乗るな!」
「いだっ」
シャムのゲンコツが脳天に直撃した。
「それにしても、アルジェン・ルディヤーナがなぜ館の森に現れたのだ? 偶然王女が森を歩いていたから、襲えたようなものだが」
アールシュは腕を組んで首をかしげた。
「おそらくじゃが、王子の魔法士が張っておったんじゃろうの」
「でも老師、いつ私が森へ行くかなんて、誰も判らないのに?」
「森への散歩は、シャンティの日課だったの」
困ったように片頬に手を添え、バークティ妃が言った。
「それでずっと見張ってたんだ。王子のソティラスも大変だね…」
「危険を冒し自ら殺しに来るとは、中々に行動的な王子様であらせられるな」
やれやれと手を上げ、アールシュは肩をすくめた。
「あの狂気じみた顔、マジでヤバかったわ…」
なまじ顔がイイだけに迫力満点。思い出して、カエはブルッと震えが来た。
「ああいうタイプはしつこい。執念深く狙い続けるだろう」
「そんな感じするかも」
サイコパス野郎だし、とカエはゲッソリした。
「そういえば、アルジェンが「ドコがしおらしくおとなしいんだよ、情報と全然違うじゃないか」って言ってたんだけど、シャンティと会ったことナイんだね?」
「ええ。どの王子も王女も、それぞれ面識はないの」
カエに顔を向けて、バークティ妃が頷いた。
「そうなんだ。――偽物だってバレなくて良かったあ」
胸を張って明るく言うカエに、室内のあちこちから深々としたため息が流れた。
「アルジェン本人じゃなくても、あやつのソティラスや≪トイネン≫が、また奇襲をかけてくるやもしれんな」
アールシュが指摘すると、カルリトスは頷く。
「そうじゃな。王女はもう、館の外に出ることは禁ずる」
「えーっ!」
カエは特大の不満を鳴らす。
「残りの弓術士、銃器士、そしてもう一人魔法士は儂が探してこようかの」
「特性は我が見分けられる。≪トイネン≫は館に残し、我が同行しよう」
「ずるいずるい!」
「ずるくねえよ」
シャムにもう一度ゲンコツを食らった。
「あなたの不注意で、また生命の危機に襲われたら、アルジェンが殺る前に、わたくしが、こう、するわよ」
首の辺りを手で一閃するジェスチャーをして、バークティ妃が薄っすらと笑んだ。
「ゆーことききまっす!」
カエはバークティ妃に平伏した。
「よろしい」
バークティ妃は優しく微笑んだ。
カエは背中の打ち身を医者に診てもらうために、広間を追い出された。
シャムとマドゥに付き添われて部屋へ戻る。
「ねえねえシャム、私に護身術教えてよ」
「はあ?」
シャムは呆れたように声を上げ、心底めんどくさそうに息を吐き出す。そしてワシャワシャと頭を掻いた。
「おめーにはソティラスがいるだろうが。≪トイネン≫がなんとかする」
「でもさ、今日みたく奇襲とか、死角からの攻撃とか、なんかヤバイシーンってあるじゃん? それに対処するには、護身術くらいは扱えないと」
「そうだ、今日の出来事で俺らも危機感を持った。今後は多角的な奇襲にも対応できるように護衛する」
「でも」
「しつけーよ」
ギロリと睨まれ、カエは首をすくめた。
「ダケド、アールシュとセスが助けてくれるまで、ホントにヤバかったんだもん…」
アルジェン王子の狂気じみた刃をかわすのは、本当に必死だった。
納得いかないと顔に書いてあるカエを見て、シャムは眉間に皺を寄せた。
「戦おうとしても、下手な攻撃じゃ裏目に出て倒されることも多い。逃げ回ってるのが一番イインダヨ」
「教えてってば、意地悪! シャムのくせにケチ!!」
シャムは立ち止まり、腕を組んで明後日の方向を睨む。
「じゃあ、これ聞いたら諦めろ」
「え?」
カエは隣に並んだシャムを見上げた――その時、シャムの横顔がいつになく険しいことに気づいた。
少しの沈黙が落ちたあと、シャムは静かに言った。
「…俺が護身術を教えたから、本物のシャンティ王女は死んだんだ」
再び歩き始めたシャムの広い背中を見つめ、カエは絶句した。
館に入ると、血相を変えたマドゥが駆けてきて、
「姫様お早くっ!」
バラー・アールシュごと急かされて、大広間へ連れていかれた。
「うん?」
黄金がまばゆく煌めく広い居間には、カルリトス、バークティ妃、シャムが床に座り、壁際にはカイラとルドラ、2人の≪トイネン≫が控えていた。
「ただいまー。あのね私」
「何を考えておるんじゃバッカもん!」
「あなたに何かあれば計画が台無しなのよ自覚なさい!!」
「っとに大バカなのかてめーは!!!」
カルリトス、バークティ妃、シャムの3人から、息継ぎなしの特大の雷を落とされた。
鬼の形相の3人に、カエは「ひいっ」とびくつき飛びのいて、バラー・アールシュにしがみついた。
「我が教えた」
悪びれず、にっこりと微笑みながらアールシュが言う。
森での出来事が、すでにカルリトスに筒抜けになっていたようだ。
「…はうん」
3人の前に座らされたカエは、しゅんっと肩をすぼめ、説教と言う名のハリケーンを耐えた。
「そもそも老師が庭の池に行けって…」
唇を尖らせて反論すると、
「真に受けて本当に行く馬鹿がドコにおるんじゃ!」
「ダヨネ…」
はあ、とカエはため息をついた。
もっとも、いろんなことを言われすぎて、右から左に風と共に去っている。
「中々どうして、身のこなしが軽く、しっかり自衛も出来ていたぞ」
この状況を面白そうに見ていたアールシュが、笑いながら茶々を入れた。
「でしょでしょ」
「調子に乗るな!」
「いだっ」
シャムのゲンコツが脳天に直撃した。
「それにしても、アルジェン・ルディヤーナがなぜ館の森に現れたのだ? 偶然王女が森を歩いていたから、襲えたようなものだが」
アールシュは腕を組んで首をかしげた。
「おそらくじゃが、王子の魔法士が張っておったんじゃろうの」
「でも老師、いつ私が森へ行くかなんて、誰も判らないのに?」
「森への散歩は、シャンティの日課だったの」
困ったように片頬に手を添え、バークティ妃が言った。
「それでずっと見張ってたんだ。王子のソティラスも大変だね…」
「危険を冒し自ら殺しに来るとは、中々に行動的な王子様であらせられるな」
やれやれと手を上げ、アールシュは肩をすくめた。
「あの狂気じみた顔、マジでヤバかったわ…」
なまじ顔がイイだけに迫力満点。思い出して、カエはブルッと震えが来た。
「ああいうタイプはしつこい。執念深く狙い続けるだろう」
「そんな感じするかも」
サイコパス野郎だし、とカエはゲッソリした。
「そういえば、アルジェンが「ドコがしおらしくおとなしいんだよ、情報と全然違うじゃないか」って言ってたんだけど、シャンティと会ったことナイんだね?」
「ええ。どの王子も王女も、それぞれ面識はないの」
カエに顔を向けて、バークティ妃が頷いた。
「そうなんだ。――偽物だってバレなくて良かったあ」
胸を張って明るく言うカエに、室内のあちこちから深々としたため息が流れた。
「アルジェン本人じゃなくても、あやつのソティラスや≪トイネン≫が、また奇襲をかけてくるやもしれんな」
アールシュが指摘すると、カルリトスは頷く。
「そうじゃな。王女はもう、館の外に出ることは禁ずる」
「えーっ!」
カエは特大の不満を鳴らす。
「残りの弓術士、銃器士、そしてもう一人魔法士は儂が探してこようかの」
「特性は我が見分けられる。≪トイネン≫は館に残し、我が同行しよう」
「ずるいずるい!」
「ずるくねえよ」
シャムにもう一度ゲンコツを食らった。
「あなたの不注意で、また生命の危機に襲われたら、アルジェンが殺る前に、わたくしが、こう、するわよ」
首の辺りを手で一閃するジェスチャーをして、バークティ妃が薄っすらと笑んだ。
「ゆーことききまっす!」
カエはバークティ妃に平伏した。
「よろしい」
バークティ妃は優しく微笑んだ。
カエは背中の打ち身を医者に診てもらうために、広間を追い出された。
シャムとマドゥに付き添われて部屋へ戻る。
「ねえねえシャム、私に護身術教えてよ」
「はあ?」
シャムは呆れたように声を上げ、心底めんどくさそうに息を吐き出す。そしてワシャワシャと頭を掻いた。
「おめーにはソティラスがいるだろうが。≪トイネン≫がなんとかする」
「でもさ、今日みたく奇襲とか、死角からの攻撃とか、なんかヤバイシーンってあるじゃん? それに対処するには、護身術くらいは扱えないと」
「そうだ、今日の出来事で俺らも危機感を持った。今後は多角的な奇襲にも対応できるように護衛する」
「でも」
「しつけーよ」
ギロリと睨まれ、カエは首をすくめた。
「ダケド、アールシュとセスが助けてくれるまで、ホントにヤバかったんだもん…」
アルジェン王子の狂気じみた刃をかわすのは、本当に必死だった。
納得いかないと顔に書いてあるカエを見て、シャムは眉間に皺を寄せた。
「戦おうとしても、下手な攻撃じゃ裏目に出て倒されることも多い。逃げ回ってるのが一番イインダヨ」
「教えてってば、意地悪! シャムのくせにケチ!!」
シャムは立ち止まり、腕を組んで明後日の方向を睨む。
「じゃあ、これ聞いたら諦めろ」
「え?」
カエは隣に並んだシャムを見上げた――その時、シャムの横顔がいつになく険しいことに気づいた。
少しの沈黙が落ちたあと、シャムは静かに言った。
「…俺が護身術を教えたから、本物のシャンティ王女は死んだんだ」
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