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奪われしもの編 彼女が遺した空への想い
episode686
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ベルトルドは真っ直ぐリューディアの家に向かった。すでに陽は落ちて辺は真っ暗だが、躓いたり転んだりせず、地下室につづく戸口の前に立った。
シャシカラ島には店がないので、アーナンド島で大量に食材などを買い込んで、地下室で保管する。
深く掘られた地下室は常温室と冷凍室に分かれていて、冷凍室にはアルカネットの魔法で作った氷が置かれ、食材や水などが凍らされている。
その中に、リューディアの遺体は安置されていた。
木箱を並べた即席の台の上に真っ白なシーツがかけられ、その上に仰向けに遺体が寝かされている。そして、遺体の上にも、真っ白なシーツがすっぽりとかけられて、無残な姿を隠していた。
ベルトルドは遺体のそばに立ち、そっと息を飲んだ。
肌を刺すような寒さなど気にならない。
シーツに浮かび上がる人の身体の形をじっくりと眺め、そのシーツの下にいるのがリューディアではなく、別の誰かであってほしいと願わずにはいられなかった。
恐る恐るシーツに手を伸ばした瞬間、背後に人の気配を感じてベルトルドは振り向いた。
「ア、アルカネット……?」
虚ろな目をしたアルカネットが、気配も感じさせず後ろに立っていた。
「こんなところに、なにしにきたんだ。寝てなくちゃだめだろ?」
アルカネットの目から遺体を隠すようにして立ち、力の抜けた両肩にそっと手を置く。
「ベルトルドこそ、何をしているの?」
ひどく淡々とした声音で問われて、ベルトルドはグッと喉をつまらせた。
一切の感情を払拭したような青紫色の瞳が、力なくベルトルドを見つめる。
まるで責め立てられているような感じがして、僅かに顔を俯かせると、逡巡するように口を引き結んだ。
ここへきた目的は、何故、リューディアが雷に打たれて死んだのか。誰がそんなことをしたのか。それを探るためだった。
雲一つない晴れ渡った空から、どうやったら雷が降るのか、それが疑問だ。自然現象ではないのなら、人為的なものになるだろう。
島にはベルトルドら3家の住人しかいない。もし外部からの侵入者がしたことだとすれば、それは、よほど強力な力を持つ魔法使いになる。
全身を一瞬で炭化させるほどの、強大な質量を持った雷魔法を扱える魔法使いなど、アルカネットでも無理だ。アルカネットは一緒にいたが、魔法など使っていない。そうなると、アルカネットを凌ぐランクの魔法使いが犯人ということになるのだ。一体いつ島に侵入したのか。
誰かの手によるものなら、必ず痕跡を残しているはず。力に意思が宿るからだ。それは対象者が死してなお、暫く遺体に残るもの。それを探り出し、犯人をあぶり出す。
まだ、リューディアが死んだという事実を、ベルトルドの心は受け入れられていない。頭では判っているが、気持ちがそれについてきていないのだ。だから、遺体を前にしても、こうして犯人を見つけ出そうと考えられている。
「俺は……、俺は、リューディアを殺した犯人を見つけ出す。そして、そいつをこの手で捕まえるんだ」
整理しきれていないまま、ベルトルドは思いつく言葉を述べた。
こうまで突き動かされる心を、今のベルトルドには言葉で表現することが難しかった。だから、そう言うしかなかった。
すると、その言葉はアルカネットに小さな刺激を与えた。
「本当? 本当にベルトルドが見つけてくれるの?」
目の焦点が戻り、アルカネットは身を乗り出す。虚ろな表情に、微かな光が差し込んだように明るみを帯びる。
「ああ、絶対に俺が見つける」
アルカネットの雰囲気に飲まれたのか、ベルトルドは表情を引き締め大きく頷いた。
このあとに待っている地獄に、気づかぬまま。
シャシカラ島には店がないので、アーナンド島で大量に食材などを買い込んで、地下室で保管する。
深く掘られた地下室は常温室と冷凍室に分かれていて、冷凍室にはアルカネットの魔法で作った氷が置かれ、食材や水などが凍らされている。
その中に、リューディアの遺体は安置されていた。
木箱を並べた即席の台の上に真っ白なシーツがかけられ、その上に仰向けに遺体が寝かされている。そして、遺体の上にも、真っ白なシーツがすっぽりとかけられて、無残な姿を隠していた。
ベルトルドは遺体のそばに立ち、そっと息を飲んだ。
肌を刺すような寒さなど気にならない。
シーツに浮かび上がる人の身体の形をじっくりと眺め、そのシーツの下にいるのがリューディアではなく、別の誰かであってほしいと願わずにはいられなかった。
恐る恐るシーツに手を伸ばした瞬間、背後に人の気配を感じてベルトルドは振り向いた。
「ア、アルカネット……?」
虚ろな目をしたアルカネットが、気配も感じさせず後ろに立っていた。
「こんなところに、なにしにきたんだ。寝てなくちゃだめだろ?」
アルカネットの目から遺体を隠すようにして立ち、力の抜けた両肩にそっと手を置く。
「ベルトルドこそ、何をしているの?」
ひどく淡々とした声音で問われて、ベルトルドはグッと喉をつまらせた。
一切の感情を払拭したような青紫色の瞳が、力なくベルトルドを見つめる。
まるで責め立てられているような感じがして、僅かに顔を俯かせると、逡巡するように口を引き結んだ。
ここへきた目的は、何故、リューディアが雷に打たれて死んだのか。誰がそんなことをしたのか。それを探るためだった。
雲一つない晴れ渡った空から、どうやったら雷が降るのか、それが疑問だ。自然現象ではないのなら、人為的なものになるだろう。
島にはベルトルドら3家の住人しかいない。もし外部からの侵入者がしたことだとすれば、それは、よほど強力な力を持つ魔法使いになる。
全身を一瞬で炭化させるほどの、強大な質量を持った雷魔法を扱える魔法使いなど、アルカネットでも無理だ。アルカネットは一緒にいたが、魔法など使っていない。そうなると、アルカネットを凌ぐランクの魔法使いが犯人ということになるのだ。一体いつ島に侵入したのか。
誰かの手によるものなら、必ず痕跡を残しているはず。力に意思が宿るからだ。それは対象者が死してなお、暫く遺体に残るもの。それを探り出し、犯人をあぶり出す。
まだ、リューディアが死んだという事実を、ベルトルドの心は受け入れられていない。頭では判っているが、気持ちがそれについてきていないのだ。だから、遺体を前にしても、こうして犯人を見つけ出そうと考えられている。
「俺は……、俺は、リューディアを殺した犯人を見つけ出す。そして、そいつをこの手で捕まえるんだ」
整理しきれていないまま、ベルトルドは思いつく言葉を述べた。
こうまで突き動かされる心を、今のベルトルドには言葉で表現することが難しかった。だから、そう言うしかなかった。
すると、その言葉はアルカネットに小さな刺激を与えた。
「本当? 本当にベルトルドが見つけてくれるの?」
目の焦点が戻り、アルカネットは身を乗り出す。虚ろな表情に、微かな光が差し込んだように明るみを帯びる。
「ああ、絶対に俺が見つける」
アルカネットの雰囲気に飲まれたのか、ベルトルドは表情を引き締め大きく頷いた。
このあとに待っている地獄に、気づかぬまま。
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