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番外編・3
人魚姫と王子様(?)・3
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思いっきり真顔で問われ、しかし初めて聞く単語にマルユッカはきょとんとした。
「コドモはどうやって作るんだ? って聞いてるんだ!」
これにもマルユッカは答えられなかった。何故なら知らないからだ。
質問に答えられないことで落ち込んだマルユッカは、愛らしい顔を悲しげに俯かせてしまう。しかし男はそんなマルユッカの様子にも頓着せず、ぶつぶつと独りごちながら神妙な顔つきで考え込んでいた。
「俺様はペルラが大好きだ! ペルラはトゥーリ族のネコ人間だ。だから俺様とペルラは子供が作れない」
男は水平線を眺めながら、複雑な感情の色を乗せた声で淡々と語りだした。
「オマエたち魚人は上半身は人間だけど下半身は魚だろ、だったらネコと人間も交配出来てイイはずなんだ」
30種からなるトゥーリ族の人々は、同種族の者としか子孫が残せない。ヴィプネン族やアイオン族との交配も当然出来なかった。異種族同士で交配出来るのはヴィプネン族とアイオン族だけだ。
人魚だけが魚の特性と人間の特性を持ち、姿も半々でうまく混ざっていた。そしてなにより水陸どちらでも呼吸が可能な点が、もっとも優れていると言われている。
「時々タピオにきて、どうにか出来ないものか探してるんだケド、方法がウマク見つからないんだよなあ」
この男の人はよっぽどペルラという女性を愛してるんだ、そうマルユッカは思い、なんだかこの綺麗な男の人が可哀想に思えてならなかった。
「キレーな海だな」
ぼんやりとした口調で男が言うと、マルユッカは嬉しそうに頷いた。
惑星ペッコや惑星ヒイシにも、これほど美しい海はない、と言われている。そしてそれはソーダヴェッタに暮らす人魚たちの自慢だった。
「よし、俺様もひと泳ぎするぞ!!」
そう言って男は立ち上がると、いきなり勢いよく服を脱ぎだした。
先程までの淡い感傷は一体どこへ!? とツッコミたくなるほどの180度変貌ぶりに、マルユッカは再び頭をグルグルさせた。
男は全裸になると、岩の上に仁王立ちして両手を腰に当ててふんぞり返った。
その姿をマルユッカはまじまじと下から見上げる。
上半身は男の人魚と変わらない。だが――
下半身に奇妙なものがぶら下がっているのがえらく気になった。形といい色といい、綺麗な面立ちには到底似合わないものだなとマルユッカは唸る。
「それっ!」
男は勢いよく海に飛び込むと、わははははと笑い声をあげながら見事なスクロールで泳いでいた。
天気も良く波はいつも以上に穏やかだったので、人魚じゃなくても泳ぎやすい。
泳ぐ男の姿を楽しそうに見て、マルユッカも男に続いて海に潜った。
男の長い手足が水をかき分けスムーズに泳ぐ。しかしそれ以上に、水の抵抗を感じさせないほど静かで優雅にマルユッカは泳いだ。水の流れのような泳ぎは、人魚特有の泳ぎ方だ。
そんなマルユッカの姿を見て男は嬉しそうに微笑んだが、呼吸をするために海面にあがる。
「ぷはーっ! さすがに1分近く潜ってると苦しーな」
男の傍で顔を出したマルユッカは、無邪気な笑みを男に向けた。
その時――
大きな振動が海を震わせ、小魚が海面を跳ね踊る。
「なんか爆発でもしたな」
男は服を置いてある岩に戻ると、よいしょっと小さく掛け声をして岩に登って立ち上がった。
「南のほうになんかいるなー……」
マルユッカも南のほうを不安げに見ていると、そこへ一匹のイルカが海面に顔を出した。
「まあ、ヨーランどうしたの?」
ただ鳴き声をあげるイルカと人語を話す少女を見おろしながら、男は腕を組んで首をかしげていた。
「あのね、南の方に密漁船がきていて、自警団の人達と戦っているって」
「ほほう、密漁船かー」
なんだか嬉しそうな声で男は呟くと、ニヤリと口の端を歪めた。そして――
マルユッカは目を見張った。
男の背に突然巨大な白い翼が生えたのだ。
真っ青な空と海を背景に、柔らかそうで高貴とさえ思える翼が優雅に広がる。
「俺様が成敗してやる!!」
何度か翼を羽ばたかせると、男はまっすぐ南に向かって飛んでいってしまった。
その飛んでいく後ろ姿をびっくりしながら見送っていたマルユッカは、イルカのヨーランに促されて慌ててあとを追った。
「コドモはどうやって作るんだ? って聞いてるんだ!」
これにもマルユッカは答えられなかった。何故なら知らないからだ。
質問に答えられないことで落ち込んだマルユッカは、愛らしい顔を悲しげに俯かせてしまう。しかし男はそんなマルユッカの様子にも頓着せず、ぶつぶつと独りごちながら神妙な顔つきで考え込んでいた。
「俺様はペルラが大好きだ! ペルラはトゥーリ族のネコ人間だ。だから俺様とペルラは子供が作れない」
男は水平線を眺めながら、複雑な感情の色を乗せた声で淡々と語りだした。
「オマエたち魚人は上半身は人間だけど下半身は魚だろ、だったらネコと人間も交配出来てイイはずなんだ」
30種からなるトゥーリ族の人々は、同種族の者としか子孫が残せない。ヴィプネン族やアイオン族との交配も当然出来なかった。異種族同士で交配出来るのはヴィプネン族とアイオン族だけだ。
人魚だけが魚の特性と人間の特性を持ち、姿も半々でうまく混ざっていた。そしてなにより水陸どちらでも呼吸が可能な点が、もっとも優れていると言われている。
「時々タピオにきて、どうにか出来ないものか探してるんだケド、方法がウマク見つからないんだよなあ」
この男の人はよっぽどペルラという女性を愛してるんだ、そうマルユッカは思い、なんだかこの綺麗な男の人が可哀想に思えてならなかった。
「キレーな海だな」
ぼんやりとした口調で男が言うと、マルユッカは嬉しそうに頷いた。
惑星ペッコや惑星ヒイシにも、これほど美しい海はない、と言われている。そしてそれはソーダヴェッタに暮らす人魚たちの自慢だった。
「よし、俺様もひと泳ぎするぞ!!」
そう言って男は立ち上がると、いきなり勢いよく服を脱ぎだした。
先程までの淡い感傷は一体どこへ!? とツッコミたくなるほどの180度変貌ぶりに、マルユッカは再び頭をグルグルさせた。
男は全裸になると、岩の上に仁王立ちして両手を腰に当ててふんぞり返った。
その姿をマルユッカはまじまじと下から見上げる。
上半身は男の人魚と変わらない。だが――
下半身に奇妙なものがぶら下がっているのがえらく気になった。形といい色といい、綺麗な面立ちには到底似合わないものだなとマルユッカは唸る。
「それっ!」
男は勢いよく海に飛び込むと、わははははと笑い声をあげながら見事なスクロールで泳いでいた。
天気も良く波はいつも以上に穏やかだったので、人魚じゃなくても泳ぎやすい。
泳ぐ男の姿を楽しそうに見て、マルユッカも男に続いて海に潜った。
男の長い手足が水をかき分けスムーズに泳ぐ。しかしそれ以上に、水の抵抗を感じさせないほど静かで優雅にマルユッカは泳いだ。水の流れのような泳ぎは、人魚特有の泳ぎ方だ。
そんなマルユッカの姿を見て男は嬉しそうに微笑んだが、呼吸をするために海面にあがる。
「ぷはーっ! さすがに1分近く潜ってると苦しーな」
男の傍で顔を出したマルユッカは、無邪気な笑みを男に向けた。
その時――
大きな振動が海を震わせ、小魚が海面を跳ね踊る。
「なんか爆発でもしたな」
男は服を置いてある岩に戻ると、よいしょっと小さく掛け声をして岩に登って立ち上がった。
「南のほうになんかいるなー……」
マルユッカも南のほうを不安げに見ていると、そこへ一匹のイルカが海面に顔を出した。
「まあ、ヨーランどうしたの?」
ただ鳴き声をあげるイルカと人語を話す少女を見おろしながら、男は腕を組んで首をかしげていた。
「あのね、南の方に密漁船がきていて、自警団の人達と戦っているって」
「ほほう、密漁船かー」
なんだか嬉しそうな声で男は呟くと、ニヤリと口の端を歪めた。そして――
マルユッカは目を見張った。
男の背に突然巨大な白い翼が生えたのだ。
真っ青な空と海を背景に、柔らかそうで高貴とさえ思える翼が優雅に広がる。
「俺様が成敗してやる!!」
何度か翼を羽ばたかせると、男はまっすぐ南に向かって飛んでいってしまった。
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