片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode10

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 皇都イララクスに含まれる街の一つ、エルダー街。別名・傭兵街と言われ、傭兵、裏の商売、水商売など、一般的ではない職業に就く人々が多く住む。一般人が近寄らないことでも有名だった。

 まだ昼日中だというのに、街は閑散として静まり返っている。そのあまりの活気のなさに、キュッリッキは眉をしかめた。

 キュッリッキの住むアパート周辺にも、傭兵たちの住まいがある。しかし、昼間でも賑わっていて、こんなうらぶれた雰囲気ではない。

 馬車から降りてのんびり歩くこと10分、

「ほら、見えてきたぞ」

 ベルトルドが指さした建物を見て、キュッリッキは目を瞬かせた。

 エルダー街に建つ建物は、どれも見た目がバラバラで、統一感がまるでない。それでいて活気もないうえに古ぼけているものだから、陽に当たっていても暗い廃墟のように見えてしまう。しかし、ベルトルドが示した建物は、界隈とはまるで違っていた。

 白い漆喰の塗られた壁には、黒い木枠の窓がはめ込まれ、色とりどりの小さな花を咲かせる鉢植えが窓辺に飾られている。周辺の建物よりも大きな構えをしていて、陽に照らされ明るさを強調する、オレンジ色の瓦が目に鮮やかだ。道路に面した建物の前は、チリ一つ落ちておらず、きっちり掃き掃除がされていた。

「綺麗な建物だね」

「フンッ、几帳面な男だからな」

 ベルトルドは皮肉な笑みを浮かべると、ノックもせずに玄関扉を開けて、スタスタ入っていった。

 キュッリッキの手は繋いだまま、ベルトルドは大声を張り上げた。

「カーティスいるか! 俺が来てやったぞー!!」

 玄関ホールから建物中に轟くくらいの大声である。ビクッとしたキュッリッキは、思わずキョロキョロと周りを見回した。

 待つこと数十秒くらいで、廊下の奥からひとりの男が姿を現した。

「これはこれはベルトルド卿、連絡も招きもなしに、突然何事ですか?」

 軽い皮肉を交えながら、男――カーティスはめんどくさそうに言う。とーっても迷惑この上ない、と表情に貼り付けている。

「フフン、新しい団員を連れてきたぞ」

 皮肉は完璧にスルーして、ベルトルドはキュッリッキの両肩に手を添え、自分の前にそっと差し出した。

「キュッリッキという。実に愛らしく美しい少女だろう、よろしく頼むぞ」

 ドヤ顔で紹介するベルトルドとは対照的に、キュッリッキはおっかなびっくりな表情で、カーティスにペコリと会釈した。

 簾のように垂れ下がる前髪の奥の、細い目を更に細めてキュッリッキを見ていたカーティスは、やがて顔を上げると、

「却下です」

 とだけ答えた。
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